電力 電力の概要

電力

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/06 11:04 UTC 版)

電力
electric power
量記号 P
次元 L2 M T−3
種類 スカラー
SI単位 ワット (W)
CGS単位 エルグ (erg/s)
FPS単位 フィート・パウンダル毎秒 (ft pdl/s)
MKS重力単位 重量キログラムメートル毎秒 (kgf m/s)
FPS重力単位 フィート重量ポンド毎秒 (ft lbf/s)
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電力系統における電力は、発電機などにより発電され、送電され、電気器具[注 1]により消費される、単位時間あたりの電気エネルギー[2]国際単位系(SI) ではワット単位

電力を時間ごとに積算したものは電力量(electric energy)。電力とは区別される。電力を時間積分したものが電力量で、量の次元としてはエネルギーに等しい。

概要

屋根にソーラーパネルを設置して自家発電している家
家庭で用いられることのある小型風力発電機英語版

専門用語では、「電力」とは単位時間電流がする仕事(量)のことである。単位はW (ワット) であり[1]、電圧Vの電源から電流Iが流れているとき、電力はV・Iというで表せる[1]。つまり電力は、電圧電流である[3](物理学概念の分類体系で言うと、仕事率 (power) に分類される)。→#定義と公式

なお、一般用語(非専門用語)では、「電力」が、電気の形で伝えられるエネルギーを指していることも多い。なお専門用語ではこのエネルギーに関しては「電力量」と呼び分けて区別している。

電力は電池(← 化学エネルギー)、発電機(← 運動エネルギー)、太陽電池(← 光エネルギー)などにより、それぞれのエネルギーから電気エネルギーに変換される。これを総称して発電と呼ぶ。

発電された電力はそのまま使うか(自家使用、または自家発電)、または電力網に投入して遠隔地に送り、需要のあるところで使われる。電線により、発電するところと電力を消費する負荷とを、電力網を介して繋ぐだけで電力の利用ができ、また様々なエネルギー形態、例えば光エネルギー(白熱電球LEDほか)や運動エネルギー(電動機ほか)、熱エネルギー電熱・冷暖房)そして、化学エネルギー(蓄電池電気分解電気めっきほか)などなど、他のエネルギーに容易に変換できる優れた特性を持つのが、電力の大きな特徴である。

電力の蓄電

電力を貯蔵する方法は多数ある。

近年では、世界各国の政府で「脱カーボン」を推進することは至上命題となっており、太陽光発電風力発電を増やしつつ、その日の天候による発電量の変動や、昼間と夜間の差や生じるという性質を補うために蓄電システムの活用が重視されている。太陽光発電や風力発電と蓄電システムを組み合わせることで、脱炭素と電力の安定供給を両立するシステムを構築することができる。

二次電池による蓄電

たとえば蓄電池を使った電力の貯蔵も小規模から大規模なものまで実用化されている。リチウムイオン二次電池を利用した家庭用や電気自動車用の小規模蓄電から、大規模なものは送配電会社の変電所、太陽光発電所や風力発電所に併設されている、チタン酸リチウム二次電池[4]ナトリウム・硫黄電池(NAS電池)またはリチウムイオン二次電池による蓄電設備に至るまで、数々のものが実用に供されている。

定置型蓄電装置には電気自動車ほどの急速充放電特性は求められないため、役目を終えた電気自動車の廃棄バッテリーによる蓄電設備が普及しつつある[5]。また次世代電池として注目されている全固体電池による蓄電も検討されている。

揚水による蓄電(揚水蓄電)

たとえば日本では古くから、水の位置エネルギーとして電力を保存する方法が活用されている。(このシステムは本当は蓄電システムなのだが、なぜか発電のほうに焦点を当てた名称「揚水発電」と呼ばれている。) 昼間の需要時には起動に数分間[注 2]あれば良いため、急激な需要増加に対応可能な、実用的な大規模蓄電装置である。

水素による蓄電

トヨタ自動車が、様々な企業と連携して他の多くの企業と手をたずさえて推進しているプロジェクト、大規模な水素システムは、<< 水素 >> という物質の形で行う電力の蓄電手法である[6]というのは、電気エネルギーを加え電気分解すると水素と酸素に分解できる。逆に、「水素」という物質の形でそれをタンクなどにたくわえておけば、安定したエネルギーの保存ができ、いざそれを電力に変換したくなったら、(「燃料電池」と呼ばれる、水素と酸素の反応装置、一種の燃焼装置を使い)その水素と、我々の周囲にある空気中の酸素を反応させて電気エネルギーに変換できる。つまり、電力は一旦水素という物質の形に変換しておくと、ふたたび電力として使いたくなった時に、燃料電池で電力に変換すればよい。おまけに水素は燃やしても(つまり水素と酸素を反応させても)水が生じるだけであり(2H2 + O2 → 2H2O + 電気エネルギー)、水素システムはとてもクリーンだという優れた性質がある。

蓄熱システム

電力の用途というは、その約3分の1が冷暖房の熱源であるので、少し頭を働かせれば分かることだが、電力は必ずしも電力という形で蓄える必要はなく、(どうせ1/3は熱に変換して使うのだから、電力の1/3に関しては)その用途である熱エネルギーにあらかじめ変換しておいて、その形で蓄えてもよい。

フィンランドでは、太陽光発電などのグリーンエネルギーで得られた電力を、大量の砂に熱を蓄える蓄熱システムの運用が2022年にすでに開始した。グリーンエネルギーで発電した電力を、地域暖房ネットワークで使用する << 熱 >> に変換して、砂に蓄える世界初の商用ソリューションである。2022年に実運用が始まった「砂電池」がどのようなものかというと、幅4メートル、高さ7メートルの大きさの断熱鋼タンクの中に100トンの古い砂が入れてあり、その中央に熱交換器が埋め込まれているシンプルな構造。グリーンエネルギーで作り出した電力で、このタンク中央に埋め込まれた熱交換器でタンク内の砂を加熱し、8MWh(公称出力100kW)という大量の電力に相当する熱エネルギーを蓄えることが出来る。なぜ砂を使うかというと、砂は素材として丈夫で、おまけに安価(超低コスト、あるいはタダ)であり、さらに500〜600℃程度の温度であれば、小さな体積で多くの熱エネルギーを蓄えることができるからだという。タンクに入れる砂は、普通の砂であり、乾燥していて可燃性のゴミが混じっていなければどんな砂でもよいので、タダで調達できるエネルギー貯蔵媒体なのである。設置費用は1KWhあたりわずか10ユーロ(1300円)未満で、おまけに消耗品を使用しない完全自動運転で、コストも最低限で済む。(参考までに、普通の蓄電池と比較すると、普通の蓄電池は1KWhあたり1万円以上はする計算になるので、「砂による蓄エネルギーシステム」が非常に優れていることがわかる。)[7] タンク内の熱エネルギーを使う場合は、タンク内のパイプに水を通せばよい、すると数百度の温度に加熱された砂により水が加熱され熱水が得られ、その熱水を(フィンランドのような国では熱水を各家に分配する地域システムがあり)各家のセントラルヒーティングシステムに送り、各家・各部屋を暖房することができる。

(日本ではまだ「砂電池」運用は始まっていないが、以前から)深夜に氷や温水をヒートポンプを動かして蓄熱し、昼間のピーク需要を抑えることで仮想的に電力を貯める蓄熱冷暖房システムや、電力需要の厳しいときに電力消費を抑えつつ、その前後の割安な時間に電力消費をずらすことでピーク電力を抑えるエネルギー管理システムもある[注 3]

電力の消費

電力消費量

全世界の電力消費量は、2000年時点では13兆2380億 kW·hであったが、2010年時点では18兆704億 kW·hとなり、2015年は21兆279億 kW·h、2018年は23兆398億 kW·hであった[8](つまり右肩上がりに増加している)。

国別

電力の消費量が多い順に国を挙げると次のようになる。

2015年時点の資料では、中国アメリカ合衆国日本ロシアインドの順であった[9]。 それが2021年では、中国、アメリカ合衆国、インド、日本、ロシアの順となっている[10]

一方、国民一人当たりの電力消費量の多い順に挙げると、2021年でアイスランドノルウェーバーレーンクウェートカナダの順になり、日本は19番目となる[10]。アイスランドの一人当たりの消費電力は1位であるが、地熱発電が20 %、他が水力発電と、ほぼ100 %が自然エネルギーで賄われている[11]。カナダは、湖や河川など豊富な水資源に恵まれていて電気料金が安いので一人あたりの消費量が特に多いのである[9]。一方、中国は一人当たりの電力消費量は世界平均ほどだが、国民の人数が大きいので国全体の電力消費量が大きくなっている(なお中国は急速に経済成長しているので電力不足が深刻化している)[9]

世界の消費電力ランキング(資料年不明)[10]
順位 1位 2位 3位 4位 5位 6位 7位 8位 9位 10位
総消費電力 中華人民共和国 アメリカ合衆国 インド 日本 ロシア ドイツ カナダ 大韓民国 ブラジル イギリス
一人当たりの消費電力 アイスランド ノルウェー バーレーン クウェート カナダ フィンランド カタール ルクセンブルク スウェーデン アメリカ合衆国
なお、消費電力量順の国の一覧は電力消費順の国のリスト英語版として、独立記事が立てられている(国旗と数字で読みとれるので英語が理解できない人でも内容は分かる記事となっている)。

家庭での電力の消費量

家庭での電力の消費の量やその内訳というのは、国、地域、季節、日々の気温ごとにかなり異なっている。

参考までに、日本の家庭の一世帯あたりの電気消費量は、平成21年度(2009年4月〜2010年3月、冷夏暖冬であった期間)の通年では4618 kW·h/世帯であった。内訳としては、大きいものから電気冷蔵庫14.2 %、照明器具13.4 %、テレビ8.9 %、エアコン7.4 %と試算された[注 4][12]。 なお、同じ日本の家庭の消費電力の内訳でも、夏で最大需要が発生する日の日中(14時ころ)の消費電力の内訳は、資源エネルギー庁推計によると、エアコン53 %、冷蔵庫23 %、テレビ5 %、照明5 %だとのことである[13]

国ごとの大まかな統計資料は「消費電力」の記事に掲載している。

節電

電力を節約すること、電力消費量を減らすことを節電という。

電力化率

全エネルギー供給に占める電気エネルギーの割合を電力化率という[14]


注釈

  1. ^ 一般に広く負荷 (electrical load)と呼ばれる。
  2. ^ 水車に水を落とす前の運転準備に掛ける時間を除く。
  3. ^ 一般にビルの電気代は年間の最大電力需要をもとにした基本単価と電力量単価の和になっていることから、最大電力需要を下げると電気代が大幅に削減できる。
  4. ^ 資源エネルギー庁による試算。「平成21年度 民生部門エネルギー消費実態調査」(有効回答数10,040)および「機器の使用に関する補足調査」(1,448件)を用いて日本エネルギー経済研究所が試算した数字である。
  5. ^ 例えば、電源が乾電池、負荷が豆電球しかない直流回路を流れる電流は定常的(定常電流)である。
  6. ^ すなわち、正弦波交流は sin 関数と cos 関数で表すことができる。
  7. ^ 負荷によっては電圧と電流間で位相差が発生する場合もある。
  8. ^ 力率角が の状態、すなわち力率が の場合が理想的な状態であり、負荷の力率が1に近いほど「力率が良い」といい、逆にゼロに近いほど「力率が悪い」という。
  9. ^ なお、送電網の安定性の観点から進み無効電力が過多となる負荷は、電力会社は認めていない。
  10. ^ その意味は表向き(見かけ)の電力である。

出典

  1. ^ a b c 『改定版 物理学事典』「電力」
  2. ^ 近角(2013) p.363 消費電力 (electricity consumption) とも呼ばれる。
  3. ^ 電気学会『電気磁気学 電気学会大学講座』
  4. ^ 東芝社会インフラシステム社、東北電力株式会社向け系統用蓄電池システムの営業運転を開始” (日本語). インプレス (2016年2月26日). 2022年7月25日閲覧。
  5. ^ 電気自動車の使用済み駆動バッテリーはどうなるの?【EVの疑問、解決します】” (日本語). 中古車なら【グーネット】 (2021年7月23日). 2022年7月10日閲覧。
  6. ^ [1]
  7. ^ 「フィンランドで世界初の「砂電池」による熱エネルギー貯蔵が開始 – 蓄えたエネルギーで地域暖房が可能に」
  8. ^ STATISTA, Net consumption of electricity worldwide in select years from 1980 to 2018
  9. ^ a b c http://www.yonden.co.jp/life/kids/museum/energy/world/005.html
  10. ^ a b c 1 人あたりの電力消費量 別のランキング”. Google. 2021年6月5日閲覧。
  11. ^ 自然と調和するエネルギー利用:日本でも地熱の活用を”. 自然エネルギー財団. 2021年6月5日閲覧。
  12. ^ 資源エネルギー庁「省エネ 性能カタログ 2013年夏版
  13. ^ 資源エネルギー庁作成の節電に関するパンフレット
  14. ^ a b c d 八坂保能編著 『電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで』森北出版、2017年、9頁。 
  15. ^ 八坂保能編著 『電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで』森北出版、2017年、119頁。 
  16. ^ a b 『電力自由化の経済学』はしがき
  17. ^ a b c d e f g h i j k l m 『よくわかる最新スマートグリッドの基本と仕組み』6章-1 pp.134-135
  18. ^ 『図解入門ビジネス最新温暖化対策の基本と仕組みがよーくわかる本』p.78
  19. ^ 渡哲郎『戦前期のわが国電力独占体』
  20. ^ 吉松崇「電力会社が原発に固執するのは何故か」(『世界』岩波書店 第824号 2011年12月 292ページ)
  21. ^ 安岡(2012) p.23
  22. ^ 安岡(2012) p.28
  23. ^ https://www.infineon.com/dgdl/an-1173.pdf?fileId=5546d462533600a40153559ad4eb1143
  24. ^ https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b2
  25. ^ https://catalog.clubapc.jp/pdf/wp/SADE-5TNQZ5_R0_JA.pdf
  26. ^ 電気設備に高調波が及ぼす影響”. 一般財団法人省エネルギーセンター. 2009年12月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月21日閲覧。
  27. ^ 電気の安定供給のキーワード「電力需給バランス」とは?ゲームで体験してみよう”. 資源エネルギー庁 (2019年8月6日). 2022年7月7日閲覧。


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