ショットピーニング
金属(鉄鋼、アルミニウムなど)表面に鋳鋼、硬鋼線などの直径0.3~1.0mm程度の小粒状にしたショットを、インぺラーや高圧エアで高速投射することをショットピーニングという。その結果、冷間加工により表面が硬化するとともに圧縮残留応力が生成されるため、耐摩耗性や耐疲労性が向上する。焼入れ焼もどしスプリングなどに多用されている。最近では、ショットの硬さをより硬く(ヴィッカース硬さ600以上)したり、ショットスピードを高速にしたショットピーニングが採用され、浸炭焼入れされた歯車の高強度化に寄与している。
ショットピーニング
ショットピーニング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/23 23:37 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動ショットピーニング (Shot Peening) とは、機械工作における噴射加工の一種で[1]、無数の鋼鉄あるいは非鉄金属の小さな球体を高速で金属表面に衝突させることで、塑性変形による加工硬化、圧縮残留応力の付与を図る処理である[2]。
加工方法
ショットあるいは投射材と呼ばれる粒状物を[2]、空気圧または遠心力により投射して被加工物にぶつけることにより加工される[1]。ショットの種類は被加工物の特性や得ようとする特性に応じて選択される[2]。特にショットの比重、粒度、硬さが影響を与える[2]。鋼球のショット材の場合は、直径0.2 - 4mmの大きさのものなどが使用される[1]。投射される鋼球のスピードは、40から数百m/s程度である。
ショット衝突により被加工物表面に加工硬化、金属組織の変態が生じる[3]。また、ショット衝突により被加工物表面は凹み、押し伸ばされるが、周囲の非変形部により拘束されるため、圧縮残留応力が発生する[4]。深い硬化層は大きな鋼球を、浅く硬い硬化層は小さな鋼球を速いスピードで投射することで得る。
ほぼ同じ手法を用いる表面処理としてサンドブラスト、ショット・ブラストがあるが、こちらは主に表面研削や付着物除去を目的としており、表面硬化等を目的に特化したものではないため区別される[4]。 冷間加工の一種に該当し[2]、同じく冷間加工の一種である表面ロール加工も同様な効果を得ることができる[3]。
効果
表面の加工硬化、圧縮残留応力の付与により、疲労強度、耐摩耗性、耐応力腐食割れ性が向上する[3]。その他には、放熱性の向上、流体抵抗の減少等の効果もある[2]。ただし腐食疲労においては、高応力・低繰り返し数破壊条件では疲労強度が向上するが、低応力・高繰り返し数破壊条件ではショットピーニング層が腐食環境に敏感になるため、疲労強度向上が無くなる場合がある[5]。潤滑条件によっては未処理よりも耐摩耗性・摩擦特性の悪化、相手側への攻撃性が高くなるケースもあるため、条件にあったショットピーニングの選択が必要となる。
また、被加工物の表面に微細なディンプルを形成し、フリクションの低減となるテクスチャリング効果も研究されている [6]。
採用例
自動車部品のばね、歯車、コネクティングロッド、クランクシャフト、航空機のジェットエンジン、翼、ランディングギア、化学プラントの圧力容器に利用されている[2]。 特にばねに対しては疲労強度の改善のために広く使用されている[3]。
脚注
- ^ a b c 佐久間敬三・斉藤勝政・松尾哲夫 『機械工作法』 朝倉書店、2002年7月10日、初版、134-135頁。ISBN 4-254-23040-0。
- ^ a b c d e f g “ショットピーニングとは”. ショットピーニング技術協会. 2014年6月29日閲覧。
- ^ a b c d 『疲労設計便覧』 日本材料学会、養賢堂、2008年10月1日、第3版、54-55頁。ISBN 978-4-8425-9501-6。
- ^ a b 『機械工学辞典』 日本機械学会、丸善、2007年1月20日、第2版、358頁。ISBN 978-4-88898-083-8。
- ^ 大路清嗣・中井善一 『材料強度』 コロナ社、2010年10月20日、第1版、168頁。ISBN 978-4-339-04039-5。
- ^ 宇佐美初彦. “微粒子ピーニングによる表面改質とテクスチャリング効果”. 潤滑通信社. 2014年6月29日閲覧。
関連項目
- 浸炭
- レーザーピーニング
外部リンク
- ショットピーニング技術協会
- Shot Peening Animation from CWST - YouTube(Metal Improvement Company社によるショットピーニング説明アニメーション)
- 科学技術振興機構 Web ラーニングプラザ - ショットピーニングの方法と効果
- ショット‐ピーニングのページへのリンク