アイヌ民族服の形状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/20 06:27 UTC 版)
男女ともに前を打ち合わせる筒袖長衣(男性:膝下から脛丈、女性:脛から踝丈)で、アットゥㇱクッ(アットゥシ製の細帯)で衣服の乱れを抑える形式など、屋外作業用和服との類似点を持つ。しかし、17 - 18世紀頃のアイヌ関連文書では男性もアットゥㇱクッではなく女性用アミㇷ゚に見られる共布の直付け紐で打ち合わせを固定し、年齢・性別に限らず左前に着用(現在は和服の作法に倣った右前が原則)した絵姿が数多く記録されている。 和服と違って衽を持たない構造のために裾がはだけやすく、女性は股を晒さないようにモウㇽ(襦袢)とマンタリ(前垂れ)を常着した一方、男性はテパ(ふんどし)のみを着けた地肌のまま袖を通し、必要に応じてユㇰウㇽ(毛皮製の上衣)、テクンペ(手甲)、ホㇱ(脚絆)などを追加した。 樹皮を加工して抽出した繊維を撚り合わせて作られる樹皮布に分類される都合上、綿布や絹布に比べて織り目はやや粗くなる反面、頑丈な割に水に浮くほど軽量で耐水性に優れる上に粗い織り目が通気性の向上に繋がり、日本の漁師や商用船(特に北前船)従事者の間で珍重された。その証拠として、実際に使われていた和服仕立ての袂付き広袖式アットゥㇱアミㇷ゚が数点現存している。 衣装には友禅や紅型のような華美な彩色は無いが、晴れ着には「アイヌ文様」として知られる模様がアップリケされていることが多い。この文様は魔よけとして描線の始点と終点が必ず角ばった形状をしている。 イラクサの繊維から作られる草皮衣はテタㇻペなどと呼ばれ、アットゥㇱよりきめ細かく光沢があったが、10日で一反は作れるアットゥㇱ以上の日数を要したという。 また、その上から毛皮やアザラシの皮、変わったところでは鮭やイトウの皮などで作った羽織状の上着を着ることもある。
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