アプロディーテーとの結婚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/09 15:15 UTC 版)
「ヘーパイストス」の記事における「アプロディーテーとの結婚」の解説
ホメーロスの『オデュッセイア』ではヘーパイストスはアプロディーテーと結婚している。ゼウス自らヘーパイストスにアプロディーテーを妻として与えたという。しかし、彼女はヘーパイストスの醜さを嫌っていた。そこに軍神アレースが現れた。アレースはゼウスとヘーラーの子であるものの、争いの神であり残虐な性格である事から、神々や人々からの評判はすこぶる悪かったが、オリュンポスの男神の中でも1、2を争う美男子だった。やがて醜い夫との生活に疲れていたアプロディーテーは、美形のアレースと恋愛関係となる。当のヘーパイストスは、妻の浮気にまったく気付かず、夫婦仲の悪さはアプロディーテーの機嫌が悪いだけだと妻を信じていた。しかしヘーリオスから事実を知らされたヘーパイストスは落胆し、同時にアプロディーテーへの激しい憎悪が芽生えた。 ある日、ヘーパイストスは「仕事場に行く。しばらく家には戻れない」と言い家を出て行く。これ幸いと浮気に浸るアレースとアプロディーテーだが、二人で寝床に入ったとたんに見えない網で捕えられ、裸で抱き合ったまま動けなくなってしまった。この網は、妻への復讐の為にヘーパイストスが作った特製の網で、彼以外解く事が出来ない物だったのである。何とか解こうとする二人であったが、動けば動くほど体に食い込み、完全に身動きが取れなくなってしまった。 妻とアレースの密通現場を押さえたヘーパイストスであったが、妻が自分には見せなかった媚態の艶やかなる美しさをアレースに晒したことに激怒、更なる辱めを与えてやろうと考えていた。すると、そこへ伝令の神であるヘルメースが偶然にも通りかかる。ヘルメースがアプロディーテーに片思いしていることを知っていたヘーパイストスは、密通現場を彼に見せれば興味を持つと考え、ヘルメースを招き入れた。彼の目論見通り、ヘルメースは興味を示し釘付けになる。すると、ヘーパイストスは「他の十二神を呼んで来て頂きたい。特に結婚の仲人をして頂いた母上を呼んで来て欲しい」とヘルメースに頼んだ。伝令の神であるヘルメースは、瞬く間にオリンポス中を駆け巡って面白いものが見られると触れ回り、十二神をヘーパイストスの神殿の前に連れて来た。 そして、集まった神々を前にヘーパイストスは「これから面白い見世物をご覧に入れましょう」と言って、アプロディーテーとアレースの密通現場を晒したのである。密通現場を見せられた神々は、皆困った顔をしてしまう。と言うのもアプロディーテーとアレースの二人の様が余りにも面白く、大声で笑いたかったのだが、神である自分たちが品もなく馬鹿笑い出来なかったことと、結婚を取り仕切ったヘーラーの手前、笑うことが出来なかった為である。ところが、アポローンが「ヘルメース殿、貴殿は以前からアプロディーテーと臥所を供にしたいと申していたそうではないか。丁度良い機会だ、アレースと代わって貰ったらどうだ?」と問うたのに対し、ヘルメースが「入りたいのは山々なれど、私の一物はアレース殿の物と比べ、頑丈でも逞しくもございませぬ」と返したことで、我慢していた神々は思わず吹き出してしまった。アレースは恥ずかしさのあまり、解放された途端逃げるように自領へ去ったが、アプロディーテーはただその場で微笑んでいた。 神々の笑い声が響く中、この結婚を取り仕切ったヘーラーだけは笑えずにいた。そんなヘーラーに対しヘーパイストスは『母上、貴方様より拝領いたしました花嫁は、他の神々と臥所を共にするふしだらな女にございます。されば、ここにのしを着けてお返し申し上げますので、どうぞお引取りください』と言った。再び神々の前で恥を掻かされたヘーラーはアプロディーテーを連れ、神々の失笑が木霊す中、退散していった。 その後、ポセイドーンの仲介の元、ヘーパイストスはアプロディーテーと離婚し、アレースから賠償を受け取った。そして、アレースはトラーキア、アプロディーテーはクレータ島での謹慎を命じられた。後にアプロディーテーはポセイドーンにこの仲介の礼を与えている。
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