オルガノイドを使ったオーダーメイド医療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 14:49 UTC 版)
「オルガノイド」の記事における「オルガノイドを使ったオーダーメイド医療」の解説
Cleversグループによって確立された培養プロトコルを用いて、直腸の生検から育てた腸オルガノイドは、嚢胞性線維症をモデル化するために使用されており、オーダーメイド医療のためのオルガノイドの最初の応用につながった。嚢胞性線維症は、健康な上皮表面の粘液に必要なイオンチャネルをコードする遺伝子変異によって引き起こされる遺伝性疾患である。フォルスコリンやコレラ毒素のようなcAMP上昇アゴニストによって腸オルガノイドを刺激すると、完全にCFTRに依存してオルガノイドの急速な腫脹を誘発することをJeffrey Beekmanが報告している。嚢胞性線維症でない人からつくったオルガノイドは、フォルスコリンに応答して、オルガノイドの管腔内へ液体が輸送され膨潤するが、これは嚢胞性線維症の人からつくったオルガノイドにおいては著しく減少または欠如している。 CFTRタンパク質を修復する治療薬(CFTR調節薬)によって腫れが回復する可能性があり、CFTR調節薬を、まずはオルガノイドで試して、個々の反応を、生体で治療する前に、実験室環境で定量できることを示している。 Schwankらはまた、腸の嚢胞性線維症オルガノイドの表現型が、2013年にCRISPR-Cas9ゲノム編集によって修復され得ることを実証した。Dekkersらによる2016年のフォローアップ研究では、嚢胞性線維症の人々からつくった腸オルガノイドの、フォルスコリン誘発腫脹の定量的な差異が、CFTR機能の既知の診断マーカーと関連していることを明らかにし、さらに、特定のCFTR変異を有する腸オルガノイドにおけるCFTR調節薬への応答が、これらの治療の公表された臨床試験データと相関することを実証した。これにより、治療を受ける前のCFTR変異の患者由来のオルガノイドを用い、CFTR調節薬が有効かを調べるという、前臨床試験が行われた。これらの研究は、オルガノイドが個々の治療またはオーダーメイド医療のために使用できることを初めて示した。
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