シャハリヤール王と弟シャハザマーン王との物語
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「千夜一夜物語のあらすじ」の記事における「シャハリヤール王と弟シャハザマーン王との物語」の解説
バートン版「シャーリヤル王とその弟の物語」 東洋文庫版「シャーリヤル王とその弟君の話」 昔々、サーサーン朝(ササン朝ペルシャ)にシャフリヤールという王がいた(Shahryār:物語上の架空人物)。王はインドと中国も治めていた。弟のシャハザマーンはサーサーン朝(ササン朝ペルシャ)の北部の都市サマルカンドを治めていた。あるとき兄は弟に会いたくなり、サマルカンドの弟に使いをやって、自分の都に弟を呼んだ。兄のもとに向け出発した際、兄への贈り物を忘れた事に気付いたシャハザマーンが宮殿へ取って返すと、妃が一人の奴隷と浮気の最中であった。彼は妃と奴隷を殺してから兄の国を訪れたが、傷心のためひどく塞いでいた。しかし兄の留守の間、シャハザマーンは兄の妃が二十人の男奴隷と二十人の女奴隷を相手に痴態の限りを尽くすのを目撃し、自分に起きた出来事はこれに較べればましだと思って元気を取り戻した。帰ってきたシャハリヤールは弟がすっかり明るくなったのを見て理由を尋ねた。弟が目撃した事を聞き、さらに自分の眼でそれを確かめると、シャハリヤールは衝撃のあまり弟と共に宮殿を後にして流浪の旅に出た。 ある海辺の一本の木の下で二人が休んでいる時に魔神がやってきた。二人が木に登って見ていると、魔神は頭の上の櫃から非常に美しい乙女を出し、その膝枕で眠り始めた。木の上の兄弟に気付いた乙女は二人に自分と性交するよう言い、しなければ魔神を起こして二人を殺させると脅した。怯えた二人は言うとおりにした。済むと乙女は、自分は婚礼の夜に魔神にさらわれきて今に至ること、しかしこれまで魔神が眠っている隙に570人(最新のマフディー版では98人)の男たちと性交したこと、なんとなれば女が何かをしたいと思えば何者もそれを抑える事など出来ないことを語って聞かせた。魔神でさえ自分達よりも酷い不貞に遭っていることに驚嘆した二人はそれぞれの都へ帰っていった。 宮殿に戻った兄のシャハリヤールはまず妃と件の奴隷達の首を刎ねさせた。そして大臣に毎晩一人の処女を連れて来るよう命じ、処女と寝ては翌朝になると殺すようになった。三年もすると都から若い娘は姿を消してしまったが、それでも王は大臣に処女を連れて来るよう命じた。この大臣には娘が二人いたが、恐怖と悩みにやつれた父を見て、姉娘のシャハラザードは自分を王に娶合わせるよう父に言った。王のもとに参上したシャハラザードは妹のドニアザードを呼び寄せた。王とシャハラザードの床入りが済むと、ドニアザードはかねて姉に言い含められたとおり姉に物語をねだった。古今の物語に通じているシャハラザードは国中の娘達の命を救うため、自らの命を賭けて王と妹を相手に夜通し語り始めた。千夜一夜の始まりである。
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