ミリアムとマリア
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/11 15:56 UTC 版)
「聖書の説話とクルアーンの関係」の記事における「ミリアムとマリア」の解説
アラビア語では、「マリア」という名も「ミリアム」という名も「マルヤム」と呼ばれる。イーサーの母マルヤムについて語る場合、クルアーンはマルヤムにハールーンの妹、イムラーンの娘、と言った呼称をつける。 「 「ハールーンの姉妹よ,あなたの父は悪い人ではなかった。母親も不貞の女ではなかったのだが。」[Quran 19:28]) 」 「 またわれは自分の貞節を守ったイムラーンの娘マルヤム(の体内)に,わが霊を吹き込んだ。[Quran 66:12] 」 聖書の出エジプト記の女預言者ミリアムは、アロンとモーセの姉、アムラムの娘である。イエスの母のマリアの時代よりも、1000年ほど前の人である。大部分のムスリムは、ミリアムは精神的な意味での妹であって、厳密な意味では妹でないと信じている。マリア(マルヤム)の父の名はクルアーンでははっきり、モーセ(ムーサー)やミリヤム(マルヤム)の父と同じ名前であるアムラム(イムラーン)だと述べられている。しかし新約聖書の記述によれば、マリアの父の名はヤコブ(ヤアクーブ)である。イスラームでは一般的に、同一の人物が聖書とクルアーンで名称が異なる場合、聖書で述べられている名前が本名で、クルアーンで述べられている名称が渾名だと解釈される事が多い。エノク(アフヌーフ)=イドリース。テラ(ターラフ)=アーザル。サウル(シャーウル)=タールート。など。そのため、マルヤムの父イムラーンも本名ヤアクーブの渾名と解釈する事も出来る。イーサーの母マルヤムの時代が、ハールーンの姉妹マルヤムの時代とは異なることは古くからムスリムの間でも十分認知されており、両者が別人物であることも知られていた。しかしクルアーンの中でマルヤムがハールーンの姉妹と呼ばれていたことについては、キリスト教徒からの「ムハンマドは両者の時代を混同したために、そのように記述したのだ」と言う批判に対して反論する必要に常に迫られた。よくなされる反論として、ハールーンの姉妹とはハールーンの子孫と言う意味であると言う説があるが、ハールーンはレビ族であり、マルヤムはユダ族であるので、この説は苦しい。その日、町では葬式があり、住民全員がハールーンの子孫を名乗ったと言う説もあるが、そのような根拠自体が存在しない。実際に、マルヤムにはハールーンという名の兄弟がいたのだという説もあるが、マルヤムの母はマルヤムを産むまで産まずめであり、マルヤムの前後に兄弟がいたとも考えにくい。いずれの解釈をとっても、ハールーンの姉妹と言う記述の真意は、謎に包まれている。 共通の名前ではあるが、ミリアムとマリアは、聖書では明らかに同一人物ではない。アロンとモーセの姉ミリアム (c. 1450 BC) は、アムラムの娘であり (Num. 26:59 参照)、イエスの母マリア (c. 50 BC) は、エリ(ヘリ)の娘である(Luke 3:23参照)。
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