アメリカの出廷拒否と欠席裁判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/26 21:16 UTC 版)
「ニカラグア事件」の記事における「アメリカの出廷拒否と欠席裁判」の解説
1985年1月18日、アメリカは1984年11月26日の先決的判決を不服とし以下のような声明を発した。 アメリカ合衆国は、裁判所の判決が法や事実に照らし疑いの余地もなく明白に誤りであると結論せざるをえない。陳述書や口頭陳述ですでに述べたように、裁判所に本件を審理する管轄権はなく、また1984年4月9日のニカラグアの請求は受理不能であるとの見解をアメリカ合衆国は堅持する。したがってアメリカ合衆国は今後本件に関するいかなる手続きにも参加する意思はなく、ニカラグアの訴えに関する裁判所のいかなる決定に対してもアメリカ合衆国は同国の権利を留保する。 アメリカはこの声明以降本件の審理には参加しなかった。ICJ規程第53条により、ICJは管轄権の存在と原告国の請求の根拠とを確認すれば、当事者の一方が出廷しない場合であっても裁判を行うことができる。ICJが設立されて以降当事国が出廷を拒否したまま裁判が行われたのは、1974年のアイスランド漁業管轄権事件判決におけるアイスランド、同年の核実験事件判決におけるフランス、1980年の在イランアメリカ大使館員人質事件判決におけるイランに続き、本件で4例目であった。しかし本件におけるアメリカの態度は、先決的判決の審理に参加しておきながら自国に不利な判決が下された段階で審理不参加を決定したという点で、前述の3カ国の態度とは性質が異なる。その後アメリカは自国の強制管轄受諾宣言を終了させる旨を通告し、この宣言終了は1986年4月7日に発効した。さらにアメリカはニカラグアが本件を審理する管轄権がICJにあることの根拠として援用した1956年友好通商航海条約を破棄し、この破棄は1986年5月1日に発効した。しかしこれらのアメリカの行動は、すでに成立している管轄権に影響を及ぼすものではないとし、ICJは審理を継続した。
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