感覚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/13 14:10 UTC 版)
定義と歴史
アリストテレスは霊魂論でヒトの感覚を初めて分類し、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の5つがあるとした。これが広く知られる五感であるが、現在は実際にはそれ以上の数の感覚があることがわかっている。
ただし、現代の生理学では感知される情報の内容、感知機序、伝達様式などによって多様に分類されており、その分類自体も確定してはいない。かゆみをはじめとする未だに仕組みが詳細には解明されていない感覚も多く残されている。
いわゆる第六感は、五感にあてはまらない超越した感覚という意味だが、これは勘や直観といった心理的な動きを感覚で比喩したものであり、通常は感覚に含めない。
刺激の受容と感覚
感覚は、動物が外部からの刺激を受けることで生じるものである。この時、刺激を受け取る器官を受容器といい、これは往々にして感覚器官とも言われる。動物は様々な感覚器官を持ち、それぞれがある範囲の種類の、ある範囲の強さの刺激だけを受け取ることができる。たとえば、ヒトの眼は、短波長側が360 nm - 400 nm、長波長側が760 nm - 830 nmの電磁波(可視光線)だけを受け取ることができる。受容器で受け取ることが可能な最適な刺激を適刺激(adequate stimulus)、又は自然刺激(natural stimulus)といい、さらに受け取れる強さの幅を閾値という[1]。それぞれの受容器はこのように限られた刺激しか受け取れないので、動物は多数の種類の受容器を持ち、それらは1,2個しかないものもあれば、全身に無数に持つものもある。
いずれにせよ、受容器が受けとった刺激は脳へ伝えられ、そこで動物が外界に反応するための情報として利用される。ここで受け取られた刺激から動物は自分の外の世界を知るのであり、それが感覚である[要出典]。
ヒトの感覚分類
現在までに知られている主な感覚
太字はいわゆる五感を示している。
- 体性感覚:皮膚感覚(表在感覚)と深部感覚。
- 内臓感覚:内臓に分布した神経で、内臓の状態(動き、炎症の有無など)を神経活動の情報として感知し、脳で処理する仕組み。
- 臓器感覚(吐き気など)
- 内臓痛
- 特殊感覚:視覚(目で見る)、聴覚(耳で聞く)、味覚、嗅覚、平衡感覚がある。
- 視覚:光を網膜の細胞で神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。感覚器細胞の違い(桿体細胞、錐体細胞)から、明暗感覚の光覚と色彩感覚の色覚に分けることがある。
- 聴覚:音波を内耳の有毛細胞で神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。
- 味覚:食べ物に含まれる化学物質(水溶性物質)の情報を、舌、咽頭、喉頭蓋などの味覚細胞で神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。
- 嗅覚:鼻腔の奥にある嗅細胞で、空気中の化学物質(揮発性物質)情報を神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。
- 平衡感覚:内耳の前庭や半規管などで、頭部の傾き、動き(加速度)などを神経活動情報に変換し、脳で処理する仕組み。特に、前庭についての仕組みを前庭感覚という。
他の感覚
- 固有感覚(運動感覚):体に対する意識(筋、腱内の受容器による筋、腱、間接部の緊張の変化)の知覚である。ヒトが大きく依存する感覚であり、しかしながら頻繁に意識されない感覚である。説明するより更に簡潔に明示すると、固有感覚とは、体の様々な部位の位置する場所を感じているという"無意識"である。これは目を閉じて腕を周りに振ることで演示することができる。固有感覚機能が正確だと思い込んで、どの他の感覚にも感知されていないにもかかわらず、直ぐに実際にある手の位置の意識が無くなるだろう。
- 什痒感:いわゆる「痒み」の感覚。長い間「痒みは“痛み”の軽いもの」と思われていたが、近年[いつ?]、独立した感覚である可能性が示された[2]。
- ^ 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス永野智久研究室「運動生理学(2) 感覚器」2012 年10月22日。
- ^ “"痒み"を感じる脳―"痛み"とは異なる"痒み"を感じる脳の部位を特定―”. 自然科学研究機構 生理学研究所. 2014年2月12日閲覧。
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