『李黄』
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残存する『白蛇伝』に関係する最古の物語と考えられているものは、中唐の谷神子(こくしんし、鄭還古)撰の『李黄』(唐代伝奇集『博異志』、後に『太平広記』に収録)である。日本語訳は今村与志雄 訳がある。 ―『李黄』あらすじ―唐元和2年(807年)、塩鉄使である李遜の甥の李黄が長安の東市で牛車に乗った白衣の美女に出会った。侍婢に訊ねると夫の喪が明けたばかりの未亡人で、手持ちの金がないというので、銭と帛を立替えたところ屋敷に招かれる。白衣の娘の叔母と名乗る老婆が、実は貧しい暮らしで三万銭の借財がある。よければ側仕えさせたいと申し出る。李黄は下僕に三万銭を取りに行かせ、誘われるままに三日間泊った。四日目になると老婆が長泊して李黄が叔父に咎めらないよう取り敢えず帰るよう勧める。下僕は李黄が生臭くなっていることに気づいたが、言われるままに帰宅した。すると何日も何をしていたのか家人に尋ねられたが、体の具合が悪かったのでそのまま寝床に入った。やがて取り留めないことを口走るようになり、婚約者に対し自分はもうだめだ、と言った。夜具をおそるおそるめくると、体がとけて水となり頭だけが残っていた。家人が下僕を問いただし、女の家にいくと、そこは廃園だった。一本の皁莢(さいかち)の樹があり、樹の上に一万五千、樹の下に一万五千の銭があった。近所の者によると、樹の下によく大きな白蛇がとぐろを巻いていた以外はなにもなかったとのことであった。 続けて復一説として別の話も掲載されており大筋は同じだが多少の違いがある。主人公の名が李琯であり、最後は体が水になるのではなく頭が裂けて死ぬことになっている。家人が女の家のあった場所にいくと枯れた槐(えんじゅ)の樹があり、そこには大蛇がとぐろをまいた跡があった。樹の根元を掘り起こすと、小さい白蛇が数匹いたので、一匹残らず殺して帰ったとのこと。
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