エキスパンダーブリードサイクル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/23 05:26 UTC 版)
「エキスパンダーサイクル」の記事における「エキスパンダーブリードサイクル」の解説
クーラントブリードサイクルとも呼ばれる。2016年現在、日本だけが実用化している高信頼性エンジンサイクルで、液体酸素/液体水素上段エンジンであるLE-5A/LE-5Bで採用されている。エキスパンダーブリードサイクルでは、燃焼圧を上げることが難しいエキスパンダーサイクルの欠点を軽減するため、ノズルと燃焼室で熱交換した推進剤のうちターボポンプの駆動に用いた分を燃焼室に送らず排気する。これによりタービン背圧が燃焼室圧力より遙かに低い圧力となるためターボポンプの効率が向上する。また、ターボポンプ効率と燃焼室圧力のトレードオフを考慮する必要がなくなり高圧燃焼させやすくなることから、フルエキスパンダーサイクルと比較して高効率にできる。三菱重工と Pratt & Whitney Rocketdyne が共同開発していたMB-XXエンジンでは燃焼圧をLE-5Bの3.6MPaから14MPaに上げることで、エンジンの推進能力の評価としては、比推力467秒というフルエキスパンダーサイクルをも凌ぐ性能に目処をつけている。 ただしタービン駆動用の燃料が推力に寄与しないため、そのぶんも推進剤の消耗として算入した場合の比推力はクローズサイクルの二段燃焼サイクルやフルエキスパンダーサイクルに劣る。一方で二段燃焼サイクルと比べて構造が簡素になること、ターボポンプ作用気体も低温となることから低コスト化が図れ、エンジン始動時の制御性と信頼性は格段に向上する。液酸/液水エンジンの場合、ガス発生器サイクルと同等の効率(比推力)が実現でき、始動性、再着火回数、信頼性も向上する。最大推力も2000kN程度まで可能と見積もられている。
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