グロタンディーク群と拡大
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/01 16:28 UTC 版)
「グロタンディーク群」の記事における「グロタンディーク群と拡大」の解説
グロタンディーク群と名のついた別の構成は、次のような構成である。R をある体 k 上の有限次元代数、あるいはより一般的にアルティン環とする。グロタンディーク群 G0(R) を有限生成 R-加群の同型類の集合 { [ X ] ∣ X ∈ R − M o d } {\displaystyle \{[X]\mid X\in R\mathrm {-Mod} \}} で生成されたアーベル群とし、次の関係が成り立つとする。R-加群のすべての短完全列 0 → A → B → C → 0 {\displaystyle 0\to A\to B\to C\to 0} が関係式 [ A ] − [ B ] + [ C ] = 0 {\displaystyle [A]-[B]+[C]=0} を満たすとする。 これらの生成子と関係式により定義される可換群がグロタンディーク群 G0(R) である。 この群は普遍性を満たす。予備的な定義をする。同型類の集合からアーベル群 A への函数 χ が加法的とは、各々の完全系列 0 → A → B → C → 0 に対し、 χ ( A ) − χ ( B ) + χ ( C ) = 0 {\displaystyle \chi (A)-\chi (B)+\chi (C)=0} であることをいう。すると、任意の加法的函数 χ: R-mod → X に対し、一意に群準同型 f: G0(R) → X が存在し、χ が f を通して分解し、各々の A {\displaystyle {\mathcal {A}}} の対象を G0(R) の中の同型類を表現する元への写像となる。具体的には、このことは f はすべての有限生成 R-加群 V に対し、等式 f([V]) = χ(V) を満たし、f はそのように写像する唯一の群準同型である。 加法的函数の例は、表現論から来る指標函数である。R を有限次元 k-代数とすると、指標 χV: R → k を、すべての有限次元 R-加群 V と結びつけることができる。χV(x) は、元 x ∈ R の乗法で与えられる V 上の k-線型写像のトレースとして定義される。 適当な基底を選び、対応する区分三角形式の行列として書くと、指標は上記の意味で加法的であることが容易に分かる。普遍性により、このことが「普遍指標」 χ : G 0 ( R ) → H o m K ( R , K ) {\displaystyle \chi :G_{0}(R)\to \mathrm {Hom} _{K}(R,K)} を与え、 χ ( [ V ] ) = χ V {\displaystyle \chi ([V])=\chi _{V}} となる。 k = C とし、R を有限群 G の群環 C[G] とすると、この指標は自然な G0(C[G]) と指標環 Ch(G) の同型を与える。有限群のモジュラー表現論では、k は p 個の元を持つ有限体の代数的閉包 F ¯ p {\displaystyle {\overline {\mathbf {F} }}_{p}} でもよい。この場合、各々の k[G]-加群をブラウアー指標に対応させる定義された似たような写像も、ブラウアー指標環の上への自然な同型 G 0 ( F ¯ p [ G ] ) → B C h ( G ) {\displaystyle G_{0}({\overline {\mathbf {F} }}_{p}[G])\to \mathrm {BCh} (G)} をもたらす。このようにグロタンディーク群は表現論において現れる。 この普遍性は、G0(R) を一般化されたオイラー標数の「普遍的受け皿(universal receiver)」とする。特に、すべての R-加群の中の対象の有界鎖複体 ⋯ → 0 → 0 → A n → A n + 1 → ⋯ → A m − 1 → A m → 0 → 0 → ⋯ {\displaystyle \cdots \to 0\to 0\to A^{n}\to A^{n+1}\to \cdots \to A^{m-1}\to A^{m}\to 0\to 0\to \cdots } に対して、標準的な元 [ A ∗ ] = ∑ i ( − 1 ) i [ A i ] = ∑ i ( − 1 ) i [ H i ( A ∗ ) ] ∈ G 0 ( R ) {\displaystyle [A^{\ast }]=\sum _{i}(-1)^{i}[A^{i}]=\sum _{i}(-1)^{i}[H^{i}(A^{\ast })]\in G_{0}(R)} を得る。事実、グロタンディーク群は、元来、オイラー標数の研究のために導入された。
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