スーパー・ボイド説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/18 01:51 UTC 版)
「WMAPコールドスポット」の記事における「スーパー・ボイド説」の解説
コールドスポットについてのひとつの可能な説明は、巨大なボイドがわれわれと原初のCMBの間に存在するというものである。ボイドは、遅期型積分ザックス・ヴォルフェ効果あるいは Rees-Sciama 効果により見かけ上視線上に周辺よりも冷たい領域を作り出すことができる 。光子がボイドの中を飛行する間ダークエネルギーがボイドを拡張しないのであれば、この2つの効果は非常によく似たものとなる。 2007年8月に Rudnick, Brown と Williams は、アメリカ国立電波天文台VLAスカイサーベイ (NRAO VLA Sky Survey ; NVSS) でのコールドスポット方向での銀河数の計測において、1つのディップ (dip;落ち込み)が発見されたと主張した。これは赤方偏移がほぼ z = 1 のスーパーボイドの存在を示唆する。McEwen 他は、 独立に同じサーベイの全観測エリアについてのウェーブレット解析を使用して相関を見出した。ただし、スーパーボイドに関する示唆は明示的には前に出さなかった。 大きなボイドがいくつか宇宙で存在することが知られているが、コールドスポットを説明するにはボイドは異常に大きい(おそらく典型的なボイドよりも体積で1000倍)必要がある。そのようなボイドは、60から100億光年離れた差し渡し10億光年に近いものになり、おそらく大規模構造という点ではコールドスポットが原初のCMBに起因して発生する場合より可能性が低い 。 2008年5月に、arXivプレプリントサーバ上に2本の論文が掲載された。1本はスーパーボイド説に否定的なものであるが、他方は間接的に支持するものである。まず、 Smith と Huterer は、Rudnick 他が主張するように確かにNVSSのコールドスポット付近の銀河密度に有意なディップは存在するが、それはコールドスポットの中心にはなく、コールドスポットの中にディップを含まない円を多数描くことができることを見出した。これは、コールドスポットがNVSSデータが示唆するようにスーパーボイドに起因するものではあり得ないことを証明するものではない。これは、ベイズ統計学的な手法を用いてコールドスポットがスーパーボイドに起因するという証拠は非常に根拠の薄いものであることを検証したに過ぎない。 2番目の論文で、Granett、 Neyrinck および Szapudi は、スローン・デジタル・スカイサーベイ (SDSS)の明るい赤色銀河カタログ (Luminous Red Galaxy catalog)の中の50個のスーパーボイドと50個の超銀河団(supercluster)とCMBのこの方向から来る信号を比較したところ、非常に有意に(十分な信頼性を持って)スーパーボイドと超銀河団がCMBの上にそれぞれコールドスポットとホットスポットを作り出していることを発見した。これは、まず間違いなく積分ザックス・ヴォルフェ効果の最もクリアーな検出であり、ダークエネルギーが宇宙の膨張を加速していることの証拠を与えている。またこの発見は、スーパーボイドがCMBに計測可能な効果を与えることを示しているので、コールドスポットについてのスーパーボイド原因説を支持するものでもある。ただし、コールドスポットはSDSSのサーベイでは観測できないので(SDSS望遠鏡はアメリカ合衆国に設置された地上望遠鏡であるので南天の観測には適していない)間接的な支持に留まる。
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