『性と性格』
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「オットー・ヴァイニンガー」の記事における「『性と性格』」の解説
主著『性と性格』において、彼は全人類が男性的形質と女性的形質を併せ持っていると主張し、この自説を科学的に立証しようと試みた。彼によると、男性的形質とは能動的・生産的・意識的・倫理的・論理的な性質であり、女性的形質とは受動的・非生産的・無意識的・非倫理的・非論理的な性質である。彼によると、女性解放とはレズビアンのような「男性的女性」のためのものであり、女性の人生は行動(たとえば娼婦)と生産(たとえば母)の両面において、もっぱら性機能のために費やされる。女性は本質的に「仲人」である。一方、男性(あるいは人間の中の男性的側面)の役割とは天才になるために生き延びることであり、彼が自身の中に見出すところの絶対者(すなわち神)に対する抽象的な愛のために性を超越することであるという。この本の相当部分は天才論である。 別の章においてヴァイニンガーは(彼自身1902年にキリスト教へ改宗したユダヤ人だが)、原初ユダヤ人を女性的な存在、本来非宗教的な存在、真に個人主義的な魂を持たぬ存在、善悪の感覚を持たぬ存在と分析する。彼によれば、キリスト教とは「最も高き信仰の最も高き表現」だが、ユダヤ教は「卑劣さの極致」である。ヴァイニンガーは現代という時代の腐敗を弾劾し、その腐敗の本質を女性的なもの、ユダヤ的なものと規定する。 ヴァイニンガーはベートーヴェンの終焉の館で拳銃自殺したが、ベートーヴェンこそはヴァイニンガーがあらゆる天才の中で最も偉大と目していた人物であった。この一事によりヴァイニンガーは時代の寵児となり、多数の模倣自殺者を生み、著書の評価を増した。こうして『性と性格』はストリンドベリから「あらゆる問題の中で最も難しい問題を解決した書物」という熱烈な讃辞を寄せられた。最も難しい問題とは、つまり女性問題のことである。
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