おとり捜査に関する判例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 01:58 UTC 版)
「おとり捜査」の記事における「おとり捜査に関する判例」の解説
最高裁判所昭和28年3月5日決定(刑集7巻3号482頁)は、麻薬取締法53条(当時の条文)の有無に関わらず、他人の誘惑によって犯罪を実行した者がいた場合、その誘惑をした者について教唆犯が成立しうることを前提に、その誘惑者が捜査機関であるということだけから、誘惑されて犯罪を実行した者の行為が、犯罪不成立とされることも、刑事手続上の違法があるということもできないとして、問題とされたおとり捜査の適法性を認めた。 最高裁昭和28年3月5日決定の事例は、既に犯罪(大麻樹脂の譲渡)を実行する決意をしていた被告人に対して、その犯罪を実行する機会を捜査機関側が与え、これに応じて犯罪を実行した被告人を検挙したという、いわゆる機会提供型であった。 続く最高裁昭和29年11月5日判決(刑集8巻11号1715頁)は、捜査機関が協力者を通じて、初め生阿片の取引斡旋を申し入れ、後に斡旋者の取引に対する熱意が揺らぐと、協力者を通じ、他の麻薬でもよいなどと斡旋者に申し入れさせ、被告人が麻薬を斡旋者に交付した際にこれを検挙したという事案において、最高裁判所昭和28年3月5日決定を引用しつつ、おとり捜査によって犯意を誘発されたことをもって犯罪の成立は否定されないとし、被告人を無罪とした原審を破棄し、差し戻した。これを犯意誘発型の事案における判例であると解する見解もある。 その後、下級審裁判例においては、二分説に依拠すると見られるものが続き、最高裁平成8年10月18日決定においては、おとり捜査は特別の必要がない限り許されないとする、大野正男・尾崎行信両裁判官の反対意見も付された(法廷意見は上告棄却)。 そして最高裁平成16年7月12日決定(刑集58巻5号333頁)は、二分説に拠れば機会提供型に分類される事案において、おとり捜査を一般的に定義した上で、これが任意捜査として許容され得るものであるとして、当該おとり捜査は適法であり、それによって得られた証拠の証拠能力も肯定した。
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