ビタミンC合成能を失った動物種
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:13 UTC 版)
「ビタミンC」の記事における「ビタミンC合成能を失った動物種」の解説
L-グロノラクトンオキシダーゼ(ビタミンC合成酵素)遺伝子の活性は、いくつかの種の進化史のなかでそれぞれ独立に失われている。哺乳類ではテンジクネズミや霊長目の直鼻亜目がこの遺伝子の活性を失っており、そのためにビタミンCを合成できないが、その原因となった突然変異は別のものである。どちらの系統でも、活性を失った遺伝子は多数の変異を蓄積しつつ、偽遺伝子として残っている。スズメ目の鳥類では、活性の喪失が何度か起こっており、またおそらくは再獲得も起こったために、種によってビタミンC合成能力が異なる。他に、コウモリ類もこの遺伝子の活性を失っている。これらの動物が遺伝子変異によるビタミンC合成能力を失ったにもかかわらず継続的に生存し得た最大の理由は、これらの動物が果物、野菜等のビタミンCを豊富に含む食餌を日常的に得られる環境にあったためである。なお、鳥類のビタミンC合成能力について、原始的な鳥類は腎臓でビタミンCを合成しており、さらに進化した高等な鳥類(スズメ目)では、肝臓で合成するようになった。これは、酸素消費量の増大に伴う過酸化物質産生から身を守るため、より多くのビタミンC合成を行う必要があり、ビタミンC合成部位が腎臓よりも大きな肝臓に移行したと推測されることを示す文献もある。 霊長目でこの酵素の活性が失われたのは約6300万年前であり、直鼻亜目(酵素活性なし)と曲鼻亜目(酵素活性あり)の分岐が起こったのとほぼ同時である。ビタミンC合成能力を失った直鼻亜目にはメガネザル下目や真猿下目(サル、類人猿、ヒト)を含んでいる。ビタミンC合成能力を有する曲鼻亜目には、キツネザルなどが含まれる。 ヒト上科がオナガザル上科から分岐したのは、2800万年から2400万年前頃であると推定されている。ヒト上科の共通の祖先が旧世界のサルから分枝した際に、尿酸オキシダーゼ活性が消失したものと推定されている。尿酸オキシダーゼ活性の消失の意味付けは、尿酸が抗酸化物質として部分的にビタミンCの代用となるためである。
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