「ミツバチヘギイタダニ」とイスラエル急性麻痺ウイルス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/18 09:26 UTC 版)
「蜂群崩壊症候群」の記事における「「ミツバチヘギイタダニ」とイスラエル急性麻痺ウイルス」の解説
2007年発表の論文によると、「ミツバチヘギイタダニ」がミツバチの死亡原因において最も可能性があるものとして君臨しているという。そのダニは、CCDに関連があるとされてきた奇形羽ウイルスやミツバチ急性麻痺ウイルスなどのウイルスを運ぶと言われることがあるためである。ミツバチヘギイタダニによる病気は、ミツバチの免疫系を弱める傾向もある。そのため、このダニはCCDの原因である可能性が高いと考えられているが、死亡したコロニーの全てでこれらのダニが見つかっているわけではない。 2007年9月には、問題が発生しているコロニーと発生していないコロニーについてRNA配列の大規模な統計結果が報告された。コロニーの全生物種由来のRNAを分析し、RNA配列データと比較して病原体の存在を検出しようというものである。その研究には、ヒトゲノム配列用に開発された454ライフサイエンシズ社の技術が使用された。全てのコロニーは様々な病原体に感染していることが分かったが、イスラエル急性麻痺ウイルス (IAPV)はCCDと顕著な関連を示した。すなわち、CCDの症状が認められた30のコロニーのうち25のコロニーにウイルスが見つかり、CCDに感染していないコロニーでは、21コロニーのうち1つにしかウイルスが見つからなかった。科学者は、以上の関連が因果関係を証拠立てるものではないと指摘しており、他の要素が病気に関係している可能性もあるし、IAPVの存在はコロニーが病気であることに対する指標であるにすぎず、真の原因ではない可能性もある。因果関係を証明するために、ウイルスをコロニーにわざと感染させる諸実験が計画されている。 IAPVは2004年に発見され、ジシストロウイルス科に属している。これはミツバチを麻痺させ、蜂の巣の外部で死に至らしめる。このウイルスはミツバチヘギイタダニにより運搬されることがある。しかし、これらのダニはCCDに感染したコロニーの半数からしか見つかっていない 。 このウイルスはオーストラリアのミツバチの標本でも見つかっている。オーストラリアのミツバチは2004年より米国へ輸入されており、最近まで、この輸入によってウイルスが北米に到達した可能性があると考えられていた。しかし最近になって、2002年にはすでにこのウイルスはアメリカのミツバチに存在していたことが明らかになった。 2009年に報告された研究は、CCDに影響されたミツバチにはタンパク質の合成に不具合があることを示す証拠が共通して見られることを見いだしている。これはIAPVと共通するパターンである。ジシストロウイルスはIAPVと同様に、タンパク質の合成を担っているリボソームの機能低下を引き起こし、こうして生じたリボソームの機能低下がミツバチを弱らせ、通常時には致死的ではなかったはずの種々の要因からの影響を受けやすくするのではないかと推測されている。
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