「自然の権利」概念の特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/30 16:32 UTC 版)
「自然の権利」の記事における「「自然の権利」概念の特徴」の解説
自然の権利論者は、開発などをめぐる利害対立について、その利害を調整する機能を持つ場は、終局的には裁判所であるはずだという前提に立つ。そのうえで、古典的な司法権概念に基づく従来の司法制度では、法的利害関係が無ければ原告となることを認めないという基準(原告適格)が設定されてきたことについて、裁判が利害調整の場として利用しにくくなるとして批判する。利害を調整する機能を持つ場はなくなってしまい、現実的なおとしどころを探すことなどが極めて困難になる。特に、開発行為に際して行政的な手続き不備などがあった場合であっても、しばしばそれを指摘する場がないといった問題を指摘している。 自然の権利論者によれば、自然の権利という考え方を採用し、裁判所を利害調整のための場として広く機能させることは、開発計画などの不可逆的被害をもたらす可能性が高い事例については、大きなメリットがある。また、感情的な対立を廃し、理性的な議論を積み重ねることによって解決策を模索する場が存在するという信頼は、近代国家にとって必要不可欠な要素であり、自然保護をめぐってその理念を実現するためのひとつの試みでもあるとする。 「人間ではない者」を原告にすることがある点について、動物などが法廷に登場して人間の言葉で裁判に参加するといったイメージを持たれがちであるせいか、「ファンタジーではないか」といった批判がしばしばなされる。この批判に対しては、自然の権利論者は、すでに「法人」といった「人間ではない者」は、法の世界では人間と並び常連のひとりとなっている。法人と同様の構成をすることで(cf.→法人本質論)、法が「守るべき(と考えるひとがいる)自然環境」について原告適格性を認め、その代弁者が法廷に登場することを認めるという考え方は、法技術的な提案であると反論している。そして、「自然の権利」という考え方は、ファンタジーを目指すものではないと主張している。
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