ウサギとヒトの眼の差異
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 06:05 UTC 版)
「ドレイズ試験」の記事における「ウサギとヒトの眼の差異」の解説
スティーブン・コーフマン(Stephen R. Kaufman)は、眼科医としての観点から、ドレイズ試験は科学的根拠に乏しく、臨床的状況に適用できない手法であると主張し、「私はチーフレジデントとして、ベルヴュー病院の眼外傷センターに3年間の勤務経験を持っており、救急治療室で数多くの有害物質による眼損傷の治療を行った。しかし私自身は、患者の治療法に関してドレイズ試験のデータを使用したことは一度もなく…(中略)…自分以外の眼科医がドレイズ試験のデータを有効利用している例を1つも知らない。」と述べている。 コーフマンは、ドレイズ試験にウサギが用いられるのは、ウサギは大きな眼を持っており、扱いやすく、価格が安いためであると主張しているほか、以下のようなヒトとウサギの眼に関する重大な差異についての指摘を行っている。 ウサギの眼の上皮層(表面の層)は、ヒトの眼と比較して、親水性の溶質に対して10倍の透過性を示す。 ウサギの眼のボウマン膜(上皮層の次の層)は、ヒトの眼のボウマン膜と比較して6倍も薄い。 ウサギの眼の痛みに耐え得る限界は、ヒトの眼のそれよりもずっと高い。そのため、涙により刺激物質が眼から洗い流されにくい。 ウサギの涙腺の機能は、ヒトの涙腺の機能と比較して効率が悪い。 ヒトと異なり、ウサギの眼には瞬膜(nictitating membrane)があり、この瞬膜による異物の除去効果が不明確である。 ヒトの眼では、いくつかの毒性物質の曝露ではそれに応じて角膜上皮に液胞を発現させるが、ウサギの目では生じない。 ウサギの角膜の厚さの平均は0.37 mmであるが、ヒトの角膜の厚さ平均は0.51 mmである。 ウサギの目の表面積において角膜は25%を占めるが、ヒトの眼では表面積のわずか7%に過ぎない。 ベイラー医科大学の眼科学教授であるカーク・ウィルヘルムス(Kirk Wilhelmus)は、2001年にドレイズ眼粘膜刺激性試験に関する包括的なレビューを行った。また、ウサギとヒトの眼の解剖学的および生化学的差異から、ウサギの眼を利用した化合物の試験では、化合物がヒトの眼に与える影響は予測できない可能性が示唆されたことを報告した。しかしその一方で、ウィルヘルムスは"一般に、ウサギの眼は人間の眼と比較して刺激性の物質にウィルヘルムスは、"ドレイズ眼粘膜刺激性試験は…(中略)…ヒトに対する被害を防いだことは確かである"が、今後ドレイズ試験による予測法はin vitro 試験や、眼表面の刺激性を評価するための新たな臨床試験の代替手法に取って替えられるだろう"と結論している 。
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