モード座標と一般解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 03:37 UTC 版)
「線形多自由度系の振動」の記事における「モード座標と一般解」の解説
固有モード(固有ベクトル)は互いに直交なので、これらを使った線形結合で変位ベクトル x を表すことができる。つまり、固有モード U を用いて、x を x = q 1 u ¯ 1 + q 2 u ¯ 2 + ⋯ + q n u ¯ n = U ¯ q {\displaystyle {\boldsymbol {x}}=q_{1}{\boldsymbol {\overline {u}}}_{1}+q_{2}{\boldsymbol {\overline {u}}}_{2}+\dots +q_{n}{\boldsymbol {\overline {u}}}_{n}={\boldsymbol {{\overline {U}}q}}} (3.21) と表すことができる。ここで、q は時間の未知関数で、モード座標、基準座標、正規座標、規準座標、主座標などと呼ばれる。特に正規化した固有モードを使っているモード座標を指して、正規座標と呼ぶこともある。q は qr を 1 次から n 次まで並べた次のような縦ベクトルである。 q = ( q 1 q 2 ⋮ q n ) {\displaystyle {\boldsymbol {q}}={\begin{pmatrix}q_{1}\\q_{2}\\\vdots \\q_{n}\end{pmatrix}}} モード座標 q に対して、元の座標 x を物理座標と呼ぶ。3.21は、正規固有モードを介して物理座標をモード座標に変換していることを意味する。モード座標 qr は、x に対して r 次固有モードūr が寄与する度合いを表しているとも言える。式3.21は展開定理とも呼ばれる。 式3.21を運動方程式3.1へ代入して、左から転置したモード行列 U⊤ を掛けると次のようになる。 U ⊤ M U q ¨ + U ⊤ K U q = 0 {\displaystyle {\boldsymbol {U^{\top }MU{\ddot {q}}}}+{\boldsymbol {U^{\top }KUq}}=\mathbf {0} } (3.22) 固有モードの直交性(式3.14と式3.15)を上式に当てはめると、 { M 1 q ¨ 1 + K 1 q 1 = 0 M 2 q ¨ 2 + K 2 q 2 = 0 ⋮ M n q ¨ n + K n q n = 0 {\displaystyle {\begin{cases}M_{1}{\ddot {q}}_{1}+K_{1}q_{1}=0\\M_{2}{\ddot {q}}_{2}+K_{2}q_{2}=0\\\vdots \\M_{n}{\ddot {q}}_{n}+K_{n}q_{n}=0\\\end{cases}}} (3.23) というような q に関する n 個の運動方程式が得られる。それぞれの式の両辺を Mr で割ると、下記のような形になる。 { q ¨ 1 + ω 1 2 q 1 = 0 q ¨ 2 + ω 2 2 q 2 = 0 ⋮ q ¨ n + ω n 2 q n = 0 {\displaystyle {\begin{cases}{\ddot {q}}_{1}+\omega _{1}^{2}q_{1}=0\\{\ddot {q}}_{2}+\omega _{2}^{2}q_{2}=0\\\vdots \\{\ddot {q}}_{n}+\omega _{n}^{2}q_{n}=0\\\end{cases}}} (3.24) 式3.24は非連成化されており、各式はそれぞれ独立している。そのため、一つ一つの式は1自由度系の不減衰自由振動と同じであるから、q の各解は以下のようになる。 { q 1 = c 1 sin ( ω 1 t + θ 1 ) q 2 = c n sin ( ω 2 t + θ 2 ) ⋮ q n = c n sin ( ω n t + θ n ) {\displaystyle {\begin{cases}q_{1}=c_{1}\sin(\omega _{1}t+\theta _{1})\\q_{2}=c_{n}\sin(\omega _{2}t+\theta _{2})\\\vdots \\q_{n}=c_{n}\sin(\omega _{n}t+\theta _{n})\\\end{cases}}} (3.25) ここで、cr と θr (r = 1, 2, …, n) は初期条件で決まる定数で、cr が振幅、θr が初期位相を意味する。x の一般解は、式3.25を式3.21に代入して x = ∑ r = 1 n u ¯ r C r sin ( ω r t + θ r ) {\displaystyle {\boldsymbol {x}}=\sum _{r=1}^{n}{\boldsymbol {\overline {u}}}_{r}C_{r}\sin(\omega _{r}t+\theta _{r})} (3.26) と得られる。すなわち、n 自由度系における各自由度の自由振動は、n 個の調和振動の重ね合わせ(和)となっており、それら調和振動のそれぞれの振動数は 1 次から n 次までの固有角振動数となっている。固有モードは、対応する固有角振動数を持つ調和振動成分の各自由度間の振幅比を定めている。位相角を陽に表さずに、余弦関数と正弦関数の和 x = ∑ r = 1 n u ¯ r ( a r cos ω r t + b r sin ω r t ) {\displaystyle {\boldsymbol {x}}=\sum _{r=1}^{n}{\boldsymbol {\overline {u}}}_{r}(a_{r}\cos \omega _{r}t+b_{r}\sin \omega _{r}t)} (3.27) や、指数の正負が異なる複素指数関数の和 x = ∑ r = 1 n u ¯ r ( d r e i ω r t + g r e − i ω r t ) {\displaystyle {\boldsymbol {x}}=\sum _{r=1}^{n}{\boldsymbol {\overline {u}}}_{r}(d_{r}e^{i\omega _{r}t}+g_{r}e^{-i\omega _{r}t})} (3.28) といった形で一般解を表すこともできる。ar, br, dr, gr も初期条件で決まる定数で、式3.27と式3.27は式3.26へ式変形可能な同値な式である。 以上のような、物理座標をモード座標へ変換し、固有モードの直交性を利用して多自由度系の問題を1自由度系の重ね合わせの問題に帰着させ、解析を行う手法をモード解析(特にモード重畳法)という。後述のように、モード解析は特に有限要素法へ適用することで有効性を発揮する。実物の振動特性を求める上でもモード解析の理論を適用することで各特性を同定でき、この手法は実験モード解析と呼ばれる。
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