サマーズ・メモ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 07:44 UTC 版)
「ローレンス・サマーズ」の記事における「サマーズ・メモ」の解説
1991年に世界銀行チーフエコノミストだったとき、あくまで内部文書という意識で「グローバル経済展望」というタイトルでサマーズ・メモと呼ばれる長文のメモランダムを書いた。そのメモの大意は「世界銀行は公害産業を開発途上国にもっと移転することを推奨すべきである。」というものである。 サマーズ・メモは大別して以下の3つの論点からなる。 環境汚染によるコストは健康被害による死亡や傷害によって発生する逸失利益の額に依存する。したがって最貧国であれば低コストで済む。 環境汚染によるコストは環境汚染が増大することによって当然上昇する。したがって環境汚染が既に汚染されている国からまだ汚染されていない国に移ればコストは低下する。 所得水準が上昇すると環境に対する意識が高まるので、汚染物質の処分に一層のコストがかかる。したがって環境汚染が経済先進地域から貧困地域へ移れば、コストは低下する。 サマーズは経済学の論理からすれば、有毒廃棄物を最低賃金国に投棄することは反論の余地の無い提案であって、我々はこの真理に直面しなければならないとメモに記した。そして、このメモの内容は内外で大きな反響を招いた。 サマーズ・メモはまず環境保護論の立場から激しい批判を招いた。グリーンピースなどの環境保護団体はサマーズの辞任を求め、ブラジルのホセ・ルッツェンベルガー環境相は「経済学者の横柄な無知」であると強く批判している。さらに、新自由主義に反対する立場から批判も行われた。つまりサマーズのみならず世界銀行のエコノミストが新自由主義に基づく経済政策を世界レベルで押しつけているとする批判で、南アメリカの一部メディアでは世界銀行副総裁であるサマーズに発言をさらに続けさせて、新自由主義が持つ問題点をあぶり出すべきであるとまで主張された。
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