プラトン 永遠・普遍の真理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/10 16:16 UTC 版)
プラトンは、対話篇『テアイテトス』において、登場人物に、プロタゴラスの真理の相対性の主張を批判させている。本対話篇では、「知識とは何か?」という認識論な問いに対し、知識とは常に存在し、疑いなきものであるとの対話者間の共通の前提から、テアイテトスはまず知識とは知覚であると主張する。これに対して、ソクラテスは、知覚は人それぞれによって異なるものであるとした上で、「人間は万物の尺度である」と主張して相対主義を唱えたプロタゴラスを引き合いに出し、彼が自らの思いが真であると固執すれば、自らの思いが偽であると認めざるを得なくなると述べる。 プラトンの真理の相対性に対する反論は自己矛盾というものであるが、引き続き、彼は、『パイドン』において、パルメニデスの不生不滅の考えとヘラクレイトスの万物流転の考えを調和させようとの見地から、この現実の世界は仮象の生成流転する世界であって永遠に存在するものはなにもないが、イデアの世界は真実在であるとして世界を二元的に理解し、イデアの世界における真理の絶対性を主張する。そこで前提とされている永遠不滅の真理は、死すべき運命にある仮象の現実の世界に住む者どもに対し、それを超越したイデアの世界における永遠不滅の魂の存在を証明するためのものであった。 プラトンは、引き続き、対話篇『国家』において、仮象の現象界における真理について言及する。彼にとって、真理とは永遠かつ普遍的なものでなければならないが、それは実体であるイデアの世界にしかないものであり、この現実の世界は仮象の生成流転する世界であって永遠に存在するものはなにもない。弁論術による対話において、まず仮説を立て、これから演繹されるもろもろの帰結が相互に整合していれば、それは現象界における真理と認めてもよいが、対話によってその整合性が破られれば、その仮説は廃棄されなければならない。プラトンの著作が対話篇という形をとり、その結末がアポリアを呈示する形で終わっているのは、このようなプラトンの思想を反映したものである。 このように、プラトンは真理は永遠普遍なものとしつつも、それをイデアの世界に限定したため、仮象の現象界における真理は命題間調和を基準とする整合説を主張するにとどまった。彼が創始したアカデメイアでは、弁論術による対話を繰り返し、真理に近づこうと努力したが、皮肉なことに懐疑主義的なアカデメイア派を生み出すことになる。後世に、このアカデメイア派と対立したのが、プラトンの思想を新たな形で復活させたアウグスティヌスだった。
※この「プラトン 永遠・普遍の真理」の解説は、「真理」の解説の一部です。
「プラトン 永遠・普遍の真理」を含む「真理」の記事については、「真理」の概要を参照ください。
- プラトン 永遠・普遍の真理のページへのリンク