ケンブリッジ方程式(現金残高方程式)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/06/26 14:17 UTC 版)
「フィッシャーの交換方程式」の記事における「ケンブリッジ方程式(現金残高方程式)」の解説
ケンブリッジ方程式(あるいは現金残高方程式とも呼ばれる)は次の式で表わされる。 ここで、 M : 貨幣量 V : 貨幣の所得流通速度 P : 物価 Y : 実質GDP(取引額の内の付加価値部分の合計) k : マーシャルのk マーシャルのkは一般的に比例定数とされたり、比例定数でなくとも安定的な変数であると考えられている。そのため、貨幣量を増やしたとき、ケンブリッジ方程式によれば、物価が上昇することが導かれる。フィッシャーの交換方程式と同じ結論が導かれるのである。すなわち、ケンブリッジ方程式では、貨幣所有者に貨幣保有をする動機があることを前提とし、そのうえで貨幣所有者は名目国民所得のk%を保有すると考えている。よって、ケンブリッジ方程式は単に販売価格総額と購買価格総額が一致することを述べているのではない。そのため、ケンブリッジ方程式のMは単に流通手段としての貨幣だけでなく、価値保蔵手段としての貨幣も含めたものなのである。そのため、フィッシャー方程式が現実的には検証が不可能だったのに対し、ケンブリッジ方程式は統計的に把握できるという利点がある。 しかしながら、フィッシャーの交換方程式が「販売価格総額=購買価格総額」という自明的に正しいものであったのに対し、ケンブリッジ方程式は自明的に正しいとは必ずしも言えない。奥山忠信 (2012)によれば、「使用されない貨幣が、式の中に含まれることで、kの安定性自体が、検証すべきあらたな課題となる」。(参考:現金残高方程式(ケンブリッジ方程式)とマーシャルのk) また、ときにフィッシャー方程式を変形することで、ケンブリッジ方程式を導く試みがされる。 とする。 このとき、貨幣の所得流通速度(V)の逆数をkとして、とすると このようにケンブリッジ方程式を導くことができ、k(マーシャルのk)は貨幣の所得流通速度(V)の逆数だということができる。 しかし、実際にはT(取引量の総額)とY(実質GDP)は必ずしも一致せず、数値的にも大きく異なることが多いため、TとYを同一視したうえでのこの試みは妥当でないと述べる研究者もいる。
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