ハイ・スループット
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/18 06:47 UTC 版)
ゲル内消化の標準法は非常に時間と労力を要するものであり、そのため同時には比較的少数のタンパク質しか処理できない。したがって工業的規模ないし商業受託を行う研究施設にとっては、自動化によりこの限界を突破できれば理想的である。 今日、ゲル内消化をハイ・スループットに行う研究施設のために、単にピペット操作を行うだけのロボットから、全ての過程をこなす精巧な製品まで、様々な程度の自動化をおこなう製品が存在している。スポット・ピッカーは二次元電気泳動のゲルを画像処理し、そこからしかるべきタンパク質スポットを切り抜く装置である。得られたゲル断片はマイクロプレートに移され、その中でロボットがゲル内消化に必要な過程を実行する。こうして得られたペプチド溶液を、スポッターがMALDIプレートやESI用のマイクロプレートに移す。こうしたシステムの製造者としてGEヘルスケア(Ettanシリーズ)、ブルカ・ダルトニクス(PROTEINEER)、ABI(MultiPROBE II)、島津製作所(Xcise)などがある。 自動化で得られる処理性能以外の利点として、手作業が減ることと工程の標準化が挙げられる。ゲル内消化は工程が非常に多いため、結果が実験者の器用さに依存し、またコンタミネーションの危険が高い。自動化することによって結果の質が良くなることも大きな利点といえる。 自動化装置の欠点は、装置そのものや、その維持、消耗品などのコストが高いこと以外に、準備が複雑であることが挙げられる。ゲルの切り抜きにはスポット位置のデジタル情報が必要であり、染色法を標準化して特別なスキャナで読み込み、目的のスポットをソフトウェア上で指定しなければいけない。この煩雑な作業と、どんなにスポット数が少なくても最大性能で運用することになるせいで、研究者があるゲルに興味深いスポットをいくつか見出したからといってそれを解析するのは躊躇われる。またゲル内消化のあとに得られる質量分析のデータの量も問題である。得てしてその質には問題があり、データの解析をするのにはデータの取得よりもはるかに長い時間がかかるからである。
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