メタファー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/07 16:49 UTC 版)
概説
メタファーは、言語においては物事のある側面をより具体的なイメージを喚起する言葉で置き換え、簡潔に表現する機能をもつ。わざわざ比喩であることを示す語や形式を用いている直喩よりも洗練されたものと見なされている。
メタファーにもいくつかタイプがあるが、一例を挙げると「人生はドラマだ」のような形式をとるものがある。
メタファーは日常的に頻繁に用いられているもの、話している本人も気づかずに用いているものから、詩作などにおいて創造される新奇なものまで、様々なレベルにわたって存在している。
メタファーが用いられるのは、いわゆる"言語"(言葉)に限らず、絵画、映画などの視覚の領域でも起きる。
メタファーは人間の類推能力の応用とされることもあり、さらに認知言語学の一部の立場では、人間の根本的な認知方式のひとつと見なされている(概念メタファー)。メタファーは、単に言語の問題にとどまるというよりも、もっと根源的で、空間の中に身体を持って生きている人間が世界を把握しようとする時に避けることのできないカテゴリ把握の作用・原理なのだと考えられるようになってきている。
メタファーの例
冒頭に挙げた「人生はドラマだ」はもっとも初歩的なメタファーである。「…は…だ」という形で比喩だということがある。
次のようなものもメタファーである。
人生は旅だ。私と一緒に旅をしてみないか?
この例などは、ひとつめの文に加えて、ふたつめの文「私と一緒に旅をしてみないか?」もメタファーであるが、ひとつめの文がメタファーだと分かるため、ふたつめも引き続きメタファーだとわかる。
次の会話の例にもメタファーが含まれている。
この会話では「闇が深ければ、夜明けは近い」がメタファーである。
(人によっては)メタファーだと気づきにくいタイプのメタファーもある。例えば次のような例である。
上記2例のようなメタファーは、恋をする男性の心に生まれることがあるものである。
さらに気づきにくい例を挙げる。例えば次のような一文が芸術的な小説の中に配置されていれば、それは単なる情景描写というよりもメタファーの可能性が高い。
その時彼がふと窓の外を見ると、一羽の鷹が、強風にも流されず、空中に静止していた。
メタファーは人間が根本的に持つ世界の認知、世界の見え方に深く関わっており、聞き手の心の状況に合ったメタファーは強く心を打ち、大きな影響力を持つ。
古典的なメタファー
メタファーは古今東西の文学作品に普遍的に存在している。その中でも歴史的に見て、多くの人々に読まれ、影響力の大きなメタファーをいくつか挙げる。
メタファーは現存する最古の文学作品といわれる『ギルガメシュ叙事詩』にも豊富に見だすことができる。同作品は多数の写本が作成され、広く流布したと考えられており、現代の視点でも文学作品として第一級だとしばしば評されている。
聖書は、メタファーと譬え話に満ちた文書の典型としてしばしば挙げられている。聖書およびイエス・キリストのたとえ話は、西洋文学におけるメタファーのありかたに多大な影響を与えている。
仏教においても、仏陀は、相手に応じて比喩を巧みに用いて説いたとされ、メタファーに満ちた話が現在まで伝わっており、仏教圏の人々には広く浸透している。
『涅槃経』第29巻では比喩を、順喩、逆喩、現喩、非喩、先喩、後喩、先後喩、遍喩の8種類に分類している。その中で、現喩は現前のものをもって表現する比喩で、遍喩は物語全体が比喩であるもののことである。
日本の仏教の文書にもメタファーは見出すことができる。
- 1 メタファーとは
- 2 メタファーの概要
- 3 メタファー観の歴史
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