ヒルベルト空間の表現定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/21 20:03 UTC 版)
「リースの表現定理」の記事における「ヒルベルト空間の表現定理」の解説
この定理は、ヒルベルト空間とその(連続的)双対空間の間に、ある重要な関係性を構築するものである。すなわち、基礎体が実数体であるなら、それら2つの空間は等長同型であり、複素数体であるなら、それらは等長反同型(英語版)である、ということについてこの定理は述べている。そのような(反)同型性は、以下で述べるように、とりわけ自然なものである。 H をヒルベルト空間とし、H から体 R あるいは C へのすべての連続線型汎関数からなる双対空間を H* と表す。x が H の元であるなら、 φ x ( y ) = ⟨ y , x ⟩ ∀ y ∈ H {\displaystyle \varphi _{x}(y)=\left\langle y,x\right\rangle \quad \forall y\in H} で定義される関数 φx は H* の元である。ただし、 ⟨ ⋅ , ⋅ ⟩ {\displaystyle \langle \cdot ,\cdot \rangle } はヒルベルト空間の内積を表すものとする。リースの表現定理では、H* の「すべての」元に対してこのような形での表記法が一意に存在する、ということが述べられている。 定理 Φ(x) = φx で定義される写像 Φ: H → H* は、等長(反)同型である。すなわち、 Φ は全単射。 x と Φ(x) のノルムは等しい: ‖ x ‖ = ‖ Φ ( x ) ‖ {\displaystyle \Vert x\Vert =\Vert \Phi (x)\Vert } . Φ は加法的である: Φ ( x 1 + x 2 ) = Φ ( x 1 ) + Φ ( x 2 ) {\displaystyle \Phi (x_{1}+x_{2})=\Phi (x_{1})+\Phi (x_{2})} . 基礎体が R であるなら、すべての実数 λ に対して Φ ( λ x ) = λ Φ ( x ) {\displaystyle \Phi (\lambda x)=\lambda \Phi (x)} が成り立つ。 基礎体が C であるなら、すべての複素数 λ に対して Φ ( λ x ) = λ ¯ Φ ( x ) {\displaystyle \Phi (\lambda x)={\bar {\lambda }}\Phi (x)} が成り立つ。ただし、 λ ¯ {\displaystyle {\bar {\lambda }}} は λ の複素共役を表す。 Φ の逆写像は次のように表される。H* の与えられた元 φ に対し、その核の直交補空間は、H の一次元部分空間である。そこからゼロでない元 z を選び、 x = φ ( z ) ¯ ⋅ z / ‖ z ‖ 2 {\displaystyle x={\overline {\varphi (z)}}\cdot z/{\left\Vert z\right\Vert }^{2}} とする。このとき、Φ(x) = φ が得られる。 歴史的に、この定理はしばしばリースとフレシェの1907年の業績として扱われる。 量子力学を数学的に取り扱う際には、この定理は有名なブラ-ケット記法の正当化として考えられる。定理が成立するとき、すべてのブラベクトル ⟨ ψ | {\displaystyle \langle \psi |} には対応するケットベクトル | ψ ⟩ {\displaystyle |\psi \rangle } が存在し、その対応は明らかなものである。
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