ブリ語_(インドネシア)とは? わかりやすく解説

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ブリ語 (インドネシア)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/01 18:24 UTC 版)

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ブリ語
話される国  インドネシア
地域 北マルク州中ハルマヘラ県ハルマヘラ島ブリ湾沿岸部[1]
話者数 2千520人(2000年)[1]
言語系統
オーストロネシア語族
言語コード
ISO 639-1 なし
ISO 639-3 bzq
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ブリ語(ブリご、Buli)とはインドネシアハルマヘラ島で用いられているオーストロネシア系言語の一つである。

分類

ハルマヘラ島およびその周辺部にはブリ語を含めたオーストロネシア語が数種類存在する。Meillet & Cohen (1952) でインドネシア語派、Salzner (1960)で西ニューギニア語群に属するとされた言語には、ブリ語以外に以下のものが挙げられる[3]

近年WajamliとKajoaはそれぞれブリ語、東マキアン語の一方言として[1][2]、Bitjoliとウェダ語はそれぞれマバ語、サワイ語の別名として[1]、またギマン語と東マキアン語は南ハルマヘラ諸語英語版下で上記の他言語とは独立したグループとして扱われる傾向にある[1][2]。なお、ブリ語はこの言語群の中では最も早い段階にまとまった形の報告や記述がなされている[4]

音声

子音

[p][b][m][t][d][n][t͡ʃ][d͡ʒ][ɲ][k][ɡ][ŋ][f][h][s][r][l][w][y]の19種類が確認されている[5]

母音

[a][ə][e][i][o][u]の6種類であり、[ə]以外の五つには対応する長母音が存在する[6]

パプア諸語からの影響

ブリ語で〈飲む〉に該当する語domに対応するマレー・ポリネシア祖語英語版再構形は*(❛i-)numで、*n > dという推移があるという事になる。しかし通常*nに対応するのはnであり[7]、こうした変化は例外的なものである。この現象はガレラ語英語版udoロロダ語英語版udomoといった近隣のパプア諸語からの影響により引き起こされたものと見ることが可能である[8]

文法

代名詞

所有代名詞は所有の対象が

  1. 親族や大半の身体部位
  2. 物や道具
  3. 飲食物やタバコ眉(毛)

のいずれによるかで形態が変化する[9]

ブリ語の代名詞一覧[9]
1. 2. 3.
一人称単数〈私の〉 ya-被所有者(物)-k yanik 被所有物 yanak 被所有物
二人称単数〈君の〉 a-被所有者(物)-m ❛anim 被所有物 ❛anam 被所有物
三人称単数〈彼の〉 i-被所有者(物) ❛ini 被所有物 ❛ina 被所有物

こうした特徴は一見するとフィジー語キリウィナ語ナウル語といったいわゆるメラネシア語英語版と似通っている様にも思われる[10]。しかし上表の2.と3.に見られる様な-ni(-)、-na(-)という属格指示辞の存在はむしろポリネシア語的な特徴であり、メラネシア語には見られないものである[11]崎山理はこの要素を根拠の一つとして、ブリ語は本来はポリネシア語的な言語であり、やがてマレー系言語との度重なる接触により変容していったものであるという仮説を唱えている[12]

語彙

借用語

naga 〈龍〉(< nāga- 〈蛇〉)やrupa 〈姿〉(< rūpa-)といったサンスクリットwaktu(< وقت)といったアラビア語起源の語彙が存在するが、これはインドネシア語(マレー語)を経由して伝わったものであると推定される[13]。またkastəra〈とうもろこし〉、sintu 〈帯〉、tənda 〈店〉、❛oras 〈時間〉といったスペイン語ポルトガル語からの借用語も存在する[14]

脚注

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l Lewis et al. (2015).
  2. ^ a b c d e f g h i j k Hammarström et al. (2016).
  3. ^ 崎山(1974:198-199)。
  4. ^ 崎山(1974:199)。
  5. ^ 崎山(1974:201–202)。
  6. ^ 崎山(1974:201)。
  7. ^ 崎山(1974:207)。
  8. ^ 崎山(1974:212)。
  9. ^ a b 崎山(1974:219–220)。
  10. ^ 崎山(1974:220)。
  11. ^ 崎山(1974:221)。
  12. ^ 崎山(1974:221–222)。
  13. ^ 崎山(1974:202–203)。
  14. ^ 崎山(1974:203–204)。

参考文献

関連書籍

  • Maan, G. (1951). Proeve van een Bulische spraakkunst. (Verhandelingen van het Koninklijk Instituut voor Taal, Land en Volkenkunde, 10.) The Hague: M. Nijhoff.
  • Meillet, A & M. Cohen (1952). Les langues du monde. Paris.
  • Salzner, R. (1960). Sprachenatlas des indopazifischen Raumes. Wiesbaden.

外部リンク




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