アメリカ合衆国特有の要因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/10 10:02 UTC 版)
「フォーラム・ショッピング」の記事における「アメリカ合衆国特有の要因」の解説
フォーラム・ショッピングについて特に問題とされていることとして、国際的な私法上の紛争について、他国の裁判所ではなくアメリカ合衆国の裁判所に民事訴訟を提起する場合が多いことや、州裁判所と連邦裁判所の管轄の重複の問題があげられる。 国際的な私法上の紛争については、原告の居住地とは無関係に、アメリカ合衆国の裁判所に訴訟を提起することを望む場合がある。この原因としては、前述した民事訴訟における陪審制の採用、証拠開示制度の整備などのほか、損害賠償の算定額が高いということが指摘されているが、それに加え、ロング・アーム法(long arm statute)と呼ばれる国際(州際)裁判管轄に関する州の立法も要因の一つとされる。 ロング・アーム法とは、被告となる者が当該州に所在していない場合であっても、被告がその州に最小限度の関連(minimum contact)がある場合には、当該州の裁判所に裁判管轄が認められるとするアメリカの各州における立法の通称であり、1945年のアメリカ合衆国最高裁判所判決が、当該州に裁判管轄があるか否かはその州の裁判所が裁判をしてもフェアプレーと実質的な正義の原則に反しないと言えるだけの最小限度の関連が州と被告との間に認められるか否かによるという規準を採用したことに基づく立法である。通称の由来は、州が腕を伸ばして州に所在しない被告を管轄に取り込むという比喩による。 ロング・アーム法の問題として、最小限度の関連という要件が緩やかに適用されている運用が指摘されている。具体的には、当該州とは関わりがない外国企業を被告とする場合であっても、何らかの理由により州と関連があるとの理由により当該州の裁判所の管轄を認め、さらに前述したアメリカを法廷地にすることによる原告のメリットとも相まって、アメリカに所在する裁判所に民事訴訟を提起するフォーラム・ショッピングを生む傾向がある。 ロング・アーム法が前提とする法理はこのような弊害を生むため、当該州に管轄がある場合でも、当事者のフェアプレーや正義の実現のため、同一事件について裁判管轄を有する他の国・州の裁判所で審理を行う方が望ましいと判断した場合には、裁量により原告の訴えを却下したり、一定の条件をもとに訴訟を一旦中止する扱いを認めるという、フォーラム・ノン・コンヴィニエンス(forum non conveniens)の理論が発達し、ロング・アーム法を修正する機能を有している。
※この「アメリカ合衆国特有の要因」の解説は、「フォーラム・ショッピング」の解説の一部です。
「アメリカ合衆国特有の要因」を含む「フォーラム・ショッピング」の記事については、「フォーラム・ショッピング」の概要を参照ください。
- アメリカ合衆国特有の要因のページへのリンク