エントロピーと生物学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/24 16:41 UTC 版)
「レオ・シラード」の記事における「エントロピーと生物学」の解説
シラードの科学的研究対象は熱統計力学に始まり分子生物学に終わった。1922年の博士論文と、その半年後に書かれた論文はエントロピー増大則(熱力学第二法則)に関するものであり、特に後者はこの法則と矛盾するように見えるために長らく熱力学を悩ませていた難題であるマクスウェルの悪魔を扱っていた。この論文でシラードはシラードのエンジンと呼ばれる理論モデルを用いて、熱力学の概念であったエントロピーが観測によって得る情報の概念と直接に繋がっていることを示し、観測行為が一定の平均エントロピー生成と本質的に結びついているとしてエントロピー増大則は守られると主張した。現在ではこのシラードの解釈は修正を受けているものの、エントロピーと情報との関係を示すこの先駆的な指摘は、1940年代後半にシャノンが情報理論にエントロピーの概念をより明確に導入し、確率論の上で定義された情報が研究対象となるまで長らく忘れられていたものであった。 シラードは、このマクスウェルの悪魔の議論に、より一般に生命それ自体への理解へと繋がるものを見ていた。それが得られるような物理学と生物学を繋ぐ一般的理論では、統計力学がいう平衡状態が混沌ではなく、むしろ力学を越えて高次の秩序へ向かうものを意味するものとなるだろうと考えた。シラードの論文集に序文を寄せた分子生物学者ジャック・モノーは、シラードが「心の中ではいつでも生物学者であった」とし、シラードの生物学への転向をこうした「マクスウェルの悪魔の熱力学についての初期の研究への回帰」であったのではないかとしている。
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