電力 歴史

電力

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/06 11:04 UTC 版)

歴史

電力利用の歴史

初期の電力の装置として摩擦電気を集める静電発電機があり、電圧は高かったものの、容量的には極めて小さいものだった[14]。19世紀中頃には電池が発明されアーク灯に利用された[14]。さらに電磁気学の進展により、1870年頃から直流発電機1880年頃から交流発電機が実用化された[14]

最初の電力会社、トーマス・エジソンの会社が設立したPearl Street Station直流方式で送電し一時期はそれが標準となっていたが、ニコラ・テスラやジョージ・ウェスティングハウスは交流送電を推し、両陣営間で激しい対立が起き、結果として交流送電方式が普及し(そのいきさつや理由については「電流戦争」の記事で詳説)、現代の電力会社は一般的には電力を三相交流で供給しており、電圧としては高圧電力・低圧電力の両方を販売している。電力会社の業界を電力業界という。

電気エネルギーシステム

電気エネルギーの発電、送電、配電さらに最終需要家までの設備と運用制御を総称して電気エネルギーシステムという[15]

1990年代から、欧米を中心として、世界中の多くの国や地域において、電力の自由化が積極的に進められている[16]

欧州の各国の電力事業は、各国それぞれの歴史を持っている[17]。かつてはひとつの国にひとつの電力事業業者、という形が一般的であったが[17]、1999年に欧州電力市場では《市場の自由化》が導入され、各国でいくつもの電力事業業者が活動するようになった[17]。欧州のなかでも、いちはやく自由化された電力市場を整備したのは英国であった[17]

英国ではかつて英国電力公社が英国全体に電力を供給しており、発電も送電も全て行っていた[17]。1990年にその英国電力公社が民営化され、その時に、同時に発電事業と送電事業の分離が行われ、消費者に電力を供給する配電事業にはいくつもの電力供給事業者が参加できるようになった[17]。消費者は、(ちょうど、携帯電話の通信サービスを比較して決められるように)電力の価格などを比較して、自分が利用する電力供給事業者を選択できるようになった[17](なお送電に関しては、英国ではもともとひとつの電気事業者が全国の電力供給を管理していたため、結果として、高圧送電系統はナショナルグリッド1社が送電系統管理事業者として運用する方式を採用した[17]。)。このようにして英国では、発電・送電・配電が完全に分離された[17]

現在、欧州各国で行われている電力事業の形態というのは、上記の英国の形態と似たものになっている[17]。つまり、発電と送電の分離されており、送電に関しては送電系統管理事業者が行っている[17]。そして欧州の各国はそれぞれ隣接する国々と高圧電線で結ばれ、日々、電力の輸出・輸入が行われている[17]

グリーン電力とは、風力発電太陽光発電バイオマス発電小規模水力発電 等々、温室効果ガスの排出が少なくて環境への負荷が小さい自然エネルギー再生可能エネルギーによって発電された電力のことである[18]

2000年代に入り、欧州で風力発電の導入がかなり進みはじめてから、発電出力の変動に伴う供給の不安定化の問題への対応策が打たれるようになっており、EUレベルでスマートグリッド化が検討されるようになった[17]

日本では第二次世界大戦前に、電力の供給を独占する体制(電力独占体制)が形成された[19]。日本においても、1995年の電気事業法の改正により、電力自由化に向けての様々な動きが始まった[16]。1995年に制度化されたのはIPP(Independent Power Producer 卸供給事業者)で、IPPが発電した電力を既存の10電力会社が買い取るという仕組みで、IPPが需要家に直接販売するわけではない。だから、電力料金に直接影響を与えるものではなかった[20]

定義と公式

電気回路において電力を供給する装置を電源 (electric source)、電力を消費する装置を負荷 (electrical load)と呼ぶ。

定常電流の電力

直流回路の中でも特に電圧や電流が時間的に変化しない定常電流の回路[注 5]においては、電力は時間に関わらず

ただし、P : 電力[W]、V : 電圧[V]、I : 電流[A]、R : 抵抗[Ω]

となる。

正弦波交流電流の電力

交流とは、時間ともに大きさと向きが周期的に変化する電圧または電流を言う[21]。そのため、三角波やのこぎり波も交流となるが、大きさが時間と共に正弦波 (sine wave)状に変化する交流を特に正弦波交流と呼ぶ[注 6]交流回路に代表される電圧や電流が時間的に変化する回路においては、電力も時間に依存して変動をすることから[注 7]、定常な場合と違って様々な量が定義される。

ここで、電圧の波高値 (peak value)を Vm、電流の波高値を Im そして周期 (period)を Tとする。さらに、瞬時電力 (instantaneous electric power)を p(t) で表す。なお、瞬時電流 (instantaneous current)を i(t)、瞬時電圧 (instantaneous voltage) を v(t) とすれば、

が成り立つ。

有効電力 (effective power)

瞬時電力を1周期 T に渡って平均した値を有効電力 (effective power) と呼ぶ[22]。電力料金請求の対象となるのはこの有効電力である。

有効電力 P は、

で定義される。

ここで、電力回路に代表される正弦波交流回路に限った上で、具体的に有効電力を算出することとする。

正弦波交流であることから、瞬時電流 i(t) と瞬時電圧 v(t) を

と表すとする。ただし、角周波数 ω について とする。ところで、瞬時電圧の実効値を V、瞬時電流の実効値を I とすれば、それぞれ が成り立つ。

このとき、有効電力 P は

となる。ここで位相差 の余弦 力率、位相差 自体を力率角と呼ぶ[注 8]

無効電力 (reactive power)

電力回路において、有効電力は電力機器を動かすために必要であるが、電圧の調整に使われるものとして電圧と電流の実効値の積に力率角 の正弦 をかけたものを無効電力 (reactive power) と呼ぶ。なお、無効電力は、『電力』と銘打っているものの、負荷と電源とを往復するだけの、消費されないエネルギーである。無効電力の概念は難解であるが、「力率とは、有効電力と負荷(容量性・誘導性)に残留しソースに戻されるエネルギー、および非線形負荷によって生成される高調波を含む皮相電力の比と定義される」と説明されており[23]、瞬時の充放電[24]、高調波などが無効電力を構成していると捉えると理解しやすい。無効電力は接地された中性線を介してソース(大地)へ戻る[25]

記号 Q で表され、単位はバール (記号: var)が用いられる。

無効電力は、自己インダクタンスに由来する誘導負荷と、静電容量に由来する容量負荷から生じる。誘導負荷による無効電力を「遅れ無効電力」、容量負荷による無効電力を「進み無効電力」と呼んでいる。電力関係では電圧を基準として、電流が遅れている場合の無効電力を正とすることが多い。

誘導性負荷は遅れ無効電力を増やし、容量性負荷は進み無効電力を増やす。遅れ無効電力と進み無効電力は互いに打ち消しあう関係であり、これら両者の無効電力が互いに等しい状態(無効電力がゼロ)が、最も理想的な状態といえる。電力会社が力率100 %に対し、料金の割引制度を設けているのは、無効電力がゼロすなわち無効電力源が不要な状態であり電力会社にとって好ましい状態だからである。逆に誘導電動機を多用するなどして遅れ無効電力を電力会社から頂戴するような環境[注 9]だと(力率が低い)、電力会社は割増料金を取らざるを得なくなる。

インピーダンスを用いて無効電力を表すと、

となる。X > 0 であれば Q > 0 であり、これは誘導性負荷で電圧に対して電流が遅れる。 同じくアドミタンスを用いれば

となる。B > 0 であれば Q < 0 であり、これは容量性負荷で電圧に対して電流が進む。

皮相電力 (apparent power)

正弦波交流回路において、電圧の実効値 V と電流の実効値 I の積を皮相電力 (apparent power) と呼ぶ[注 10]

単位はボルトアンペア(記号: VA)が用いられる。記号としては S で表されることが多い。

この皮相電力 S と有効電力 P、無効電力 Q そして力率 cos(φ) との間には以下の関係

が成り立つ。

なお、インピーダンスを用いれば

となり、アドミタンスを用いれば

となる。

非直線性回路の電力

上記は電圧・電流ともに正弦波の場合であるが、ダイオードなどの非直線性素子が入った回路においては電流が正弦波とはならず、説明が複雑となる。基本は瞬時電圧と瞬時電流から瞬時電力を求め、それを平均することによりまず有効電力Pを求める。

また、電圧Vの実効値と電流Iの実効値の積から、皮相電力Sが求められる。

さらに、皮相電力と有効電力、無効電力Qの関係式

を変形すると、皮相電力と有効電力から無効電力が求められる。

非直線性回路では、電圧が正弦波であっても電流に高調波成分を含むことになり、従来力率改善に用いられた同期調相機や電力用コンデンサでは十分な改善効果が得られないだけでなく、電力用コンデンサなどに障害を与える場合がある。特に、コンピュータなどに内蔵されるAC-DCコンバータや、省エネルギーのためのインバータ制御機器が問題になる[26]。このため、高調波成分を減少させ、力率を改善するための規制が行われることも多い。

固有電力 (intrinsic power)

起電力Eとその内部抵抗rと外部抵抗Rにおいての電源より供給できる最大電力。または消費電力が最大になるときの最大電力。

電気工学では最大電力供給条件という。分野によってはマッチングとも。記号はPまたはPmax、単位はワット (Watt; W)。

rは内部抵抗、Rは外部抵抗として説明する。

直流電力の公式

これを1とする。

起電力

ゆえに

となる。これを2とする。

1へ2を代入

相加平均相乗平均の関係を分母に用いるとという公式が導き出される。


注釈

  1. ^ 一般に広く負荷 (electrical load)と呼ばれる。
  2. ^ 水車に水を落とす前の運転準備に掛ける時間を除く。
  3. ^ 一般にビルの電気代は年間の最大電力需要をもとにした基本単価と電力量単価の和になっていることから、最大電力需要を下げると電気代が大幅に削減できる。
  4. ^ 資源エネルギー庁による試算。「平成21年度 民生部門エネルギー消費実態調査」(有効回答数10,040)および「機器の使用に関する補足調査」(1,448件)を用いて日本エネルギー経済研究所が試算した数字である。
  5. ^ 例えば、電源が乾電池、負荷が豆電球しかない直流回路を流れる電流は定常的(定常電流)である。
  6. ^ すなわち、正弦波交流は sin 関数と cos 関数で表すことができる。
  7. ^ 負荷によっては電圧と電流間で位相差が発生する場合もある。
  8. ^ 力率角が の状態、すなわち力率が の場合が理想的な状態であり、負荷の力率が1に近いほど「力率が良い」といい、逆にゼロに近いほど「力率が悪い」という。
  9. ^ なお、送電網の安定性の観点から進み無効電力が過多となる負荷は、電力会社は認めていない。
  10. ^ その意味は表向き(見かけ)の電力である。

出典

  1. ^ a b c 『改定版 物理学事典』「電力」
  2. ^ 近角(2013) p.363 消費電力 (electricity consumption) とも呼ばれる。
  3. ^ 電気学会『電気磁気学 電気学会大学講座』
  4. ^ 東芝社会インフラシステム社、東北電力株式会社向け系統用蓄電池システムの営業運転を開始” (日本語). インプレス (2016年2月26日). 2022年7月25日閲覧。
  5. ^ 電気自動車の使用済み駆動バッテリーはどうなるの?【EVの疑問、解決します】” (日本語). 中古車なら【グーネット】 (2021年7月23日). 2022年7月10日閲覧。
  6. ^ [1]
  7. ^ 「フィンランドで世界初の「砂電池」による熱エネルギー貯蔵が開始 – 蓄えたエネルギーで地域暖房が可能に」
  8. ^ STATISTA, Net consumption of electricity worldwide in select years from 1980 to 2018
  9. ^ a b c http://www.yonden.co.jp/life/kids/museum/energy/world/005.html
  10. ^ a b c 1 人あたりの電力消費量 別のランキング”. Google. 2021年6月5日閲覧。
  11. ^ 自然と調和するエネルギー利用:日本でも地熱の活用を”. 自然エネルギー財団. 2021年6月5日閲覧。
  12. ^ 資源エネルギー庁「省エネ 性能カタログ 2013年夏版
  13. ^ 資源エネルギー庁作成の節電に関するパンフレット
  14. ^ a b c d 八坂保能編著 『電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで』森北出版、2017年、9頁。 
  15. ^ 八坂保能編著 『電気エネルギー工学 新装版 発電から送配電まで』森北出版、2017年、119頁。 
  16. ^ a b 『電力自由化の経済学』はしがき
  17. ^ a b c d e f g h i j k l m 『よくわかる最新スマートグリッドの基本と仕組み』6章-1 pp.134-135
  18. ^ 『図解入門ビジネス最新温暖化対策の基本と仕組みがよーくわかる本』p.78
  19. ^ 渡哲郎『戦前期のわが国電力独占体』
  20. ^ 吉松崇「電力会社が原発に固執するのは何故か」(『世界』岩波書店 第824号 2011年12月 292ページ)
  21. ^ 安岡(2012) p.23
  22. ^ 安岡(2012) p.28
  23. ^ https://www.infineon.com/dgdl/an-1173.pdf?fileId=5546d462533600a40153559ad4eb1143
  24. ^ https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b2
  25. ^ https://catalog.clubapc.jp/pdf/wp/SADE-5TNQZ5_R0_JA.pdf
  26. ^ 電気設備に高調波が及ぼす影響”. 一般財団法人省エネルギーセンター. 2009年12月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月21日閲覧。
  27. ^ 電気の安定供給のキーワード「電力需給バランス」とは?ゲームで体験してみよう”. 資源エネルギー庁 (2019年8月6日). 2022年7月7日閲覧。






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