ウェーブレット解析とは? わかりやすく解説

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ウェーブレット

(ウェーブレット解析 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/22 08:37 UTC 版)

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ウェーブレット: wavelet)やマザーウェーブレット: mother wavelet)とは、数学において、局在する波、つまり、有限の長さの波もしくは速やかに減衰する波の事。ファーザーウェーブレット: father wavelet)とは、多重解像度解析にて使われる、マザーウェーブレット関数とセットで使われるスケーリング関数の事。waveletはwave(波)とlet(小さい)の合成語である。

ウェーブレット変換・ウェーブレット解析とは、ウェーブレットを用いて変換・解析する事。信号表現は入力信号に合致するようなウェーブレット波形の拡大縮小(スケーリング)・平行移動(シフト)により行われる。より正確には、この信号表現はウェーブレット系列と呼ばれ、これは2乗可積分関数のヒルベルト空間における完全正規直交系基底関数集合(正規直交基底)を用いた線形基底展開である。

歴史

ウェーブレットの発展は、20世紀初頭のハンガリー人数学者ハール・アルフレッドによるいくつかの断片的な考察に基づく。ガーボル・デーネシュによるその後の研究でガボール・アトム英語版が得られた。ガボール・アトムはウェーブレットと似た形で構成され、似た目的に応用された。ウェーブレット理論への大きな貢献のひとつは、1975年ジョージ・ツワイクによる連続ウェーブレット変換英語版(初期には cochlear 変換と呼ばれていて、耳の音に対する反応を研究していたときに発見された。) [1] の発見である。

ウェーブレットの概念は、1975年にエルフで石油探査をしていたフランス人地球物理学者ジャン・モーレー英語版が発見した。1981年、モーレーは クロアチア系フランス人物理学者アレックス・グロスマン英語版との共同研究から連続ウェーブレット変換英語版の定式化(Goupillaud)を行なった。彼らはフランス語で"小さい波"を意味するondeletteという言葉を用いていたが、少し後に英語に翻訳された際に"onde"は"wave"と訳されてウェーブレット("wavelet")という用語が誕生した。

その後のウェーブレット理論における大きな貢献には、Strombergによる離散ウェーブレット変換における初期研究(1983年)、イングリッド・ドブシー英語版によるコンパクト台を持つ直交ウェーブレット(1988年)、Mallatによる多重解像度解析に関する提案(1989年)、Delpratによる連続ウェーブレット変換における時間-周波数変換(1991年)、Newlandによるハーモニックウェーブレット変換英語版など、枚挙にいとまがない。

年表

  • 1909年: 最初のウェーブレット (Haarによるハールウェーブレット)
  • 1950年代以降: Jean Morlet , Alex Grossman
  • 1980年代以降: Yves Meyer, Stephane Mallat, Ingrid Daubechies, Ronald Coifman, Victor Wickerhauser

ウェーブレット理論のアウトライン

ウェーブレット理論は、いくつかの異なる目的で応用される。 全てのウェーブレット変換は、時間周波数表現英語版であると考えられるが、調和解析とも関係がある。

ウェーブレット変換は、大きく連続ウェーブレット変換英語版(CWT)と離散ウェーブレット変換(DWT)に分類される。これらの違いは、連続ウェーブレット変換では可能な全てのスケールとシフトが用いられるのに対して、離散ウェーブレット変換では一部分のみが使われることにある。

連続ウェーブレット変換英語版は、ハイゼンベルク不確定性原理に支配されている。同様に、離散ウェーブレットにおいても不確定性原理は考慮されなければならない。

多くの場合に有用である離散ウェーブレット変換は、有限インパルス応答(FIR)フィルタで構成されるフィルタバンクである。

ウェーブレット変換は3つに分類されることが多い。連続ウェーブレット変換英語版離散ウェーブレット変換多重解像度解析(MRA)による離散ウェーブレット変換である。以下、この3つについて解説する。

連続ウェーブレット変換

連続ウェーブレット変換英語版においては、有限なエネルギーを持った信号は、連続な周波数バンドの群(もしくは

Meyer
Morlet
Mexican Hat

スケールaの部分空間は、以下の式で生成される。(これはベビーウェーブレットと呼ばれることがあるがあまり一般的ではない)

D4 wavelet

各種あるウェーブレット変換の離散化の全ての方法において、上半面上の各有界矩形領域は有限個の係数のみを持つ。しかし、各係数を求めるためには積分の評価が必要となる。このような数値的な複雑さを避けるために、スケーリング関数(ファーザーウェーブレット)と呼ばれる補助関数

出典は列挙するだけでなく、脚注などを用いてどの記述の情報源であるかを明記してください。記事の信頼性向上にご協力をお願いいたします。2018年1月

英文参考図書

日本語参考図書

  • チャールズ K.チュウイ、桜井明(訳)、新井勉(訳):「ウェーブレット入門」、東京電機大学出版局、ISBN 4-501-52060-4(1993年5月20日)。
  • 榊原進:「ウェーブレットビギナーズガイド」、東京電機大学出版局、ISBN 4-501-52270-4(1995年5月20日)。
  • J.J.ベネディット(著)、M.W.フレージャー(著)、山口昌哉(訳)、山田道夫(訳) 「ウェ-ブレット:理論と応用」、シュプリンガー・フェアラーウ東京、ISBN 4-431-70681-X (1995年12月12日)。
  • 齋藤兆古:「Mathematicaによるウェーブレット変換」、朝倉書店、ISBN 4-254-22139-8 (1996年9月5日)。FD付き。
  • 芦野隆一、山本鎮男:「ウェーブレット解析 - 誕生・発展・応用」、共立出版、ISBN 4-320-01537-1(1997年6月5日)。
  • チャールズ K.チュウイ、桜井明(訳)、新井勉(訳):「ウェーブレット応用:信号解析のための数学的手法」、東京電機大学出版局、ISBN 4-501-52780-3(1997年12月10日)。
  • 齋藤兆古:「ウェーブレット変換の基礎と応用 - Mathematicaで学ぶ」、朝倉書店、ISBN 4-254-22141-X (1998年4月10日)。FD付き。
  • G.ストラング、T.グエン、高橋進一(訳)、池原雅章(訳):「ウェーブレット解析とフィルタバンク I 入門編」、培風館、ISBN 4-563-00594-0(1999年7月10日)。
  • G.ストラング、T.グエン、高橋進一(訳)、池原雅章(訳):「ウェーブレット解析とフィルタバンク II 応用編」、培風館、ISBN 4-563-00595-9(1999年7月12日)。
  • 中野宏毅、山本鎮男、吉田靖夫:「ウェーブレットによる信号処理と画像処理」、共立出版、ISBN 4-320-08549-3(1999年8月15日)。
  • 新井康平:「ウェーブレット解析の基礎理論」、森北出版、ISBN 4-627-07511-1(2000年11月24日).
  • 前田肇、佐野昭、貴家仁志、原普介:「ウェーブレット変換とその応用」、朝倉書店、ISBN 4-254-20943-6 (2001年1月15日)。
  • G.G.ウォルター、榊原進(訳)、萬代武史(訳)、芦野隆一(訳):「ウェーヴレットと直交関数系」、東京電機大学出版局、ISBN 4-501-61870-1(2001年4月20日)。
  • 謝哀潔、鈴木武:「ウェーブレットと確率過程入門」、内田老鶴圃、ISBN 4-7536-0120-X (2002年3月20日)。
  • B.B.ハバード著、山田道夫(訳)、西野操(訳):「ウェーブレット入門」、朝倉書店、ISBN 4-254-22146-0 (2003年2月20日)。
  • I. ドブシー、山田道夫(訳)、佐々木文夫(訳):「ウェーブレット10講」(原題 Ten Lectures on Wavelets)、シュプリンガー・フェアラーク東京、ISBN 4-431-70870-7 (2003年11月26日)。
  • Paul S. Addison、新誠一(訳)、中野和司(監訳):「図説 ウェーブレット変換ハンドブック」、朝倉書店、ISBN 4-254-22148-7(2005年5月20日)。
  • 電気学会編:「ウェーブレット解析の産業応用」、朝倉書店、ISBN 4-254-22042-1 (2005年9月30日)。
  • 新井仁之:「ウェーブレット」、共立出版、ISBN 978-4-320-01698-9(2010年1月15日)。
  • 一條博:「MATLAB/SCILABによる ウェーブレット信号解析入門」、秀和システム、ISBN 978-4-7980-3616-8(2012年12月28日)。
  • 山田道夫、萬代武史、芦野隆一:「応用のためのウェーブレット」、共立出版、シリーズ応用数理第5巻、ISBN 978-4-320-01954-6(2016年1月25日)。

外部リンク




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