モーセの事件
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/03 14:51 UTC 版)
モーセのエジプト脱走は多くの研究者によって、前13世紀のエジプト第19王朝ラメセス2世(在位前1279-1213)の時代であると推定されているが、文書資料が豊富なエジプト側には一切の記録が無い。このことから旧約聖書にあるような壮年男子だけで60万人という大規模な脱走事件が起きた(出エジプト12:37、民数記1:46)という訳ではなく、ごく少数者の脱走事件であったのだろうと推定されている。前述のイスラエル部族連合の中に「カリスマ的指導者に率いられてエジプトから脱出してきた」という伝承をもつ部族があって、その伝承が部族連合全体に広がって共有されていったのだろう。 さらにエジプト脱出の伝承に、シナイ山における神の顕現に関する伝承が結び付けられて、シナイ山での契約の物語が成立したものと考えられている。このシナイ山は今日、シナイ半島南部のジュベル・ムーサ(「モーセの山」、標高2244メートル)とされているが、これは紀元4世紀以降にそう看做されるようになっただけであり根拠は無い。 なお、イスラエル人たちが神と結んだ契約については繰り返し語られているが、申命記のそれはアッシリアが属国に結ばせた宗主権条約文と類似の構造を持つことが指摘されている。つまり、大国と属国との契約関係を、イスラエル人は神と自分達との契約に置き換えたのである。
※この「モーセの事件」の解説は、「ユダヤの神話」の解説の一部です。
「モーセの事件」を含む「ユダヤの神話」の記事については、「ユダヤの神話」の概要を参照ください。
- モーセの事件のページへのリンク