カスプ・カタストロフ(Cusp catastrophe)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/10 14:27 UTC 版)
「カタストロフィー理論」の記事における「カスプ・カタストロフ(Cusp catastrophe)」の解説
V = x 4 + a x 2 + b x {\displaystyle V=x^{4}+ax^{2}+bx\,} カスプ幾何学は、第2のパラメータbが制御空間に追加された場合に折り目分岐に何が起こるかを探る上で非常に一般的なものである。パラメータを変えると安定性が失われた(a,b)空間に点の「曲線」(青色)が現れ、安定解が突如別の結果にジャンプすることがわかる。 しかしカスプ幾何学では分岐曲線はそれ自体でループし、代替解自体が安定性を失っている第2の分岐を与えることで元の解集合に戻る。bを繰り返し増加させその後に減少させることで系が交互に1つの解に追従し、もう1つにジャンプし、そこでの解に追従し、最初の方にジャンプするというヒステリシスループを観測することができる。 但しこれはパラメータ空間a < 0の領域においてのみ可能である。aが大きくなるとヒステリシスループは小さくなり、aが0以上になると完全に消滅し(カスプ・カタストロフ)1つの安定解しかなくなる。 bを一定にしaを変えたときに何が起こるかを考えることもできる。b = 0の対称的な場合、aが小さくなるとピッチフォーク分岐が観測され、物理系がカスプ点(0,0)を通りa < 0になると1つの安定解が突如2つの安定解と1つの不安定解に分割される(自発的対称性の破れの例)。カスプ点から離れると物理的な解に突然の変化はない。折り目分岐のカーブを通過するときに起こるのは、代わりの2番目の解が得られることだけである。 提案された有名なものとしてカスプ・カタストロフがストレスを受け、おびえたり怒ったりすることで応答する可能性のある犬の行動をモデル化するために使用できるということがある。この提案は適度なストレスでは(a > 0)、犬はどのように刺激されるかに依存しておびえから怒りという滑らかな反応の移行を示すというものであり、しかし高いストレスレベルは領域移動に対応し(a < 0)、このとき犬がおびえると「折り目」点に達するまではこれ以上いらいらしてもおびえたままであり、そこに達すると突如不連続的に怒りモードに突入する。一度「怒り」モードに入るとたとえ直接的な刺激パラメータが大きく減少しても怒ったままとなる。 単純な機械系である「ゼーマン・カタストロフ・マシン」はカスプ・カタストロフをうまく説明している。このデバイスではバネの端の位置が滑らかに変化すると、取り付けられたホイールの回転位置が突然変化することがある。 並列冗長を備えた複雑系のカタストロフィックな失敗は、局所的および外部のストレスの関係に基づいて評価できるところである。構造破壊力学のモデルはカスプ・カタストロフの挙動に類似している。このモデルは複雑系の備えの能力を予測する。 他の応用には化学系および生物系で頻繁に出会う外殻電子移動や、不動産価格のモデリングがある。 折り目分岐とカスプ幾何学はカタストロフィー理論の最も重要な実践的結果である。これらは物理学、工学、数学のモデル化において何度も出てくるパターンである。それらは強力な重力レンズ現象を生み出し、天文学者に対し遠方のクエーサーの複数の画像を生成する重力レンズ現象を介したブラックホールやダークマターを検出するための方法の1つを提供する。 残りの単純なカタストロフ幾何学は比較的特殊化されており、もの珍しい値についてのみ提示されている。
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