警備車両
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 04:15 UTC 版)
警備車両は正式名称以外にも、都道府県警察ごとに異なった呼び方をされていることが多い(特に警視庁機動隊においては、同じ車両でも大隊毎に違う呼び方がされている場合もある)。車両塗色はかつて灰色だったが、1990年代中頃に配備された車両から“青地に白の太帯2本”に変更されている。ただし、警視庁の一部の車両は塗色が緑地に白帯で、特に救助関係の車両は白帯疾走する黒豹のマークが入っている。また諸外国の同種車両と異なり、大隊・中隊番号が表示されているのみで、所属警察本部の名前が入っていない。 人員輸送車 1個中隊レベルまでの人数の隊員を輸送するための車両で、バス・マイクロバス型。投げつけられる石や物をはね返すための金網が全ての窓に貼られている事から、一般人からは「護送車」と誤解される事が多い(本来の護送車は、車内からの逃走を阻止せねばならないことから、窓ガラスの内側に鉄格子があり、金網は装備されていない)。 常駐警備車(警備車兼輸送車) 輸送車に装甲を付した車両。主に拠点警備に用いられ、道路や施設の封鎖等にも用いられる。複数台を並べた際に車間をすり抜けられないように前後、もしくは左右に並べた際に隙間のできない構造になっている。放水装置を上部に設置したものもある。 かつてはルーフが半円形をしている車体形状(暴徒がよじ登って乗り越えるのを阻止するため)から“かまぼこ”の通称があった(新型の車両は角型の車体になっている)。 遊撃車 主に1個分隊が搭乗し、テロ、ゲリラ警戒を行う車両。最近の機動隊では頻繁に使用されている。車体の大きさ等によってI型からIV型までの各車種が存在している。 警備派出所が設置されていない重要防護施設での張り付き警戒等にも用いられる。従来は三菱・デリカスターワゴンがよく使用されていたが、近年はロングボディのワンボックス車(トヨタ・ハイエース、日産・キャラバン等)が使用されている。 現場指揮官車(指揮車) 主に四輪駆動車(トヨタ・ランドクルーザー)を使用する。屋根には拡声アンプに繋がったラウドスピーカー(部隊に指示を出し、デモ隊・群衆に警告をする)と、屋根の上に立って指揮をするための櫓(やぐら)型の指揮台が設置されている。 指揮台は折りたたみ式になっており、使用しない際や移動時には屋根上に畳まれている。窓ガラスや前照灯などは投石避けの金網で防護されているが、近年(2010年代以降)の新規調達車両には窓ガラス防護用の金網がないものが多い。 特型警備車 検挙対象が銃火器や爆発物を所持・使用してくることが想定される場合に用いられる防弾仕様の装甲車で、数車種が存在する。いずれも三菱重工業が製造しており、三菱ふそう・キャンター等をベースにしている。 詳細は「特型警備車」を参照 大型輸送車(警視庁)三菱ふそう 常駐警備車(新型)(千葉県警察)(ベース車は三菱ふそう・スーパーグレート) 遊撃車II型(千葉県警察) 現場指揮官車(旧塗装)(滋賀県警察)トヨタ・ランドクルーザー80 現場指揮官車(新塗装)(神奈川県警察)トヨタ・ランドクルーザー100 特型警備車 PV-2型(警視庁)(ベース車は三菱ふそう・キャンター) 放水車 高圧放水装置を搭載し、対象の行動を封じるための車両。火炎瓶等による火災を消火するためにも用いられる。警備車兼放水車:警備兼輸送車の車体上部に放水装置を装備したもの。 遊撃放水車:局所警備の他に巡回警備や攻勢排除の際に用いられる、機動力の高い放水車。全体を装甲で覆っており、窓や回転灯は投石避けの金網で防護している。車体上部に放水装置を装備し、車体後部に水槽を装備している。 高所放水車:消防の屈折はしご車と同様のもの 。所有しているのは警視庁機動隊のみ。2010年の時点で車両の更新の予定がなく、いずれ姿を消すと報じられている。 高圧放水車:消防の大型ポンプ車と同様のもの。東日本大震災の福島第一原子力発電所事故においては、2011年3月17日に警視庁第一機動隊に配備されていた車両を警視庁の機動隊員等が運用して、使用済み核燃料プールに約44トンの水を放水した。当初、東京電力から放水車を貸して欲しいと要請を受けていた経緯があり、その後も2013年2月23日の時点で東京電力福島第一原子力発電所の自衛消防隊が運用しているのが確認できる。 警備車兼放水車(旧塗装)(兵庫県警察) 遊撃放水車(警視庁) 高所放水車(旧塗装)(警視庁) 高圧放水車(警視庁) 放射線防護車 原発事故や原発テロの現場で活動するため、放射線に対する防護機能が施された車両。警視庁と福島県警察に配備されている。福島県警察は福島第一原子力発電所で運用し、警視庁は緊急時の全国派遣を想定している。 投光車 いわゆる照明車。夜間警備の際に使用する。2、3tクラスのトラック、ワンボックス車、トヨタ・ランドクルーザー、三菱・パジェロなどがベース。 レッカー車 普通の大型レッカー車。8tの2軸車がベースになっていることが多い。 多重無線車(移動指揮車) 大型輸送車と基本的な外見は同じだが、車内には警察無線機を多数搭載、上部に大型アンテナを複数装備する。主に現場における指揮本部として使用し、警備計画や応援要請に基づく移動指令、散開・集結・撤収指令を部隊に出す。外国でいうモービル・コマンドポスト。活動中は車内を覗かれないよう、灰色カーテンを全ての窓に巡らせている事が多い。警視庁機動捜査隊や公安機動捜査隊にも同様の車両がある。 トイレカー 小型トラック、中型トラックなどがベースでトイレを装備する。あさま山荘事件のような長期間の包囲作戦の時、隊員が利用するほか、警察行事で近くにトイレがない場合も使用される。 キッチンカー マイクロバスがベースで調理設備を装備する。トイレカーと同じく、長期間の包囲作戦の時、隊員のために暖かな食事を提供する。 爆発物処理筒車 爆発物を筒(液体窒素入りで、これにより不審物は瞬時に凍結する。電気回路が使われていても作動を止められる。刑事ドラマに出て来るような、その場での起爆回路切り離しや解体等々は絶対にしない)の中に入れ、安全な場所で処理するために運搬する。万が一爆発しても車体は保護される構造になっている。 爆発物処理用具運搬車 爆発物処理用具(運転席前方に盾を装備し、アームを動かして爆発物をつかむ小型特殊車両)を運搬する通常のトラック。 高所対策車 工事現場等で使用する高所作業車がベースで、作業部が大きくなっている。 化学防護車 NBCを使用した犯罪、テロが発生した際に出動し、防護服や物質を計測するための機械などを装備している。関連車両として、除染剤を積んだ車両も存在する。NBCテロ対応専門部隊が存在する都道府県警察に配備。 騒音測定車 騒音計を装備している。街宣車などがスピーカーから流す、音楽やシュプレヒコールなどの騒音の値を測定する車両。旭日章は装備されず、赤色灯は脱着式の為覆面パトカー扱いとなり、一部警察では3ナンバーで登録されている。 採証車 小型採証車:暴動などの様子をビデオ撮影し、証拠となる映像を採集するための車両。ワンボックス車がベースで、折りたたみ式のやぐらと脱着式警光灯を装備する。また、旭日章は装備しないため覆面パトカー扱いとなる。 大型採証車:用途は小型採証車と同じだが、中型トラックベースで装甲で覆われており、特型警備車に準じた車両となっている。撮影は屋根に固定されたカメラで行う。 放射線防護車 三菱ふそう・スーパーグレード 投光車トヨタ・ランドクルーザー80 レッカー車いすゞ・ギガ トイレカーメルセデス・ベンツ711D キッチンカー 爆発物処理筒車いすゞ・エルフ 爆発物処理用具運搬車日野・レンジャー 高所対策車 騒音測定車三菱・デリカスペースギア 小型採証車トヨタ・ハイエース 大型採証車 エリア警戒車 警視庁機動隊に配備されている覆面パトカー。 エリア検問車 重要防護施設周辺で検問を行うための車両。白のワンボックスに事故処理車と同様の電光掲示板が装備されている。 エリア検問車トヨタ・ハイエース 電源車 電源を供給するための中型トラック。 資材運搬車 資材を運搬するためのアルミバンタイプのトラック。基本的には普通の中型トラックに赤色灯と旭日章を装備したものだが、警視庁には小型トラックをベースにキャブを緑色に塗った車両も配備されている。また、覆面パトカー扱いの車両も存在する。 警察犬搬送車 警察犬を運搬するための車両。ワンボックスタイプとSUVタイプがある。 X線検査装置車 X線検査装置を搭載した車両。人体への照射ではなく爆発物の検知などを目的に用いられる。 広報車 ワンボックス車をベースにやぐらとスピーカーを装備した車両。用途は現場指揮官車に近いが、緑色で金網は装備されていない。 除染車 薬品で汚染された人を除染するための車両。 電源車UD・コンドル 資材運搬車トヨタ・トヨエース 広報車いすゞ・エルフルートバン この他に、警視庁の機動隊は普通の警ら型パトカーも所有しており、連絡や隊員の移動用、要人警護の支援などに使用される。
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「警備車両」の例文・使い方・用例・文例
- シークレットサービスの係官と警備車両が大統領の車を取り囲んだ。
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