バンコク憲章

国際保健用語集

バンコク憲章

【英】：Bangkok Charter

2005年、第6回ヘルスプロモーション国際会議で示されたバンコク憲章は、RaeburnとRootmanによれば、きわめて活気的な内容を含んでいる。憲章によれば、「ヘルスプロモーションは…、ポジティブ(positive)で包括的な(inclusive)な健康の概念を提供している。その概念はQOLの一つの決定要因であり、精神的かつスピリチュアルなウェルビーイングという要素も含んでいる」WHOの健康の定義が示すように、健康とは単に病気でない、ということだけではない。より積極的な意味合いをもつポジティブなものである、ということをこの憲章は述べている。ポジティブなアプローチをとることによって、キャパシティ・ビルディングやエンパワーメント、個人や地域の回復力(resilience)、QOLと健康をリンクさせることが可能になってくる。包括的(inclusive)であることによって、健康の決定要因の幅も広くなる。これまでエビデンスとして示されてきた経済、教育などの決定要因に加えて、まだエビデンスとしては弱い、文化要因、心理学的要因、スピリチュアルな要因などが今後より考慮されてくるであろう。QOLがこのように健康との関係づけてとりあげられた、ということもまたヘルスプロモーションの包括性を特徴付けるにふさわしい。精神面、スピリチュアルな面でのウェルビーイングをとりあげているのも注目に値する。これまで、その重要性は強調されながらも、公的な憲章にスピリチュアルという言葉がとりあげられることは少なかった。それがヘルスプロモーションにとってどういう意味をもつのか？その解明にはさらに一世紀を要するかもしれない。しかし、少なくともそのスピリチュアリティの可能性をここに示したことは画期的である。さらにバンコク憲章は、以下のようにヘルスプロモーションを位置づけるべきとした。1)グローバルな開発課題の中心に置くこと、2)全政府にとって核となる責任課題とすること、3)コミュニティや市民社会にとっても重要な中心課題とすること、4)すぐれた企業活動にも必要なものとすること。（神馬征峰）

参考資料：O’Neill M, Pederson A, Dupere S, Rootman I eds. Health Promotion in Canada: critical perspective: second edition. Canadian Scholars’ Press Inc. Toronto, 2007.