フランス、聖マルクールの霊威
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「王権神授説」の記事における「フランス、聖マルクールの霊威」の解説
フランスではカペー朝の初期、フィリップ1世がおそらく瘰癧さわりをおこなったと考えられている。フィリップ4世の時代にはフランス全土ばかりか、全西ヨーロッパ規模でこの「瘰癧さわり」は評判となっており、教皇領であるウルビーノやペルージャからも治癒を求める民衆がやって来ていることが確認されている。また中世を通じて医学書に瘰癧の治療法としてこの「瘰癧さわり」が記述されていた。一方でルイ6世の時代には王旗や王冠がカール大帝の伝承にむすびつけられ、カロリング朝とフランス王権の間に観念的な連続性を生じさせた。 フィリップ4世のころには、この瘰癧さわりが「クローヴィスの洗礼に由来する。クローヴィスはキリスト教に改宗したメロヴィング朝君主であるが、中世フランスでは塗油されて聖別された」と誤って信じられていた。塗油された王の霊威によるものという観念があらわれている。そしてこの伝説はランス大聖堂にクローヴィス以来の聖香油が聖瓶(サント・アンブール)に保管されており、王の即位式で王は聖香油を塗油され聖別されるという観念につながった。 中世末期になると、この瘰癧さわりに別個の聖マルクールの瘰癧治療信仰が混入し、区別がつかなくなった。マルク・ブロックによれば、中世末の王権論者は、すでに王権の聖性において「塗油」さえ問題にしなくなっていたという。マルク・ブロックは著者不明の説話集『果樹園の夢想』から次のような事例を引く、「王が塗油されて聖別されるのは見せかけだけに過ぎず、実際はフランス王権固有の聖性が王権の治癒能力の源泉である。なぜなら、ほかの塗油された国王たちは瘰癧を治癒することができないのだから。ここには明らかにフランス王権の優越性を主張する国民的な感情が見て取れる」。 ヴァロワ朝のフランソワ1世の時代には、王の瘰癧治癒能力がこの聖者に由来するという観念が一般化していた。フランス王はコルブニーにある聖マルクールの遺骨の前でミサをおこなう際に瘰癧さわりも施すようになり、それを目的として参集する病人が年々増大した。 フランスの「瘰癧さわり」はブルボン朝のルイ16世の時代まで熱心に続けられていたが、フランス革命が起こると王は神授権説とともにこの慣習も捨てることとなった。これ以降はシャルル10世の時代に「瘰癧さわり」の復活が試みられているが、王自身も否定的であったので1825年に一回おこなわれたのみでこれが最後の事例となった。
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フランス、聖マルクールの霊威
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「中世ヨーロッパにおける教会と国家」の記事における「フランス、聖マルクールの霊威」の解説
フランスではカペー朝の初期、フィリップ1世がおそらく瘰癧さわりをおこなったと考えられている。フィリップ4世の時代にはフランス全土ばかりか、全西ヨーロッパ規模でこの「瘰癧さわり」は評判となっており、教皇領であるウルビーノやペルージャからも治癒を求める民衆がやって来ていることが確認されている。また中世を通じて医学書に瘰癧の治療法としてこの「瘰癧さわり」が記述されていた。一方でルイ6世の時代には王旗や王冠がカール大帝の伝承にむすびつけられ、カロリング朝とフランス王権の間に観念的な連続性を生じさせた。 フィリップ4世のころには、この瘰癧さわりがクローヴィスの洗礼に由来する塗油された王の霊威によるものという観念があらわれている。そしてこの伝説はランス大聖堂にクローヴィス以来の聖香油が聖瓶(サント・アンブール)に保管されており、王の即位式で王は聖香油を塗油され聖別されるという観念につながった。 中世末期になると、この瘰癧さわりに別個の聖マルクールの瘰癧治療信仰が混入し、区別がつかなくなった。ヴァロワ朝のフランソワ1世の時代には、王の瘰癧治癒能力がこの聖者に由来するという観念が一般化していた。フランス王はコルブニーにある聖マルクールの遺骨の前でミサをおこなう際に瘰癧さわりも施すようになり、それを目的として参集する病人が年々増大した。 フランスの「瘰癧さわり」はブルボン朝のルイ16世の時代まで熱心に続けられていたが、フランス革命が起こると王は神授権説とともにこの慣習も捨てることとなった。これ以降はシャルル10世の時代に「瘰癧さわり」の復活が試みられているが、王自身も否定的であったので1825年に一回おこなわれたのみでこれが最後の事例となった。
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