ヒルベルト空間の直和
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/07 03:48 UTC 版)
「正定値核函数#直和とテンソル積(英語版)」も参照 前節と同様の仕方で、有限個のヒルベルト空間 H1, …, Hn が与えられたとき、 ⟨ ( x 1 , . . . , x n ) , ( y 1 , . . . , y n ) ⟩ = ⟨ x 1 , y 1 ⟩ + . . . + ⟨ x n , y n ⟩ {\displaystyle \langle (x_{1},...,x_{n}),(y_{1},...,y_{n})\rangle =\langle x_{1},y_{1}\rangle +...+\langle x_{n},y_{n}\rangle } を内積として直交直和が定義できる。得られる直和は与えられたヒルベルト空間を互いに直交する部分空間として含むヒルベルト空間である。 無限個のヒルベルト空間 Hi (i ∈ I) が与えられたときにも、同じ構成を行うことができる(内積の定義に際して、非零な成分は有限個ゆえ実質有限和となることに注意する)。ただし得られるのは内積空間にはなるけれども、必ずしも完備にならない。そこで、この内積空間の完備化をヒルベルト空間 Hi のヒルベルト空間としての直和と定義する。 あるいは同じことだが、I 上定義された函数 α で α i := α ( i ) ∈ H i ( ∀ i ∈ I ) and ∑ i ‖ α i ‖ 2 < ∞ {\displaystyle \alpha _{i}:=\alpha (i)\in H_{i}\quad (\forall i\in I)\quad {\text{ and }}\quad \sum _{i}\left\|\alpha _{i}\right\|^{2}<\infty } を満たすもの全体の成す空間として Hi たちのヒルベルト空間の直和を定義することもできる。このとき、そのような函数 α と β の内積は ⟨ α , β ⟩ = ∑ i ⟨ α i , β i ⟩ {\displaystyle \langle \alpha ,\beta \rangle =\sum _{i}\langle \alpha _{i},\beta _{i}\rangle } で与えられる。この空間は完備であり、確かにヒルベルト空間が得られている。 例えば、添字集合を I = N にとり Xi = R とすれば、直和 ⨁ i ∈ N X i {\displaystyle \textstyle \bigoplus _{i\in \mathbf {N} }X_{i}} はノルム ‖ a ‖ := √∑i |ai| が有限となる実数列 (ai) 全体の成す空間 l2 である。これをバナッハ空間の例と比べると、バナッハ空間の直和とヒルベルト空間の直和は必ずしも同じではないことがわかる。しかし有限個の成分しかないならば、バナッハ空間の直和はヒルベルト空間の直和と同型である(ノルムは異なるかもしれないが)。 すべてのヒルベルト空間は基礎体(R か C)の十分たくさんのコピーの直和に同型である。これはすべてのヒルベルト空間は正規直交基底をもつという主張と同値である。より一般に、ヒルベルト空間の任意の閉部分空間は補空間をもつ(とくに直交補空間がとれる)。逆に、リンデンシュトラウス–ツァフリーリの定理(英語版)の述べるとおり、与えられたバナッハ空間の任意の閉部分空間が補空間を持つならば、そのバナッハ空間は(位相的に)ヒルベルト空間に同型である。
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