センボンサイギョウガサとは? わかりやすく解説

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センボンサイギョウガサ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/04 22:21 UTC 版)

センボンサイギョウガサ
Panaeolus cinctulus
分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
亜門 : ハラタケ亜門 Agaricomycotina
: ハラタケ綱 Agaricomycetes
亜綱 : ハラタケ亜綱 Agaricomycetidae
: ハラタケ目 Agaricales
: (和名なし) Galeropsidaceae
: ヒカゲタケ属 Panaeolus
: センボンサイギョウガサ Panaeolus cinctulus
学名
Panaeolus cinctulus (Bolton) Sacc. (1887)[1]
シノニム

ほか

和名
センボンサイギョウガサ
英名
weed Panaeolus
girdled Panaeolus
banded mottlegill
red caps
センボンサイギョウガサの分布:作成2010年
センボンサイギョウガサ
float
菌類学的特性
子実層にひだあり

傘はつり鐘形

もしくは凸形

子実層は固着形

もしくは上生形
柄には何も無い
胞子紋は
生態は腐生植物
食用: 向精神性
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センボンサイギョウガサ(千本西行傘[3]学名: Panaeolus cinctulus)は、Galeropsidaceae[注 1]ヒカゲタケ属に属する小型のキノコ菌類)。世界中に広い分布を持つ。一箇所に多数生えることがあり、そこからこの名前がついた。幻覚作用のあるシロシビンが含まれる。形態的にコレラタケに類似しているため、しばしば間違えられる。

20世紀の初頭、ヨーロッパでは雑草ヒカゲタケ (weed Panaeolus) とよばれた。商業用きのこの菌床から生えることが多かったからである。酔うため、このキノコは取り除かなければならない雑草のような存在であった。栽培は容易である。[4]

特徴

子実体からなる。傘は1.5 - 6センチメートル (cm) 。はじめは円錐形で、のちに中央部がわずかに盛り上がった平らに開く[3]。表面は舐めらかで吸水性を持ち、湿っているときは赤茶色であり、乾いているときは淡い土褐色となり、成熟すると傘の端に沿って暗い帯がみられる帯黒となる[3]

は赤茶色からクリーム色に近い色をしており、肉厚は薄い。

ヒダははじめ暗灰褐色のちに胞子が成熟するとほぼ黒色になり、縁の部分は白色でわずかに粉状に見える[3]。ヒダは密に配列し、柄に対して湾生する[3]胞子は黒く滑らかで細かい。12×8ナノメートル (nm) 程度の大きさで楕円形[要出典]

柄は中空で[3]、長さ2 - 10 cm、太さは3 - 9ミリメートル (mm) で先細りになっている。柄の表面は傘とほぼ同色[3]。上部は微粉状に覆われたようになっており[3]、時々灰色の胞子の粉がついている。くぼみ、どんな膜にも覆われておらず、小さく白い小繊維に覆われており、頂点にや柄の下側に筋がついている。柄の基部は汚れており白い菌糸が付着する[3]。ストロー状になっている。

新鮮なものはでんぷん質で、乾燥すると岩塩風の味になる。

分布・生息地

アメリカ(北カルフォルニアやワシントン、特にオレゴン州[4])、カナダ、南米、ヨーロッパアジアロシアオセアニアなど世界の広くに分布する[5]。日本では7月の宮城県[3]、5月の滋賀県[6]、沖縄[7]

春から秋にかけて、牛馬の糞、畑地、腐葉土、木材チップが撒かれた公園の遊歩道などでも見られ、束生または何千本も群生することがある[3]。また山道沿いの草地など[8]エノキタケを栽培した後の、ぬかやもみ殻を混ぜたおがくずに発生しやすく、エノキタケの栽培地で誤食が多い[8]。アメリカでは、豪雨の後の、春先、秋先に群生する[4]。日本では本州と北海道であり、地方によっては堆肥にほぼ通年みられる[8]。センボンサイギョウガサは好糞性であり、糞や、芝生、干草、堆肥、厩、木片などでよく育つ[4]

栽培

高額な装置を用いずとも、栽培は初心者にも簡単である[4]。胞子を採取するには、柄から傘をとり、清潔な紙にヒダを向けて置き、上からガラス瓶を置き20分ほどで黒い胞子を産生するか、あるいはヒダをスワブ綿棒でぬぐい、ぬぐった綿の端を培養試験管に入れる[4]。この胞子を減菌された培養地に移す[4]。あるいは、20時間が経過していない傘から培養地を作ることもできる[4]。すでに本キノコが繁殖した堆肥化したワラを、ワラを並べた裏庭に置くことで屋外栽培も可能で、雨が降れば豊富に成長する[4]。湿度90度以上、温度27度から30度の暗所で培養され、その後は光を得て適切に成長し、収穫時には湿度85%から92%、温度24度から27度である[4]

このキノコはいわゆる毒キノコである[3]。幻覚を起こすシロシビンバエオシスチンなどのインドールアルカロイドが多く含まれている[3]。中毒症状は、頭痛悪寒、平衡感覚喪失、めまい、血圧降下、幻覚、精神錯乱などの中枢神経系の中毒を引き起こすとされ[3]、毒はワライタケより強いと言われている。いわゆるマジックマッシュルームである。このため日本では法によって不法な所持・使用が禁止されている[3]

アメリカでは、シロシビンが規制物質法で規制されているため、含有するキノコは規制物質の「容器」だと考えられ、所持・使用はほとんどの州で禁止されている。

滋賀県で採取された本種のシロシビン含有成分の量は、重量当たり、0.64-0.7%であった[6]。なおベオシスチンの方が多く、N-Nジメチルトリプタミン(DMT)も検出された[6]

脚注

注釈

  1. ^ 古い図鑑の記載ではヒトヨタケ科(Coprinaceae)に分類される[3]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n Panaeolus cinctulus”. MYCOBANK Database. 国際菌学協会 (IMA) とウェスターダイク菌類生物多様性研究所. 2025年3月5日閲覧。
  2. ^ サミュエル・フレデリック・グレイ (1766 – 1828) or ジョン・エドワード・グレイ (1800-1875)
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 長沢栄史 監修 2009, p. 131.
  4. ^ a b c d e f g h i j John Allen (1994). “A Short Note on the Home Cultivation of Panaeolus subbalteatus”. Psychedelic Illuminations (5): 32-33. https://www.erowid.org/plants/mushrooms/mushrooms_cultivation24.shtml. 
  5. ^ Gastón Guzmán , John W. Allen , Jochen Gartz (1998). “A worldwide geographical distribution of the neurotropic fungi, an analysis and discussion” (pdf). Annali del Museo civico di Rovereto (14): 189–280. http://www.museocivico.rovereto.tn.it/UploadDocs/104_art09-Guzman%20&%20C.pdf.  (on Fondazione Museo Civico di Rovereto)
  6. ^ a b c 草野源次郎「キノコの毒成分」『遺伝』第39巻第9号、1985年9月、p32-36、NAID 40000130647 
  7. ^ 玉那覇康二「沖縄県で発生している自然毒中毒事例」『マイコトキシン』第63巻第1号、2013年1月31日、55-65頁、doi:10.2520/myco.63.55NAID 10031161946 
  8. ^ a b c 小山昇平『日本の毒キノコ150種』ほおずき書籍、1992年、80頁。ISBN 4-89341-168-3 

参考文献

外部リンク





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