スキャンレーションとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > スキャンレーションの意味・解説 

スキャンレーション【scanlation】


スキャンレーション

別名:マンガスキャンレーション漫画スキャンレーション
【英】scanlation, Manga scanlation

スキャンレーションとは、主に海外において、日本マンガ作品などスキャンしてセリフ部分翻訳しマンガ海外版を自主制作することである。普通はそうして制作され翻訳作品電子コミックとしてインターネットなどを通じて公開配布することまで含む。

スキャンレーションという語はスキャンscan)と翻訳translation)を組み合わせた語である。日本マンガなどは諸外国でも人気高く、まだ翻訳版が刊行されていないマンガ有志自主制作し、公開して共有するケース多々あるそうしたスキャンレーション作品公開している大規模なWebサイト多数上っている。

スキャンレーションは有志権利者無断行っている行為であり、スキャンレーション作品公開することは著作権侵害する違法行為である。スキャンレーションサイトには悪質な広告掲載しているケースも多いとも指摘されており、多方面において問題視されている。


参照リンク
Manga Scanlation Services, a Viable Target for Malicious Activities - (Symantec
印刷・DTPのほかの用語一覧
電子書籍:  自炊派  ソニーリーダー  空飛ぶ本棚  スキャンレーション  スキャン代行サービス  2Dfacto  T-Time

スキャンレーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/30 13:39 UTC 版)

ファン翻訳 > スキャンレーション
日本語(2番目)から英語(1番目)へのスキャンレーション

スキャンレーション: Scanlation)とは、ファンによる漫画の翻訳で、ページのスキャン翻訳画像編集というプロセスで制作される。アマチュアによるグループ作業であり、ほとんどの場合、著作権者の明示的な許可なく行われる。「スキャンレーション」という言葉はスキャン翻訳(トランスレーション)を組み合わせたかばん語である。翻訳先の言語は英語をはじめスペイン語韓国語中国語タイ語ポルトガル語など多岐にわたる。翻訳元は主に日本の漫画だが、韓国の漫画(マンファ)や中国の漫画(マンホア)なども存在する。

スキャンレーションを行うことは英語で スキャンレート (Scanlate)、実行者はスキャンレーター (Scanlator) と呼ばれる。関連してアニメーションを翻訳して公開することはファンサブ(字幕)/ファンダブ吹き替え)と呼ばれる。

スキャンレーションは多くの場合、原本を調達する者 (Raw provider)、翻訳者 (Translator)、スキャン担当者 (Scanner)、写植担当者 (Typesetter)、画像処理ソフトを使用して体裁を整える編集者 (Editor)など、主に漫画ファンの閲覧する電子掲示板等で集められた専門技能を持つ者が数人単位のグループを組んで作業にあたる。翻訳者には日本語を学習した英語話者のほか、英語に堪能な日本人も参加していることがあるが、無償で活動する素人集団であるため作業の質は玉石混交で明らかな誤訳もある。完成した作品はスキャンレーター自身のウェブサイトや、スキャンレーション情報を扱うサイトを通じ、ダウンロードやストリーミングBitTorrentなどのP2Pソフトを介して一般に配布される。

歴史

フレデリック・L・ショット英語版は、「1970年か1971年ぐらいから漫画の翻訳を夢見ていた」と述べている。その後、ショット、ジャレッド・クック、シンジ・サカモト、ミドリ・ウエダの4人で「駄々会」というグループを結成した。ショットは、駄々会を「まさに漫画翻訳の草分け」と呼んでいるが、1作も出版が実現しなかったため、これらの努力は「時期尚早」だったと述べている[1]。駄々会がライセンスを取得した漫画の1つは手塚治虫の「火の鳥」で、このときの翻訳は後に2002年から2008年にかけてビズメディアから出版された[1][2]。アマチュア・プレス・アソシエーション(APA)が、組織的な形態を備えた漫画スキャンレーションの初めであった[要出典]。 APAは主に1970年代後半から1990年代前半にかけて活動した[要出典]。スキャンレーションのグループは米国よりも先にヨーロッパで形成され始めていた。翻訳先の言語はさまざまだが、フランス語のグループが最大であった[3]

1990年代後半、インターネットの急速な普及と並行して漫画のセリフの翻訳が行われ始め、翻訳されたセリフを漫画のスキャンに貼りこむグループも現れた。当初、スキャンレーションは、アニメクラブ内で郵便、CD、電子メールを使用して配布されていた[4]。1998年までに、ジオシティーズエンジェルファイア英語版など多くの無料ホスティングサービスにスキャンレーションがアップロードされるようになり、やがてスキャンレーション制作者が糾合して「#mangascans」というIRCチャンネルを形成した。2000年には、組織化されたスキャンレーショングループが出現し始めた[5]。当時のスキャンレーショングループの多くは漫画出版社との間で、シリーズが公式にライセンスされたらスキャンレーションの制作を自主規制するという暗黙の合意を形成したとみられる。例えば、スキャンレーションサイトの「Toriyama's World」は、サイト上で最も人気を集めていた3シリーズのライセンスがビズメディアによって取得されると、それらの公開を止めた[6]。ビズメディアは『ショーネン・ジャンプ英語版』(『週刊少年ジャンプ』の北米版)を創刊するにあたって Toriyama's World を含むいくつかのスキャンレーショングループと提携し、宣伝させる代わりに自社のアフィリエイトプログラムを通じて収益の一部を分配した[7][8]

制作過程

スキャンレーションは通常、インターネットを介して協力するファンのグループによって行われる。多くのスキャンレーション制作者は他のグループの人々とも積極的に交流しており、同時に複数のグループに所属することもある。まったくほかと交流しない者もいる。スティーヴンと名乗る匿名の元スキャンレーション制作者は、スキャンレーション制作者は3つに分けられると述べている。活動期間が長く威信のある「古参」のグループ、正当な手段で成長した新興グループ、他からダウンロード数を奪って伸張しようとする泡沫グループである。古参と新参の間には多くの偏見が存在する。スティーヴンによると、古参は新しいグループを「流行や名声を求める売女」と見なして文化的・芸術的に重要な作品に取り組もうとするのに対し、新興グループは古参を時流に取り残された負け犬と見なして人気のあるタイトルに取り組むと述べた[9]。多くのグループは独自のウェブページとIRCチャンネルまたはDiscordサーバーを持っている。これらのプラットフォームは、スキャンレーション制作者が読者とリアルタイムで交流したり新しいスタッフを募集することを可能にするため、コミュニティの重要な部分である。

スキャンレーションの過程では、図のようにクリーニング(原語テキストの除去などの処理)が行われる。

先行するアニメファンサブのコミュニティと同様に、スキャンレーション制作者はグループを組織して分業を行う傾向がある。スキャンレーションの最初のステップは、紙媒体の原本("raw"(→生)と呼ばれる)を入手し、スキャン画像を翻訳者と「クリーナー」に送ることである。翻訳者は原文を目的の言語に翻訳し、テキストを校正者に送って正確性をチェックする。クリーナーは画像から原語のテキストを削除し、スキャンによって生じたノイズを修正し、明るさとコントラストのレベルを調整して公式に出版された書籍のように見えるようにする[9][10]。クリーニングの過程では絵の上に書かれた文字を削除することがある。空白部分はそのままにされる場合もあれば、絵を描き足すグループもある(通常はクリーナーが行う)。その後、タイプセッター(写植者)が「クリーニング」された画像の吹き出しに翻訳されたテキストを収め、強調などの効果に適したフォントを選択する[11]。翻訳と写植が終わった作品は品質管理者に送られ、校正を行った後にウェブサイトで公開される[10]

スキャンレーション制作者は、多くの場合、Adobe Photoshop(あまり一般的ではないがCLIP STUDIO PAINTも用いられる)などのデジタル写真およびイラスト編集ソフトウェアを使用して、スキャンレーションのクリーニング、修正、写植を行う。

スキャンレーショングループは、主に自分のサイトやMangaDex英語版のような共有サイトを通じて作品を公開する[要出典]。公開される作品数が膨大であるのに加え、膨大な数のスキャンレーショングループそれぞれが独自のサイトを持ち、作品の配布方法も多岐にわたる。同じ作品のスキャンレーションが複数のグループから公開されることもある。これらの事情により、公開されたスキャンレーションの情報を集めてリンクする専門のサイト(MangaUpdatesなど)が生まれた。漫画編集者でコラムニストのジェイク・T・フォーブス英語版は、2010年のコミコンのパネルディスカッションで、多くの異なるタイトルを1か所に集めたスキャンレーション集約サイトが最近配布プロセスの一部になったと述べた[12]

動機と倫理

初期の公式翻訳では英語圏の文化に合わせて漫画作品をローカライズするのが一般的だったが、スキャンレーションでは、日本語特有の敬称英語版を省略しなかったり、オノマトペを翻訳せずにローマ字化したり、漫画を左右反転しなかったりと、文化的に異なる部分も修正しなかった[13]。このミニマルなアプローチは「現地化 (localization)」との対比で「文化化英語版」と呼ばれることがある。スキャンレーションでは、効果音を翻訳せずに残すことで、日本的な雰囲気を喚起することもできる。読者は、文脈やレタリングから効果音の意味を推測できることが多い[14]

ファンは、様々な理由で漫画翻訳業界に非常に不満を持っていることが多い。『ジャパンタイムズ・ウィークリー』のコラムニスト、パトリック・マシアスは、「ページをめくる手が止まらなくなるような物語」に夢中になったファンが、公式翻訳の「苦痛を伴うほど」遅い刊行スピードに我慢できないと述べた[6]。ダグラス、ヒューバー、マノビッチは、特定のシリーズへのファンの熱意と公式翻訳の遅れが相まって、スキャンレーショングループの形成につながったと述べている[15]。スキャンレーション制作者はシリーズや作者を自分の言語で広めるのが目的だと主張するが、ホープ・ドノバンは、実際の目的は「自己宣伝」に近いと示唆し、多くのファンを持つことがスキャンレーション制作者にとって名誉なことだと主張している[16]

日本国外ではまったくライセンスされていなかったり、限られた国でしかライセンスされていない作品が多いため、スキャンレーショングループはより広い読者層にコンテンツへのアクセスを可能にしている。現在は閉鎖されている漫画ホスティングサイトIgnition-Oneのオーナー、ジョナサンは、「私がスキャンレーションコミュニティに参加した理由は、ひとえに、私が興味を持っていて、偶然にも他の誰も翻訳してない漫画を広めるためです」と述べた[6]。また、人気や売上の不足によりある地域での公式出版が打ち切られた漫画作品がスキャンレーションされることはよく見られる。

その他、公式翻訳において内容が改変されたり、ライセンス取得の時点で特定のジャンルが避けられたりといった自主規制(実際に行われている場合も、ファンによる推測の場合もある)に対抗するためにスキャンレーショングループが結成されることもある。Caterpillar's Nestというスキャンレーショングループを主宰していた「Caterpillar」は、自身のグループが公開したエロティックなコンテンツについて「私がスキャンレーションを始めたのは、特定の漫画を読みたかったからで、それらが公式の英語翻訳を得る可能性は雪だるまが地獄で生き残る程度だと知っていたからです」と述べた[6]腐女子ファンダムでは、性描写を含むタイトルの商業出版は18歳以上の読者に制限されることがあり、また書店はBL作品の取扱いを拡大している一方でシュリンクラップや成人向けラベルの必要を主張している[17]。アンドレア・ウッドは、10代のやおいファンがスキャンレーションを使って性表現を含むタイトルを探していると示唆した[18]

商業作品の質には一般に不満が持たれている[16]ローカライズ英語版もまた、スキャンレーションの支持者の間で一般に不満を集めている。商業出版では作品のタイトル、人名、言葉遊び、文化的な要素が、出版対象の読者に理解しやすいように変更されることが多い。商業出版でページを左右反転させる行為も、漫画ファンから批判を受けている。この変更の理由は、日本漫画が右から左に読んでいくのに対し、西洋ではコミックを左から右に読む習慣があるためである。しかし、この反転によって出版物が原典から変更された(ページ画像を反転しても翻訳された台詞は影響を受けないが、服や建物などの描き文字は反転するため混乱を招く)というファンの苦情が続出したことで、このような行為は大幅に減少した。

商業出版の価格と速度は、一部のファンにとって問題である。現地出版された漫画は配送料込みでも日本語版を輸入するより高くつくことがある。日本では週刊や月刊で連載されている作品でも、現地版は翻訳や編集に時間がかかるため刊行間隔がそれより長くなることが多い。

近年ではスキャンレーションに電子書籍リーダーが取り入れられ、Amazon Kindleなどのデバイスで読むことができるようになった。ほとんどのスキャンレーションは一連の画像として配布されるため、多くの電子書籍リーダーは追加のソフトウェアなしでスキャンレーションを読む機能を既に備えている。多くの漫画作品は、電子書籍リーダーと互換性のあるデジタル形式では販売されていないため、スキャンレーションをダウンロードするのが唯一の方法である。

法的措置

スキャンレーションは、自分の地域でリリースがライセンスされていない漫画を読むための唯一の方法としてファンに見なされることが多い[10]。しかし、ベルヌ条約などの国際著作権法によれば、スキャンレーションは違法である[19]

ロンドン大学のリー・ヘギョンが2009年に日本の漫画出版社と行った調査によると、これらの出版社は一般的に、スキャンレーションを「海外の現象」と考えており、スキャンレーションに対する「協調行動」は行われていないと述べている。リーは、法的措置の欠如の一部について考えられる説明として、スキャンレーショングループは必ず著作物の原本を購入することや、著作物がライセンスされた場合はスキャンレーションを中止することを徹底していることを挙げている[10]

歴史的に、著作権者は同じ言語で作品がライセンスされるまでは、スキャンレーターに配布の中止を要求しなかった。そのため、スキャンレーターは自国で商業的にリリースされていない作品をスキャンレーションするのは比較的「安全」だと感じている。TOKYOPOPの元営業担当VPのスティーブ・クレックナーは、「率直に言って、私はそれを脅威ではなく、むしろ喜ばしいと思います......正直なところ、音楽業界がダウンロードやファイル共有を適切に利用していれば、ビジネスは食い荒らされることなく、拡大していたと私は信じています」と述べた[20]。しかし、この見解は必ずしも業界内で共有されているわけではなく、一部の日本の出版社はスキャンレーショングループを法的措置で脅している。1990年代以降、出版社はさまざまなスキャンレーショングループやウェブサイトに差し止め要求英語版の書簡を送付している[21]

漫画の人気が海外市場で着実に高まっているため、著作権者はスキャンレーターが自分たちの売上を侵害していると感じ、2010年には30社を超える日本の出版社からなるデジタルコミック協議会が複数のアメリカの出版社と共同して、違法なスキャンレーション、特にスキャンレーションアグリゲーターのウェブサイトと「戦う」ための協力体制を整えた。それらは、少なくとも30のウェブサイトに対して法的措置を取ると表明した[22][23][24]。連合はある程度成功を収めている。2010年5月にGoogleが発表したアクセス数ランキングによると、インターネット全体で935位、アメリカでは300位にランクされたスキャンレーションアグリゲーターサイトのOneManga[23][25]は、出版社が表明した不快感を尊重して2010年7月に閉鎖を発表し、2010年8月までにすべての作品の公開を停止した[26][27]

一部では日本の週刊誌で出版される前の作品がスキャンレーションでリークされる例もある[28]。2014年4月の時点で、日本政府は著作権法を改正して翻訳されたスキャンをより効果的に対象とすることを検討していた[29]。スキャンレーションによる損失収益は、「中国の4大都市だけで年間5600億円に上る」と2014年に推定された[30]

2020年、韓国のウェブ漫画家ヘシン・ヨンが、ユーザーに違法にウェブ漫画をアップロードするのをやめるよう求めて、海賊版サイトを法的措置で脅した[31]。2021年、レジンコミックスは、ウェブ漫画家のYDを含む何人かの漫画家から、スキャンレーションが作家に金銭的損失と意欲の喪失をもたらすという非難を受けた後、漫画の海賊版サイトに対する法的措置を講じるために法律事務所と協力していると述べた[32]。さらに、韓国政府とインターポールは4月に3年間の共同捜査を開始し、海賊版および違法に翻訳された漫画、カートゥーン、小説の違法な流通に従事する個人を逮捕することを目指している[33]

通常、日本の漫画の翻訳版が日本国外で出版される際は、各国の倫理基準による判断をした上で日本の出版社と契約して発行されるが、何の配慮もなく日本国外に流出させた場合、深刻な事態を引き起こし、それが漫画の表現規制に繋がるおそれもあるという主張も存在し、ゆえに成年コミックなどの性描写を伴う物は危険であると告知する出版社もある[34]

評価

パトリック・マシアスはジャパンタイムズに、スキャンレーターと出版社の間には暗黙の合意があるようだと書いている。作品が英語版のライセンスを取得すると、英語圏のスキャンレーターは自主規制することが期待されている[6]。ほとんどのグループは、スキャンレーションを合法性の「グレーゾーン」に踏み入る行為だと見なしている[要出典]。現在は閉鎖されたスキャンレーション共有サイトIgnition-Oneのオーナーであるジョナサンは、スキャンレーショングループが何と言おうと、スキャンレーションは違法であることを認めた。しかし、MP3フォーマットの出現が音楽共有の時代をもたらして音楽業界に害を及ぼしたのとは対照的に、スキャンレーションは国内の出版社に漫画のライセンスを取得するよう促すはたらきがあったと彼は考えていた[6]

編集者でコラムニストのジェイク・T・フォーブス英語版は、スキャンレーショングループの活動は決して「法的なグレーゾーン」ではなく、明白な著作権侵害であると批判した。彼はさらに、スキャンレーションが業界にプラスかマイナスか、害があったかを判断する権利と資格がなく、スキャンレーションコミュニティは「業界ではない」という単純な事実を強調して、コミュニティを批判した。彼は、現在のファンダムはBitTorrentやスキャンレーションの出現により、著作権のある作品への「無秩序な」アクセスを「当然のこと」と考えていると述べている[35]

漫画業界に深く関わっているフリーランスの編集者、ジェイソン・トンプソン英語版は、漫画会社はスキャンレーションについて決して言及しないが、作品の人気やファン層の存在を測る手段としてスキャンレーションへの注目を高めていると述べた[6]デル・レイ・ブックスTOKYOPOPビズメディアなどの一部のライセンス会社は、翻訳出版権を取得する漫画を決定する際の要因として、様々なスキャンレーションへの反応を利用してきた[36]TOKYOPOPの元営業担当VPのスティーブ・クレックナーは、「聞いたこともない本でも、2,000人のファンがそれを求めているなら、まあ、出かけて手に入れなければならない」と述べた[36]。翻訳者のトーレン・スミスは、「スキャンレーションが否定的な影響を与えていることは、業界の多くの人と話をしてわかっている。ブレイク寸前だった多くの作品が、スキャンレーションのために合法的に出版されることはないだろう」と述べ、異なる見解を示している[37]

ジョアンナ・ドレイパー・カールソンは、スキャンレーションの読者の中には、お金を使いたくない人、移動手段や資金が限られている人、どのシリーズを追いかけるかを選り好みする人がいると言う。カールソンは、スキャンレーションの読者はスキャンレーションが違法であることを「気にしていない」と感じている[38]。フォーブスは、新しい漫画に追いつくコストを「天文学的」と表現し、「ファンがあらゆる漫画を無料で読めることを期待するのは合理的ではないが、日本人の同類のファンが4分の1のコストで手に入れているようなコンテンツに追いつくために、読者が年間数百ドルから数千ドルを支払うことを期待するのも合理的ではない」と述べている[35]

フォーブスは、スキャンレーションコミュニティに対し、著作権法を侵害する代わりに、オリジナルで創造的なコンテンツを提供することにエネルギーを向けるよう促した。公式翻訳の質の低さに対するファンダムの批判については、それが議論として表れるべきだと述べた。スキャンレーションが文化の溝を埋める試みだという主張については、代わりに日本のブロガーの発言を翻訳してはどうかと述べた。最後にスキャンレーションコミュニティの名声を求める側面に言及して、他人の著作物の非公式翻訳に自分の名前を載せる代わりに、ファンアートを作ってみてはどうかと述べた[35]

コミコン2010のデジタル海賊行為に関するパネルディスカッションで、テックランドの漫画・音楽評論家であるダグラス・ウォルクは、海賊行為と戦おうとする試みの中で「最も熱心な顧客基盤を疎外する」ことで音楽業界が自らを「破壊」するのを見てきたと述べ、海賊版に対抗しようとする出版者連合の行動に懸念を表明した。同じくパネリストのフォーブスも同意見で、この直接的な報復に対して出版社を批判した。フォーブスは、消費者が個々のアイテムを選び取るのではなく、閲覧できる大量のコンテンツを求めていることに気づいていないと述べた。パネリストでAbout.comの漫画編集者であるデブ・アオキは、これこそがスキャンレーションアグリゲーターサイトが消費者に提供しているものだと述べた。フォーブスは、最近までスキャンレーションは問題ではなかったが、スキャンレーションをはるかに容易にアクセスできるようにし、広告収入で運営されているアグリゲーターサイトが登場し、アーティストやスキャンレーショングループは何も得ていないと強調した[39]

出典

  1. ^ a b Sands, Ryan. “TALKING WITH THE MASTER OF MANGA: Author Frederik Schodt on translation, Tezuka, and life as a Tokyo teenager”. Electric Ant Zine 1. オリジナルの2014年8月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140808050722/http://www.youthindecline.com/electric-ant-zine-1-fred-schodt. 
  2. ^ Schodt, Frederik. “Fred's Ever-Evolving Bibliography”. Frederik Schodt. 2014年7月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
  3. ^ Doria, Shawn. “Foreign Scanlation”. Doria Shawn a.k.a. Gum. 2014年6月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
  4. ^ Doria, Shawn. “The Land Before Time”. Doria Shawn a.k.a. Gum. 2014年6月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
  5. ^ Doria, Shawn. “The First Modern Scanlation Group”. Doria Shawn a.k.a. Gum. 2014年10月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g Macias, Patrick (2006年9月6日). “Fans lift J-culture over language barrier”. The Japan Times. http://www.japantimes.co.jp/text/fa20060907a1.html#.T_Oij_VTi59 2012年7月4日閲覧。 
  7. ^ Doria, Shawn (2009年). “Early Scanlation Dramalamacon”. Doria Shawn a.k.a. Gum. 2014年10月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
  8. ^ Doria, Shawn (2009年6月). “Ookla The Mok”. Doria Shawn a.k.a. Gum. 2015年9月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年8月1日閲覧。
  9. ^ a b Deppey, Dirk (2005年7月13日). “Scanlation Nation: Amateur Manga Translators Tell”. ザ・コミックス・ジャーナル英語版 269. オリジナルの2006年5月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20060505014917/http://www.tcj.com/269/n_scan.html 2005年7月13日閲覧。. 
  10. ^ a b c d “'Scanlators' freely translating 'manga,' 'anime'”. The Japan Times Online (ロンドン(共同)). (2009年3月10日). オリジナルの2010年12月22日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20101222014614/http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/nn20090310f2.html 2010年10月16日閲覧。 
  11. ^ Vaelis (2011年7月25日). “Typesetting Introduction”. 2015年8月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月24日閲覧。
  12. ^ Aoki, Deb (2010年8月11日) From Manga Scanlations to Comics on the iPad: Online Piracy Panel at Comic-Con
  13. ^ James Rampant (2010). “The Manga Polysystem: What Fans Want, Fans Get”. In Johnson-Woods, Toni. Manga: An Anthology of Global and Cultural Perspectives. Continuum. pp. 221–232. ISBN 978-0-8264-2938-4 
  14. ^ Huang, Cheng-Wen; Archer, Arlene (2014年10月13日). “Fluidity of modes in the translation of manga: the case of Kishimoto's Naruto” (英語). Visual Communication 13 (4): 471–486. doi:10.1177/1470357214541746. 
  15. ^ Douglass, Jeremy; Huber, William; Manovich, Lev (2011). “Understanding scanlation: how to read one million fan-translated manga pages” (PDF). Image & Narrative 12 (1). オリジナルの2011年9月27日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110927154714/http://www.imageandnarrative.be/index.php/imagenarrative/article/viewFile/133/104 2012年7月5日閲覧。. 
  16. ^ a b Donovan, Hope (2010), “Gift Versus Capitalist Economies”, in Levi, Antonia; McHarry, Mark; Pagliassotti, Dru, Boys' Love Manga: Essays on the Sexual Ambiguity and Cross-Cultural Fandom of the Genre, McFarland & Company, pp. 18–19, ISBN 978-0-7864-4195-2 
  17. ^ パリアッソッティ、ドゥルー英語版(2008年11月)『西洋でボーイズラブを読む』 Archived 2012年8月1日, at the Wayback Machine. Particip@tions 第5巻、第2号 特別版
  18. ^ Wood, Andrea. (2006年春). "Straight" Women, Queer Texts: Boy-Love Manga and the Rise of a Global Counterpublic. WSQ: Women's Studies Quarterly英語版, 34 (1/2), pp. 394-414.
  19. ^ .O'Reilly, D & Kerrigan, F. Marketing the Arts: A Fresh Approach Archived 2015年11月17日, at the Wayback Machine.. Routledge, 2010. p. 221
  20. ^ Yang, by Jeff. “ASIAN POP Manga Nation / No longer an obscure cult art form, Japanese comics are becoming as American as apuru pai.” (英語). SFGATE. http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?file=/g/archive/2004/06/14/manganation.DTL 2024年3月16日閲覧。 
  21. ^ Legal Issues and C&D Letters”. Inside Scanlation. 2010年1月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月2日閲覧。
  22. ^ Reid, Calvin (2010年6月8日). “Japanese, U.S. Manga Publishers Unite To Fight Scanlations”. Publishers Weekly. オリジナルの2010年10月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20101005033023/http://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/digital/copyright/article/43437-japanese-u-s-manga-publishers-unite-to-fight-scanlations.html 2010年10月16日閲覧。 
  23. ^ a b Watson, Elizabeth (2012年3月29日). “Whose Digital Manga is it Anyway? Publishers vs. Scanlation”. Market Partners International. 2012年4月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月4日閲覧。
  24. ^ 海外に日本マンガを届けた人々番外編Ⅱ 集英社のマンガ海賊版対策”. メディア芸術カレントコンテンツ. 2024年3月30日閲覧。
  25. ^ Melrose, Kevin (2010年5月28日). “One Manga among world's 1,000 most-visited websites”. Comic Book Resources. 2012年12月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月4日閲覧。
  26. ^ Breaking: Scanlation giant One Manga is shutting down”. Comic Book Resources (2010年7月22日). 2015年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年2月21日閲覧。
  27. ^ 海外違法マンガ配信最大手OneManga 違法コンテンツ全面削除、アニメ!アニメ!、2010年7月24日発行
  28. ^ "Manga Pirated, Put Online." The Japan News Apr 20 2014. ProQuest. Web. 29 May 2015 .
  29. ^ "Publishers, Govt Take on Pirated Manga Online." The Japan News Apr 21 2014. ProQuest. Web. 29 May 2015 .
  30. ^ "Shot Fired Across Manga Pirates' Bow." The Japan NewsJul 31 2014. ProQuest. Web. 29 May 2015 .
  31. ^ BL Manhwa Artist Haesin Young Threatens Legal Action Against Manga Piracy Site Mangagogo” (英語). Anime News Network. 2021年9月20日閲覧。
  32. ^ How Does Piracy Affect Korean Webtoon Artists?” (英語). Anime News Network. 2021年9月20日閲覧。
  33. ^ Illegal 'scanlation' of web comics overseas frustrates Korean creators” (英語). koreatimes (2021年8月26日). 2022年3月2日閲覧。
  34. ^ 茜新社 - 緊急告知!漫画作品の違法アップロードにつきまして Archived 2013年10月16日, at the Wayback Machine.
  35. ^ a b c Forbes, Jake (2010年3月26日). “Guest editorial: Dear Manga, You Are Broken”. MangaBlog. 2012年6月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月4日閲覧。
  36. ^ a b Jeff Yang (2004年6月14日). “No longer an obscure cult art form, Japanese comics are becoming as American as apuru pai.”. SFGate. 2007年12月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月5日閲覧。
  37. ^ Toren Smith (2006年2月27日). “Comment on "The Bard is right again"”. LiveJournal. 2008年11月25日閲覧。
  38. ^ Carlson, Johanna Draper (2010年3月22日). “Legal Doesn't Matter: More on Scanlation Sites”. Manga Worth Reading. 2010年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月16日閲覧。
  39. ^ Aoki, Deb (2010年8月11日) From Manga Scanlations to Comics on the iPad: Online Piracy Panel at Comic-Con

関連文献

  • Donovan, Hope (2010), “Gift Versus Capitalist Economies”, in Levi, Antonia; McHarry, Mark; Pagliassotti, Dru, Boys' Love Manga: Essays on the Sexual Ambiguity and Cross-Cultural Fandom of the Genre, McFarland & Company, pp. 11–22, ISBN 978-0-7864-4195-2 
  • Inside Scanlation for history and interviews

関連項目

外部リンク


スキャンレーション

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 16:17 UTC 版)

ファン翻訳」の記事における「スキャンレーション」の解説

詳細は「スキャンレーション」を参照 スキャンレーション(英: Scanlation)は、ファン・ネットワークによるマンガ小説翻訳である。ファン漫画スキャンしてコンピューター画像変換したうえで、画像内のテキスト翻訳する完成した翻訳は、通常電子形式でのみ配布される別の方法として、翻訳されテキストのみを配布することがあるその場合、読者は元の言語のままの作品購入する必要がある

※この「スキャンレーション」の解説は、「ファン翻訳」の解説の一部です。
「スキャンレーション」を含む「ファン翻訳」の記事については、「ファン翻訳」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「スキャンレーション」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「スキャンレーション」の関連用語

スキャンレーションのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



スキャンレーションのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
IT用語辞典バイナリIT用語辞典バイナリ
Copyright © 2005-2025 Weblio 辞書 IT用語辞典バイナリさくいん。 この記事は、IT用語辞典バイナリの【スキャンレーション】の記事を利用しております。
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのスキャンレーション (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのファン翻訳 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS