マルコーニ社のCQDとテレフンケン社のSOS
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「SOS」の記事における「マルコーニ社のCQDとテレフンケン社のSOS」の解説
しかし会議終了後の1903年12月7日に、マルコーニ国際海洋通信会社の無線局を設置していたレッド・スター・ラインの「クルーランド号(SS Kroonland)」がアントウェルペンからニューヨークに向かってアイルランド沖を航海中に操舵装置を破損する事故を起こし、翌12月8日に無線電信で救助された。クルーランド号は無線電信で助けを求めた最初の定期航路船である。幸い乗員乗客900名は無事だったが、この事故で専用の遭難信号を制定する重要性が強く認識された。 マルコーニ国際海洋通信会社はただちにその検討に入り、1904年1月7日の社内通達第57号で自社の遭難信号を「CQD」と定めた。施行日は1904年2月1日だった。『マルコーニ社の遭難信号「CQD」の"CQ"はAll Station(全局)、"D"はDanger(危険)またはDistress(遭難)を意味する。』とマルコーニ自身が説明している。なお「CQD」はマルコーニ社の社内符号であり他の無線会社には関係しない。 一方でライバルのテレフンケン社があるドイツ帝国では、無線電信条例(Regelung der Funkentelegraphie im Deutschen Reich:1905年3月30日公布)を定めて1905年4月1日より施行した。この無線法では全局呼び出し信号「・・・― ― ― ・」SOEとは別に、遭難信号「・・・― ― ― ・・・」SOSを規定した。ドイツ船が全局呼び出しに用いていたSOEでは、Eが1短点(・)で緊急時に聞き落とす恐れがあるため、3短点のS(・・・)に変更した符号を新たに定めたものだった。これはドイツの規則であり他国の無線会社には関係しない。 また「SOS」は意味のない長(―)・短(・)の配列が先にできて、後になり文字化されたが、「CQD」は意味のある文字から作られたという違いもある。文字に意味があるので、一塊につないでしまう「CQD」(― ・― ・ ― ― ・― ― ・・)ではなく、文字が聞き取れる「CQD」(― ・― ・ ― ― ・― ― ・・)である。 マルコーニ社の「CQD」やテレフンケン社の「SOS」の他にも、1905年12月にアメリカ東海岸で起きた海難事故ではシンプルに「HELP」が使われるなど、無線会社間で遭難信号は統一されていなかった。
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