ヒルベルト空間 ヒルベルト空間の概要

ヒルベルト空間

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/07/12 15:59 UTC 版)

ヒルベルト空間は、典型的には無限次元の函数空間として、数学物理学工学などの各所に自然に現れる。そういった意味でのヒルベルト空間の研究は、20世紀冒頭10年の間にヒルベルトシュミットリースらによって始められた。ヒルベルト空間の概念は、偏微分方程式論、量子力学フーリエ解析信号処理や熱伝導などへの応用も含む)、熱力学の研究の数学的基礎を成すエルゴード理論などの理論において欠くべからざる道具になっている。これら種々の応用の多くの根底にある抽象概念を「ヒルベルト空間」と名付けたのは、フォン・ノイマンである。ヒルベルト空間を用いる方法の成功は、函数解析学の実りある時代のさきがけとなった。古典的なユークリッド空間はさておき、ヒルベルト空間の例としては、自乗可積分函数の空間、自乗総和可能数列の空間超函数からなるソボレフ空間正則函数の成すハーディ空間などが挙げられる。

ヒルベルト空間論の多くの場面で、幾何学的直観は重要である。例えば、三平方の定理中線定理(の厳密な類似対応物)は、ヒルベルト空間においても成り立つ。より深いところでは、部分空間への直交射影(例えば、三角形に対してその「高さを潰す」操作の類似対応物)は、ヒルベルト空間論における最適化問題やその周辺で重要である。ヒルベルト空間の各元は、平面上の点がそのデカルト座標(直交座標)によって特定できるのと同様に、座標軸の集合(正規直交基底)に関する座標によって一意的に特定することができる。このことは、座標軸の集合が可算無限であるときには、ヒルベルト空間を自乗総和可能な無限列の集合と看做すことも有用であることを意味する。ヒルベルト空間上の線型作用素は、ほぼ具体的な対象として扱うことができる。条件がよければ、空間を互いに直交するいくつかの異なる要素に分解してやると、線型作用素はそれぞれの要素の上では単に拡大縮小するだけの変換になる(これはまさに線型作用素のスペクトルを調べるということである)。


  1. ^ Marsden 1974, §2.8
  2. ^ この節における数学的な題材は、Dieudonné (1960), Hewitt & Stromberg (1965), Reed & Simon (1980), Rudin (1980) など、およそまともな函数解析学の教科書を見れば載っている。
  3. ^ 第二引数に関して線型であると約束する場合もある。
  4. ^ Dieudonné 1960, §6.2
  5. ^ Dieudonné 1960
  6. ^ メビウスの後押しを受けたグラスマンの手によるところが大きい (Boyer & Merzbach 1991, pp. 584–586)。抽象線型空間の現代的にきちんとした公理的取り扱いは、1888年のペアノが最初である (Grattan-Guinness 2000, §5.2.2; O'Connor & Robertson 1996)。
  7. ^ ヒルベルト空間の詳しい歴史は Bourbaki 1987 に扱われている。
  8. ^ Schmidt 1908
  9. ^ Titchmarsh 1946, §IX.1
  10. ^ Lebesgue 1904。積分論の歴史の詳細は Bourbaki (1987)Saks (2005) にある。
  11. ^ Bourbaki 1987.
  12. ^ Dunford & Schwartz 1958, §IV.16
  13. ^ Fréchet (1907)Riesz (1907) の結果を併せて Dunford & Schwartz (1958, §IV.16) は「L2[0,1] 上の任意の線型汎函数は積分で表される」と書いている。「ヒルベルト空間の双対がもとの空間と同一視される」という一般な形の主張は Riesz (1934) で述べられている。
  14. ^ von Neumann 1929.
  15. ^ Kline 1972, p. 1092
  16. ^ Hilbert, Nordheim & von Neumann 1927.
  17. ^ a b Weyl 1931.
  18. ^ Prugovečki 1981, pp. 1–10.
  19. ^ a b von Neumann 1932
  20. ^ Halmos 1957, Section 42.
  21. ^ Hewitt & Stromberg 1965.
  22. ^ a b Bers, John & Schechter 1981.
  23. ^ Giusti 2003.
  24. ^ Stein 1970
  25. ^ 詳細は Warner (1983) に見つかる。
  26. ^ ハーディ空間の一般論は Duren (1970) を見よ。
  27. ^ Krantz 2002, §1.4
  28. ^ Krantz 2002, §1.5
  29. ^ Young 1988, Chapter 9.
  30. ^ フレドホルム核の固有値は 1/λ でこれは 0 に近づく。
  31. ^ この観点からの有限要素法の詳細が Brenner & Scott (2005) にある。
  32. ^ Reed & Simon 1980
  33. ^ この観点からのフーリエ級数の扱いは、例えば Rudin (1987)Folland (2009) を参照。
  34. ^ Halmos 1957, §5
  35. ^ Bachman, Narici & Beckenstein 2000
  36. ^ Stein & Weiss 1971, §IV.2.
  37. ^ Lancos 1988, pp. 212–213
  38. ^ Lanczos 1988, Equation 4-3.10
  39. ^ スペクトル法の古典的文献は Courant & Hilbert 1953。より今日的な取り扱いは Reed & Simon 1975 を参照。
  40. ^ Kac 1966
  41. ^ Dirac 1930
  42. ^ von Neumann 1955
  43. ^ Young 1988, p. 23.
  44. ^ Clarkson 1936.
  45. ^ Rudin 1987, Theorem 4.10
  46. ^ Dunford & Schwartz 1958, II.4.29
  47. ^ Rudin 1987, Theorem 4.11
  48. ^ Weidmann 1980, Theorem 4.8
  49. ^ Weidmann 1980, §4.5
  50. ^ Buttazzo, Giaquinta & Hildebrandt 1998, Theorem 5.17
  51. ^ Halmos 1982, Problem 52, 58
  52. ^ Rudin 1973
  53. ^ Trèves 1967, Chapter 18
  54. ^ See Prugovečki (1981), Reed & Simon (1980, Chapter VIII), Folland (1989).
  55. ^ Prugovečki 1981, III, §1.4
  56. ^ Dunford & Schwartz 1958, IV.4.17-18
  57. ^ Weidmann 1980, §3.4
  58. ^ Kadison & Ringrose 1983, Theorem 2.6.4
  59. ^ Dunford & Schwartz 1958, §IV.4.
  60. ^ 添字集合が有限の場合は例えば Halmos 1957, §5、無限の場合は Weidmann 1980, Theorem 3.6 を参照。
  61. ^ Levitan 2001。様々な文献(例えば Dunford & Schwartz (1958, §IV.4) など)ではこれを単に次元と呼ぶが、考えているヒルベルト空間が有限次元の場合を除けば、これは通常の線型空間の意味での次元(ハメル基底の濃度)と同じものではない。
  62. ^ Prugovečki 1981, I, §4.2
  63. ^ von Neumann (1955) はヒルベルト空間は可算ヒルベルト基底を持つものと定義したので、そのようなものは全て ℓ2 に等距同型である。量子力学の厳密な取り扱いにおいて殆どの場合この規約が用いられている(例えば Sobrino 1996, Appendix B を参照)。
  64. ^ a b c Streater & Wightman 1964, pp. 86–87
  65. ^ Young 1988, Theorem 15.3
  66. ^ Kakutani 1939
  67. ^ Lindenstrauss & Tzafriri 1971
  68. ^ Halmos 1957, §12
  69. ^ ヒルベルト空間におけるスペクトル論の一般的な説明が Riesz & Sz Nagy (1990) にある。C-環の言葉を用いたより高度な説明は Rudin (1973)Kadison & Ringrose (1997) を参照。
  70. ^ たとえば Riesz & Sz Nagy (1990, Chapter VI) や Weidmann 1980, Chapter 7 を参照。この結果は、積分核から生じる作用素の場合には、既に Schmidt (1907) で知られている。
  71. ^ Riesz & Sz Nagy 1990, §§107–108
  72. ^ Shubin 1987
  73. ^ Rudin 1973, Theorem 13.30.







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