ネネツ語とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > ネネツ語の意味・解説 

ネネツ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/28 22:01 UTC 版)

ネネツ語
ненэцяʼ вада
話される国 ロシア
地域 ネネツ自治管区, ヤマロ・ネネツ自治管区, タイミル自治管区, コミ共和国, ムルマンスク州[要出典]
民族 ネネツ人
話者数 31,300
言語系統
ウラル語族
方言
森林ネネツ語
ツンドラ・ネネツ語
表記体系 キリル文字
公的地位
公用語 ネネツ自治管区
ヤマロ・ネネツ自治管区
統制機関 統制なし
言語コード
ISO 639-3 yrk
テンプレートを表示

ネネツ語(ネネツご、ユラク語とも呼ばれた)は、ロシア北部のネネツ人が話す言語である。「森林ネネツ語」と「ツンドラネネツ語」に分けられる。この2つはよく同じ言語の方言として扱われるが、それらは全く違う言語で相互理解可能性も非常に低い。その2つのうち話者人口が多いのはツンドラネネツ語で、約3万人から4万人[1][2]カニン半島からエニセイ川の辺りに分布している[3]。森林ネネツ語の話者人口は1,000人から1,500人ほどで、アガン川、プル川、リャミン川、ナディム川の周辺に分布している[1][2]

ネネツ語は、ウラル語族に分類され、いくつかのヨーロッパの国家言語(すなわち、フィンランド語エストニア語ハンガリー語など)や他のロシアの少数言語と遠い親戚関係にある。2種のネネツ語はともにロシア語に大いに影響を受けており、またロシア語ほどではないが、コミ語ハンティ語からの影響も見られる。ツンドラ・ネネツ語は、先住民の言語で少数言語であるにもかかわらず、しっかりと記録がされており、1930年代にさかのぼる文学伝統も持っている。一方、森林ネネツ語が初めて書かれたのは1990年代であり、とても小規模である[2]

英語の「parka」はネネツ語から来ており、パーカは、彼らの伝統的な衣装である動物の毛皮などから作った長いフード付きの上着であった[4]

ネネツ語共通の特徴

ネネツ語の特徴は、ほとんど全ての子音において組織的な口蓋化が起こることである。これは原始サモエード諸語の、異なる母音の特性の間にある著しい差異から起こる[5]

  • *Cä, *Ca → *Cʲa, *Ca
  • *Ce, *Cë → *Cʲe, *Ce
  • *Ci, *Cï → *Cʲi, *Ci
  • *Cö, *Co → *Cʲo, *Co
  • *Cü, *Cu → *Cʲu, *Cu

軟口蓋音の *k と *ŋ はさらに、口蓋化した時に *sʲ と *nʲ に変わる。

ツンドラ地域で話される他のサモエード諸語(エネツ語ガナサン語、そして消滅言語のユラツ語)でも同じような変化が発生する。

ツンドラネネツ語と森林ネネツ語の違い

ツンドラネネツ語は、森林ネネツ語よりも初期のネネツ語の形が残っている。また、その音韻体系は東ハンティ方言の影響を受けているが、以下のような、変化も見られている[6][5]

  • ツンドラネネツ語:
  • 森林ネネツ語:
    • 頭文字の /s//x/
    • 中間の音の非鼻音化 /nʲ//j/
    • R音側面摩擦音への変化: /r/, /rʲ//ɬ/, /ɬʲ/
    • 長子音の鼻音を短くする
    • 長子音の音割れ /lː//nɬ/
    • 母音変化英語版があるため、口蓋化した軟口蓋音音素に分解される /kʲ/, /xʲ/, /ŋʲ/
    • 狭母音をもつ音節に先行する非狭母音の上昇
    • 強勢がおかれない音節で、母音の区別が無くなる
    • /a//æ/ には、長短の大きな差異がある。

脚注

  1. ^ a b Ethnologue
  2. ^ a b c Tapani Salminen, Farrell Ackerman (2006). “Nenets”. In Keith Brown. Encyclopedia of Languages & Linguistics. 8 (2 ed.). オックスフォード, イングランド: エルゼビア. pp. 577–579 
  3. ^ Peter Staroverov (2006). Vowel deletion and stress in Tundra Nenets. モスクワ, ロシア. p. 1 
  4. ^ "parka" in Merriam-Webster Online Dictionary
  5. ^ a b Sammallahti, Pekka (1988), “Historical phonology of the Uralic languages, with special reference to Samoyed, Ugric, and Permic”, in Denis Sinor, The Uralic Languages: Description, History and Foreign Influences, Leiden: Brill, pp. 478–554 
  6. ^ Salminen, Tapani (2007), “Notes on Forest Nenets phonology”, Mémoires de la Société Finno-Ougrienne (ヘルシンキ, フィンランド: Suomalais-Ugrilainen Seura) 253, http://www.sgr.fi/sust/sust253/sust253_salminen.pdf 

外部リンク




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ネネツ語」の関連用語

ネネツ語のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ネネツ語のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのネネツ語 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS