「フモレスケ」交響曲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/29 18:21 UTC 版)
「交響曲第4番 (マーラー)」の記事における「「フモレスケ」交響曲」の解説
交響曲第4番の初期構想を伝えるマーラーのメモが残されており、次のような内容である。各項末尾のカッコ書きは、現在の形(推定を含む)。 交響曲第4番(フモレスケ) 「永遠の現在としての世界」 ト長調 (→第4番の第1楽章) 「この世の生活」 変ホ長調 (→『少年の魔法の角笛』による歌曲) 「カリタス」 ロ長調(アダージョ) (→第4番の第3楽章) 「朝の鐘」 ヘ長調 (→第3番の第5楽章) 「苦悩のない世界」 ニ長調(スケルツォ) (→第5番の第3楽章?) 「天上の生活」 ト長調 (→第4番の第4楽章、『少年の魔法の角笛』による歌曲) このメモがいつごろのものなのかはわかっていないが、第3交響曲の構想と一部重なっていることからして、1896年の「第3番」の完成前であったと推定される。この構想では、『少年の魔法の角笛』からの2曲の歌曲である「この世の生活」と「天上の生活」が対置的で、「フモレスケ」という標題は、1893年に初演した「角笛」歌曲をまとめてそのように呼んだものである。このように、初期構想では多分に標題的かつ歌曲的であるが、最終的に第4番が現在知られる古典的な構成で完成されたことは、その間、第3交響曲の完成を経て、マーラーのウィーン時代が始まっていることが、背景として考えられる。 完成された第4番では、第4楽章の主要主題が第1楽章や第3楽章に顔を出し、全曲の連関を作っていると同時に、「闘争(葛藤)を経て勝利へ」という、ベートーヴェン以来の交響曲の伝統的図式が崩されている。さらに、鈴と笛による開始やスケルツォ楽章でのパロディ要素なども古典的な形式との齟齬を来していて、これらについてのマーラー自身の意図はどうであったかは明確でないにせよ、異化効果の発揮や「音楽についての音楽」といった多義性を獲得しているといえる。このような多義的な書法は、次作交響曲第5番で純器楽編成をとることによって、いっそう推し進められていくことになる。
※この「「フモレスケ」交響曲」の解説は、「交響曲第4番 (マーラー)」の解説の一部です。
「「フモレスケ」交響曲」を含む「交響曲第4番 (マーラー)」の記事については、「交響曲第4番 (マーラー)」の概要を参照ください。
- 「フモレスケ」交響曲のページへのリンク