『ルイ13世の国王就任』
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「マリー・ド・メディシスの生涯」の記事における「『ルイ13世の国王就任』」の解説
『ルイ13世の国王就任』は、母から息子への政権移譲を抽象化、寓意化して描いた作品である。息子のルイ13世が幼少だったため、摂政としてフランスの政権を司っていたマリーが、新たな王ルイ13世へと船の舵を渡している。この船はフランス国土の象徴であり、舵を操るルイ13世がこれからのフランスを導いていくことを意味している。船の漕ぎ手たちが何の寓意なのかは、船体側面に掛けられたそれぞれの象徴物が刻まれた盾から特定できる。画面手前から二人目の漕ぎ手の盾には、4体のスフィンクス、巻きつく蛇、そして下を向く目とともに、輝く祭壇が刻まれている。これらは「敬虔」あるいは「信仰」の象徴で、マリーがルイ13世に対する国内の宗教を一つにまとめあげることへの祈念を意味する。ルーベンスが描いたパレード船とも呼ばれるこの船は、古代ローマの詩人ホラティウスからの影響を受けている。ホラティウスが詠ったパレード船は、船首がドラゴン、船尾がイルカの彫刻で飾られた船だった。ルイ13世は、フランス国土を象徴するこの船を操舵し続けてきた母マリーを見つめている。激しい黒雲のなかには、古代ローマのラッパ (en:Buccina) と、おそらくはトランペットを持つ2柱のファマがそれぞれ描かれている。 4名の漕ぎ手は、擬人化された「力」、「信仰」、「正義」と調和の神「コンコルディア」である。帆を調整しているのは「賢明」の寓意プルーデンスか、「節制」の寓意テンペランスだとされている。画面中央のマスト前に立っているのはフランス王国の化身である。フランスは右手で屹立した炎を掲げ、左手には王国あるいは統治のオーブを持っている。画面の一番手前で櫂を伸ばしている女性像は、盾に刻まれたライオンと円柱から「力」の擬人化だと判断できる。「力」の髪色はマリーと、ルイ13世の髪色は「信仰」と似ている。マリーの傍らに「力」の化身が描かれた作品からは王太后が持つ権力が連想される。しかしながらマリーの外貌は受け身であり、以降ルイ13世がフランスの王権を握ることを、これ以上ない優雅さで認めているように表現されている。
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