ファラ・スピーチ
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1944年9月23日に開催された全米トラック運転手組合との夕食会でのスピーチで、ルーズベルトはワシントンD.C.で1944年アメリカ合衆国大統領選挙戦を開始した。30分間のこのスピーチは全米のラジオで放送された。ルーズベルトはこのスピーチでアメリカ合衆国議会で敵対する共和党を非難し、自身に対する攻撃がどのようなものかを語った。スピーチの後半で、ルーズベルトがアリューシャン列島を訪問したときにファラを島に置き去りにしてきて出立してしまったために、莫大な税金を費やしてアメリカ海軍の駆逐艦を派遣してまでファラを迎えに行かせたという、共和党員からの批判について言及している。 共和党の指導者たちは、私(ルーズベルト)、妻、子供たちに対する攻撃だけに飽き足らないようだ。そう、全く満足していない。今や彼らは私の小さな犬のファラにまで攻撃を加えている。もちろん私に対する攻撃は構わないし、私の家族に対する攻撃も甘受しよう。だが、ファラは別だ。ファラはスコットランド出身で、今でも生粋のスコットランド気質を持ち続けている。彼(ファラ)は、共和党が議会でどのような嘘をついているのかを知っている。私がアリューシャン列島に彼を置き去りにしてしまったために、200万ドルか300万ドル、あるいは800万ドル、1200万ドルもの税金を費やして、海軍の駆逐艦を派遣して彼を探しに行かせたなどというでっち上げを耳にしたときに、彼のスコットランド魂が激怒した。このとき以来彼の性格は変わってしまった。私は自分に対する悪意ある嘘には慣れている。だが、私の犬への中傷に対して怒り、異議を唱える権利を持っていると確信している。 共和党からの非難をジョークにしてしまうというアイディアを出したのはオーソン・ウェルズだった:292–293。ウェルズはこの選挙戦を通じてルーズベルトにスピーチのアイディアや言い回しなどを時折り伝えており、ウェルズが言うところの「ちょっとしたスピーチ」として使用されていた:374。それらの一つが、この「ファラ・スピーチ」だったのである。ウェルズが即興で口にしたファラのジョークを気に入ったルーズベルトが、スタッフに命じてこのファラ・スピーチに仕上げさせた。ファラ・スピーチが全国放送された後に、ルーズベルトはウェルズに「どうだった?タイミングは良かったかい?」と訊いている:292–293。 このスピーチの「聴衆は大いに盛り上がって笑いだし、(ルーズベルトに)声援を送った」と歴史家ドリス・カーンズ・グッドウィンは書いている。さらに「会場は割れんばかりの笑いにつつまれた。この笑いは、ラジオから流れるスピーチをリビングルームやキッチンで聴いていたアメリカ中の人々のもとにも大きく届いた。ファラの仕草はとても愛らしく、あるリポーターは「頑固な共和党員でさえも思わず笑みをこぼす」と言うほどだった」としている:548。
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