ジム・カスタム ジム・カスタムの概要

ジム・カスタム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 07:30 UTC 版)

作中の軍事勢力のひとつである地球連邦軍の量産機で、テレビアニメ『機動戦士ガンダム』に登場するジムの改良型のひとつ。「やられ役」としての描写が多いジム系としては珍しく、エース・パイロット用の高性能機とされる。『0083』劇中ではサウス・バニング大尉率いる、ペガサス級強襲揚陸艦「アルビオン」のMS隊の主力機として活躍する。

メカニックデザインカトキハジメ

本記事では、ほかの外伝作品に登場するバリエーション機、および後継機であるジム・クゥエルについても解説する。

設定解説

諸元
ジム・カスタム
GM CUSTOM
型式番号 RGM-79N
所属 地球連邦軍
ティターンズ / エゥーゴ
建造 地球連邦軍ジャブロー工廠[1]
全高 18.0m[2]
頭頂高 18.0m[3]
本体重量 42.0t[2]
全備重量 57.6t[2]
装甲材質 チタン・セラミック複合材[4]
出力 1,420kW[2]
推力 30,000kg×2[2]
1,870kg×4[2]
総推力:67,480kg[5]
武装 頭部60mmバルカン砲×2
ビーム・サーベル
ジム・ライフル
ビーム・ライフル
シールド
搭乗者 サウス・バニング
アルファ・A・ベイト
ベルナルド・モンシア

宇宙世紀0080年10月13日に施行された「連邦軍再建計画」の発動にともない、連邦軍首脳陣は一年戦争において互換性の低いバリエーションが多数存在することとなったジム系の規格統一化を図るべく、生産性や部品調達においては平均値を指標としつつも高性能化を達成するという、本来であれば矛盾する目標を掲げる[6]

本機の設計のベースとなっているのはジム・スナイパーカスタム(SC型)やジム・コマンド(G型)であるが、これらは本格的な量産を前提としておらず、そのままの形での量産化は不可能であった[7]。これには戦後の経済情勢が大きく影響しているといわれるが、実際には同時期に「ガンダム開発計画」が秘密裏に進行しているというう状況下にあり、手もちの資材や施設を流用しなければならないという事情もあったといわれる[7]

そこで注目されたのがガンダムNT-1である[7]。同機はもともと「ガンダムの量産化」を目標として設計されており、原型機よりユニット化が進んでいた[7]。さらに、開発を推進していたオーガスタ基地には、相当数の未組立のユニットが生産されたままとなっていた[7]

ジム改をベースに[8]、フレームを最大限に活かしつつ[9]ガンダムNT-1の構造を取り込むことで[7][注 1]、それまでの機体と比較してバランスに優れた[2]扱いやすい機体となる[7]。ただし、その分性能的に突出する部分はなく、「特長がないのが特徴」と揶揄されることもある[7]

パワード・ジムの実験結果にもとづいて[10]各部スラスターやジェネレーターの強化がおこなわれた結果、推力は従来のジムと比較してほぼ倍[11]、出力はガンダム・タイプ並みとなり[12]、機動性や運動性が向上している[11]。また、サブ・スラスターのトリムや四肢のアクチュエターのレスポンスやトルクなどが機体ごとに調整可能なように改装されている[12]デラーズ紛争以前の連邦製量産機としては最上位機種に位置づけられ、本格的な量産計画が策定されるものの、性能に比例して製造コストが高く[12]、生産数は極端に少ない[1]。おもにエース・パイロットに優先して配備されるが[11]、もともとエース用に製造されたともいわれる[1]

デラーズ紛争終結後は、開発チームを含むプロジェクト自体がティターンズの管理下に置かれ、若干の設計変更ののちジム・クゥエルとして生産ラインが切り替えられている[12][注 2]

機体構造

頭部
基本的に、SC型とG型を統合した機能を併せもつ[14]。狙撃用や対人用のセンサーに加え、高性能のコ・プロセッサー・フレームが搭載されており、投入領域や任務を問わない柔軟性を付与している[14]。ゴーグルの形状が既存の機体とは上下逆に設置され、下方視界やサーモグラフ、動態センサーなどの範囲が拡大している[14]。後頭部左側に装備しているロッド・アンテナは試作機並みの送受信能力をもち、機体のモニタリングに最適化されている[14]。指揮官機としての運用を想定して開発された通信ユニットが大型化したため、バルカン砲の装弾数はジム改より減っている[13]
胴体
コックピット・ブロックは0080年代初期に供給された機体と基本的にほぼ同等であるが、内装は新規に設計されている[14]。モニターは従来のジム系より解像度が高い[13]。のちに順次全天周囲モニターおよびリニアシートにアップデートされている[13]
胸部構造は、大戦末期に開発されオーガスタ系量産機に多く採用されている2層構造の複合インテーク / ダクトをもっており、メイン・ジェネレーターの安定と稼働効率を保証する[14]。実質的にこの構造を設計段階から採用したのが本機であるといわれており、リニアシートが標準装備となるまでの間、「高性能機」の基本構造となる[14]
出力向上のため、それまでのジム系の多くが採用していたコア・ブロック方式(コア・ファイターにはならない)を廃止し、大型のタキム社製1,400キロワット級ジェネレーターを搭載している[9]。また余剰スペースを利用して腰部にサスペンションが追加され、重力下での「乗り心地」も改善されている[9]
ランドセルはガンダムNT-1のものがほぼそのまま採用されているが[9]、生産性を考慮してコストダウンが図られている[13]
腕部
ガンダムNT-1用に開発されたユニットが、ほぼそのまま採用されている[15]。同機の腕部はガトリング砲を内蔵しており、構造的に少ない容積ながら当時の標準的なマニピュレーターとほぼ同等の機能を達成している[15]。本機ではガトリング砲はオミットされ、その分の軽量化に貢献しているが、本機の試験運用を通してMSの可動を抜本的に改善できるのではないかという、ムーバブル・フレームの原型となる発想が生まれたともいわれる[15]。肘関節も、NT-1でこころみられたマグネット・コーティング対応の駆動系デバイスを採用している[9]
装備の互換性の確保および拡大のため、オプション・ラッチ構造の審査用として前腕部甲のパネルは交換可能となっており、ラッチなどはのちの統一規格の原型となる[15]。肩アーマーの姿勢制御ユニットは前後にスラスターを有し、オフセットしてマウントされており、少ない推力で軌道変更が可能となっている[13]
脚部
基本的にガンダムNT-1と同等のユニットであるが、宇宙用に特化した3基のサブ・スラスター・ユニットはオミットされ、標準的な装甲がほどこされている[15]。稼働における確実性が優先されたため、NT-1と同等の膝部ユニットの採用は見送られ、大容量のエネルギー供給ケーブルが露出する設計となっている[15]。これにより、足下のスラスター推力は格段に向上、また生産性やメンテナンス、装備の換装をおこなう場合にも利便性が高く、ムーバブル・フレームが主流になるまで多くの機体にも採用されている[15]。任務によっては、NT-1のように[16]脚部に大型のプロペラントタンクを換装し、高機動戦闘への対応も可能だったようだとされる[15]

武装

頭部60ミリバルカン砲
連邦系MSの標準装備。
ジム・ライフル
型式番号:HWF・GR・MR82-90mm[15] / HWF GMG MG82-90mm[17]
ホリフィールド・ファクトリー・ウェポンズ社製[18]。バレルやセンサー、ストック、マガジンなどを換装可能なジム・マシンガン(ジム改などが携行)のロング・バレル仕様で[12]、初速が15パーセント増加し貫通力が強化され、有効射程も6,200メートルと延長されている[18]。弾体(徹甲榴弾GU-κ[18])はケースレスで排莢機構はないが[15]、ジャミング対策にコッキングおよびイジェクト機能は残されている[18]。全長9.4メートル[18]、装弾数30発[15]
ビーム・サーベル
型式番号:XB・G-1019H[15]
ガンダムNT-1で開発されたセンター配置のベース・ユニットの規格に対応している。口径は既存のものと同じだが、エネルギーCAPシステムでもマニピュレーターを介してエネルギー供給が可能なデュアル・サプライ・デバイスが採用されている[15]
シールド
型式番号:RGM・M-Sh-ABT/S-0057[15]
ジム・コマンド用に開発された曲面シールドの更新型[12]。表面に耐ビーム・コーティングがほどこされたものもある[15]。裏面にジム・ライフルのマガジンを2基装備可能[15]

劇中での活躍

OVA『0083』第3話で初登場。カラーリングはほぼ全身を薄い青緑で塗られている。ジオン公国残党軍「デラーズ・フリート」に強奪されたガンダム試作2号機の奪還任務を受けたアルビオンにジャブローから補充された[2]3機が配備され、補充パイロットのアルファ・A・ベイト中尉とベルナルド・モンシア中尉が搭乗する。モンシアは配属直後の本機を隊長のサウス・バニング大尉に無断でもち出し、コウ・ウラキ少尉操縦のガンダム試作1号機と模擬戦をおこなうも敗れる。

第4話では、ノイエン・ビッター少将率いるキンバライド基地防衛隊と交戦し、ドム・トローペン4機を含むMS部隊を母艦アルビオンとの連携で全滅させるも、ザクII F2型の攻撃でベイト機が脚部に被弾し、行動不能となる。

第5話では、宇宙でシーマ・ガラハウ中佐率いるシーマ艦隊とアルビオンが交戦し、MS隊とゲルググMの部隊が激戦を繰り広げる。戦闘終盤には、シーマ・ガラハウ中佐のゲルググMに圧倒されたガンダム試作1号機を救うべく、バニングが怪我を押して本機で初出撃。1機撃墜し、シーマ機を撤退させる。

第8話では、シーマ艦隊と遭遇した戦艦バーミンガムを援護すべく、バニング機がガンダム試作1号機フルバーニアンジム・キャノンIIを率いて出撃。バニング機はふたたびシーマ機と交戦するが、敵機の110ミリ速射砲弾が右腹部に命中する。機体に変調はないかに見えたが、帰還の途中に突然爆発し、機体は失われバニングも戦死する。残されたモンシア機とベイト機はその後もアルビオン所属機として活躍し、デラーズ紛争を戦い抜く。

『0083』以前に制作された、のちの時代を描いたテレビ版『機動戦士Ζガンダム』に本機の設定はまだなかったが、『0083』以後に制作された劇場版『機動戦士ΖガンダムIII A New Translation -星の鼓動は愛-』にはジム・キャノンIIとともにエゥーゴ側の戦力として配備されている様子が数カット描かれている。従来塗装の機体だけでなく、ジムIIと同様のエゥーゴ・カラーで塗装された機体も登場する。武装は、ジムIIのものと同型のビーム・ライフルを携行している。

雑誌・ウェブ企画『A.O.Z Re-Boot』では、ティターンズ所属機が登場。同隊設立直後から後継機のジム・クゥエルが配備されるまでの約2か月という極めて短い期間にのみ運用されている。ジム・クゥエルと同じティターンズ・カラーの濃紺を基調とする[19]

書籍『マスターアーカイブ モビルスーツ RGM-79ジム Vol.2』では、連邦軍標準カラーは従来のジムと同様の赤と白を基調としている。また、0083年初頭に強襲揚陸艦「グレイファントム」に2機が配備されているが、デラーズ紛争における核攻撃に巻き込まれ失われている。カラーリングは濃淡の紫を基調とする。


注釈

  1. ^ このため「オーガスタ系」と呼ばれる。ただし本機の建造自体はオーガスタ基地でおこなわれたわけではない[7]
  2. ^ ただし、本機の最終生産を0086年10月とする資料もある[13]
  3. ^ 『マスターグレード ガンダム試作1号機フルバーニアン』のビーム・ライフルと『BB戦士 サザビー』のビーム・ショット・ライフルを組み合わせたもの[20]。『GGENERATION-ZERO』のCGでもそのままの形状。
  4. ^ 先に発売されたガンダムNT-1の金型を一部流用してのキット化という事情も重なり、デザインの統合性を重視しなければいけなかった
  5. ^ 腹部コクピットハッチのほか、額中央、頭部側面インテーク、胸部左に増設されたセンサーなどに、後のRX-178 ガンダムMk-IIへ繋がる意匠が認められる。
  6. ^ 胸部複合インテーク・ダクトおよびバックパックは、ジム・カスタムと同じくオーガスタ系ガンダムであるガンダムNT-1に準ずる形状のものが設置されている。
  7. ^ 宇宙世紀0083年のティターンズ設立計画書によれば、そもそもはオーガスタ研究所で開発されて宇宙世紀0084年に地球連邦軍の各部隊に配備予定であったものを、前倒しでティターンズに配備し、専用機として運用することとなった。
  8. ^ ADVANCE OF Ζ 刻に抗いし者』第1巻による[26]。同書137頁には「ジム・クゥエルの近代化改修」との記述があるが、これがリニアシート式への換装を指すかは不明。
  9. ^ ノーマルスーツの襟章より。

出典

  1. ^ a b c ニュータイプ別冊0083 1993.
  2. ^ a b c d e f g h 0083略奪編 1991, p. 55.
  3. ^ 0083大百科 1992, p. 114.
  4. ^ DC一年戦争外伝 1997, p. 34.
  5. ^ MS大全集2013 2012, p. 32.
  6. ^ MGカスタム 1999, p. 2.
  7. ^ a b c d e f g h i MGカスタム 1999, p. 3.
  8. ^ 0083大百科 1992, p. 22.
  9. ^ a b c d e マスターアーカイブジム2 2015, p. 82-85.
  10. ^ ラポートDX0083 1993, p. 55,98.
  11. ^ a b c EBデラーズ紛争編上 1992, p. 80-81.
  12. ^ a b c d e f HGUCカスタム 2011.
  13. ^ a b c d e f マスターアーカイブジム2 2015, p. 87-95.
  14. ^ a b c d e f g MGカスタム 1999, p. 11.
  15. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p MGカスタム 1999, p. 13.
  16. ^ MGクゥエル 1999, p. 13.
  17. ^ マスターアーカイブジム2 2015, p. 124.
  18. ^ a b c d e マスターアーカイブジム 2010, p. 94.
  19. ^ a b c d e AOZ ReBoot74 2022.
  20. ^ a b c d e f ウェポンズGP02A編 1998, p. 66-71.
  21. ^ ホビージャパン07 2000, p. 27.
  22. ^ Gジェネ0新聞 1999, p. 60.
  23. ^ a b c 『HGUC 1/144 ジム・クゥエル』バンダイ、2007年1月、組立説明書。
  24. ^ a b c d e 『1/100 MG ジム・クゥエル』バンダイ、1999年12月、組立説明書。
  25. ^ GUNDAM LEGACY』第3巻、角川書店、2009年4月。(ISBN 978-4-04-715181-9)
  26. ^ ADVANCE OF Ζ 刻に抗いし者』第1巻、アスキー・メディアワークス、2011年3月、169頁。(ISBN 978-4048704564)
  27. ^ a b 『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに Vol.2』メディアワークス、2003年12月、74-75頁。(ISBN 978-4840225892)
  28. ^ AOZ ReBoot SP1 2022.
  29. ^ 電撃ホビー07 2014, p. 11-12.
  30. ^ 『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』第7巻、角川書店、2013年9月、3頁。(ISBN 978-4041208410)
  31. ^ 『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』第1巻、角川書店、2010年12月、159頁。(ISBN 978-4047155923)






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