セーバルとは? わかりやすく解説

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セイバル

(セーバル から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/03 23:45 UTC 版)

セイバル: Seibal, 西: Ceibal)は、グアテマラペテン県パシオン川西岸の急峻な断崖の丘陵上に位置するマヤ遺跡である。先古典期中期初頭から古典期終末まで、盛衰を繰り返した。この遺跡の名前は、本来「セイバ(Ceiba)の木のある場所」という意味の現地スペイン語で "Ceibal" と綴られていたが、後述するような理由で "Seibal" と綴られることが多くなっている。また、少なくとも55基に及ぶ石製記念碑が確認されており、そのうち21基が石彫の状態がよいことで早くから注目されてきた[1]。セイバルの中心部は、1平方キロにわたっていくつかの丘陵上に築かれ、大きく3つに分けられ西側からA,C,Dと名づけられている。最盛期となった古典期終末(バヤル相)の人口は、ハーバード大学の調査隊による家屋の存在を示すマウンドの数や濃度などによって1万人に達したであろうと推計されている[2]




注釈

  1. ^ 原語は後述するように Cache(キャッシュ)と記される。意図的な埋納行為がなされた遺構という意味ではいわゆる「デポ」(Depot)に近いが、中国の窖蔵や日本の銅鐸出土地、ヨーロッパ青銅器時代の青銅器の一括埋納行為とはことなり、メソアメリカの場合、宗教的ないし儀礼的な行為としてなされる面が強く、単純に「デポ」ということでは捉えきれない概念である。以前は「埋納遺構」「貯蔵穴」と呼ばれることもあったが、宗教性、儀礼性といったその性格を捉えきれているとは言えず、大井邦明は、スペイン語のofrendaから「供物」と訳しているが、遺構としての意味合いが薄くなってしまう。現中部大学教授の杓谷茂樹は「儀礼などが執り行われた際に供え物が納められてできた」遺構についてこの語を充てると述べている[6]。ただし、あくまでも杓谷の造語であり、定まった呼称がないことから「」付きで本稿では用いることとする。
  2. ^ 青山和夫は、紀元前1000年 - 同700年を先古典期中期前半、紀元前700年 - 同400年を先古典期中期後半としているが[11]、本稿では便宜上ハーバード大学調査隊の年代観に従う。
  3. ^ 本来の呼称は、Court Aで、建物に三方ないし四方を囲まれた空間であり、「パティオ」とも呼べる空間でもあるが、住居跡や建物の配置について概説書でも「中庭」という表現を使うことがあるので[15]、中庭とした。Court Aの場合は、西側のD-26をはじめ四方を神殿ピラミッドに囲まれている。グループDでは、このような「中庭」がCourt Eまで5か所みられる。
  4. ^ ウチャーン・キン・バラムは「支配者3」の即位前からの戦士ないし軍事的指導者としての呼称である。即位後は王としては別の名を称したが、石碑の遺存状態など諸般の事情で解読不能であるため、以下も「支配者3」をウチャーン・キン・バラムと呼ぶこととする[20]
  5. ^ この人物については、研究者によって呼称が異なり、トゥアーテロやコウは、「ワトゥル」と呼ぶが[28]、シャーラー、リンダ・シーリー、サイモン・マーティンらは「アフ・ボロン・ハーブタル」と呼んでいる[18]
  6. ^ このことに関連してシーリーとデイヴィッド・フリーデルは、構築物A-3は、チチェン・イッツアの「高僧の墓」のピラミッドを模したものではないかと主張している[40][41]
  7. ^ 中性子を試料にあてることにより発生したガンマ線の強さやエネルギーを測定することによって、試料を破壊せずに元素の種類や重さを分析する理化学的測定法[47]

出典

  1. ^ Webster 2001, p. 659.
  2. ^ Willey 2001, p. 131.
  3. ^ Smith 1982, map1, 2.
  4. ^ Willey 1975, pp. 6 - 7.
  5. ^ Sabloff 1975.
  6. ^ 杓谷1995,p.138
  7. ^ a b Smith 1982.
  8. ^ Sabloff at.al.1982
  9. ^ Graham 1990.
  10. ^ Tourtllot 1990.
  11. ^ a b c 青山 2007, p. 29.
  12. ^ Smith 1982, pp. 12, 156 - 157, 179 - 180, 224 - 225.
  13. ^ コウ 2003, p. 67.
  14. ^ Smith 1982, p. 224.
  15. ^ たとえば八杉1990,p.171など
  16. ^ a b c d Smith 1982, loc.cit.
  17. ^ Sabloff 1975, p. 232.
  18. ^ a b c マーティン & グルーベ 2002, p. 336.
  19. ^ a b コウ 2003, p. 296.
  20. ^ マーティン & グルーベ 2002, p. 87.
  21. ^ マーティン & グルーベ 2002, p. 88.
  22. ^ マーティン & グルーベ 2002, p. 90.
  23. ^ マーティン & グルーベ 2002, pp. 90 - 91.
  24. ^ マーティン & グルーベ 2002, p. 91.
  25. ^ 青山 & 猪俣 1997, p. 144.
  26. ^ マーティン & グルーベ 2002, p. 92.
  27. ^ マーティン & グルーベ 2002, p. 93.
  28. ^ コウ 2003, p. 203.
  29. ^ コウ 2003, pp. 203 - 204.
  30. ^ マーティン & グルーベ 2002, pp. 76 - 77.
  31. ^ マーティン & グルーベ 2002, p. 169.
  32. ^ Graham 1990, p. 58, Fig.25.
  33. ^ a b コウ 2003, pp. 202 - 203.
  34. ^ マーティン & グルーベ 2002, p. 335.
  35. ^ 青山 & 猪俣 1997, p. 197.
  36. ^ サブロフ 1998, p. 97.
  37. ^ コウ 2003, loc.cit.
  38. ^ 青山 & 猪俣 1997, pp. 196 - 197.
  39. ^ コウ 2003, p. 204.
  40. ^ Schele and Freidel 1990
  41. ^ Porter Weaver 1993, p. 359.
  42. ^ Andrews 1990, pp. 7 - 10.
  43. ^ Andrews 1990, p. 10.
  44. ^ Sabloff 1975, p. 15.
  45. ^ Sabloff 1975, p. 13, Fig.7.
  46. ^ サブロフ 1998, p. 99.
  47. ^ [1]
  48. ^ サブロフ 1998, p. 114.





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