グロタンディーク宇宙と到達不能基数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 09:25 UTC 版)
「グロタンディーク宇宙」の記事における「グロタンディーク宇宙と到達不能基数」の解説
グロタンディーク宇宙の2つの簡単な例がある: 空集合 すべての遺伝的有限集合 の集合 V ω {\displaystyle V_{\omega }} 。 他の例は構成がより困難である。大まかに言うと、これはグロタンディーク宇宙が到達不能基数と同値なためである。より形式的に言えば、次の2つの公理が同値である: (U) すべての集合 x に対して、x ∈ {\displaystyle \in } U となるグロタンディーク宇宙 U が存在する。 (C) すべての基数 κ に対して、κ よりも巨大な強到達不能基数 λ が存在する。 この事実を証明するために、関数 c(U) を以下のように定義する: c ( U ) = sup x ∈ U | x | {\displaystyle \mathbf {c} (U)=\sup _{x\in U}|x|} ここで |x| は x の濃度を意味している。すると任意の宇宙 U に対して、c(U) は強到達不能となる:U の任意の元の冪集合は U の元で、U のすべての元は U の部分集合であるため、これは強極限基数である。厳密に言えば、cλ が I によって添え字付られた濃度の集まりとすれば、各 cλ の I の濃度が c(U) よりも小さい。そして、c(U) の定義によって、I と各 cλ は U の元によって置き換えられる。U の元によって添え字付られた U の元の和集合は U の元となる、ゆえに cλ の総数は U の元の濃度となる。それゆえに c(U) よりも小さい。基礎の公理を避けることによって、それ自身を含む集合はなくなり、c(U) が |U| と等しいことを示すことができる。(この公理を仮定しない場合の反例はブルバキの論文を参照。) 強到達不能基数 κ が存在するとする。集合 S は任意の列 sn ∈ {\displaystyle \in } ... ∈ {\displaystyle \in } s0 ∈ {\displaystyle \in } S に対し |sn| < κ となるとき、型 κ であると呼ぶことにしよう。(S 自身は空列に対応している。) すると、型 κ である集合全体の集合 u(κ) は濃度 κ のグロタンディーク宇宙となる。(この証明は長くなるため、詳細は参考文献のブルバキの論文を参照。) 巨大基数の公理 (C) から宇宙の公理 (U) が導かれることを示すため集合 x を選ぶ。x0 = x かつすべての n に対して xn+1 = ⋃ {\displaystyle \bigcup } xn を xn の元の和集合とする。y = ⋃ n {\displaystyle \bigcup _{n}} xn とおく。(C) によって、|y| < κ となるような強到達不能基数 κ が存在する。u(κ) を前項の宇宙とする。x は型 κ であり、x ∈ {\displaystyle \in } u(κ)。宇宙の公理 (U) から巨大基数の公理 (C) が導かれることを示すために κ を基数とする。κ は集合なのでグロタンディーク宇宙 U の元である。U の濃度は κ より大きな強到達不能基数となる。 実際、任意のグロタンディーク宇宙はある κ に対し u(κ) の形となる。これはグロタンディーク宇宙と強到達不能基数の間の別の同値性を与えるものである: グロタンディーク宇宙 U に対して、|U| は零、 ℵ 0 {\displaystyle \aleph _{0}} 、もしくは強到達不能基数のいずれかとなる。また、κ が零、 ℵ 0 {\displaystyle \aleph _{0}} 、もしくは強到達不能基数ならば、グロタンディーク宇宙 u(κ) が存在する。さらに、u(|U|) = U かつ |u(κ)| = κ となる。 強到達不能基数の存在は ZFC からは証明できないため、空集合と V ω {\displaystyle V_{\omega }} 以外の宇宙の存在はどれも ZFC から証明することができない。
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