訪問看護 仕事内容

訪問看護

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/16 02:24 UTC 版)

仕事内容

訪問看護において提供される主なサービスとしては、以下のようなものがある。

  • 療養上の世話 - 身体の清拭洗髪入浴介助食事排泄などの介助・指導、褥瘡予防の指導等
  • 医師の指示による医療処置
  • 病状の観察 - 病気や障害の状態、血圧・体温・脈拍などのチェック
  • 医療機器の管理 - 在宅酸素、人工呼吸器などの管理
  • ターミナルケア - 在宅看取り、エンゼルケア、グリーフケア
  • 在宅でのリハビリテーション - 拘縮予防や機能の回復、嚥下機能訓練等
  • 家族等への介護支援・相談 - 介助方法の指導、相談対応、精神的支援
  • 介護予防
  • 意思決定支援
  • 在宅支援チーム内の調整 - 医師、介護職、行政等他職種との連絡調整

特記すべき病院と在宅における看護の違いとしては、

  • 訪問時にトラブルが発生しても相談できる人が近くにいないこと
  • 訪問時間が限定されること
  • 看護職員などの人的資源(マンパワー)が乏しいこと
  • 治療機器、薬剤や看護用品といった物的資源が乏しいこと

などが特徴としてあげられ、訪問看護に携わる者には医学の総合的な知識主治医介護支援専門員(ケアマネージャー)などの他職種との調整能力患者家族とのコミュニケーション能力、入浴介助やリハビリテーションなどの看護技術転倒疾患予防などの病気予測力指導力緊急時の現場での判断力などより高い専門性が求められる。

関連法規と制度

訪問看護は、介護保険法や公的医療保険各法(健康保険船員保険国民健康保険共済組合後期高齢者医療制度等)に基づいて訪問看護ステーションや病院診療所などの医療機関から看護師・保健師など看護職が訪問する形態が一般的である。また、こうした公的な制度に基づかず、患者の全額自己負担により、患者の要望に対して、より柔軟に対応する訪問看護を提供する組織・企業もある。

介護保険による訪問看護の場合、利用者はまず要介護認定を受け(介護保険法第27条)、その結果に基づき、ケアマネージャーが訪問看護をサービス計画(ケアプラン)に組み入れる。ケアマネージャーから連絡を受けた医師は訪問看護指示書を訪問看護ステーションに交付し、その指示書にもとついて訪問看護が行われる。公的医療保険による訪問看護の場合、病状が安定し、又はこれに準ずる状態にあり、かつ、居宅において看護師等が行う療養上の世話及び必要な診療の補助を要する場合(健康保険法施行規則第67条)には主治医から利用を希望する訪問看護ステーションに訪問看護指示書が交付され、その指示書にもとついて訪問看護が行われる。同一利用者で介護保険と医療保険が競合する場合は介護保険の利用が優先されるが、以下の場合は医療保険からの保険給付となる。

  • 末期の悪性腫瘍その他厚生労働大臣が定める疾病等の患者
  • 急性憎悪により、主治医から特別訪問看護指示書が交付されたもの

訪問看護の担い手は、看護師のみならず保健師、助産師、准看護師、理学療法士作業療法士及び言語聴覚士もその担い手とされる(健康保険法施行規則第68条)。規模の大きい訪問看護ステーションではこれらの職種の者を常勤で雇ったり、また病院併設の訪問看護ステーションであれはこれらの職種は病院内での業務と兼務することもある。

歴史

訪問看護は1900年前後に始まった派出看護(はしゅつかんご)がもとであるといわれている。派出看護とは、訓練を受けた看護婦が患家と契約を結んで病院や患者の自宅において看護を提供することであった。1884年に有志共立東京病院(現在の東京慈恵会医科大学)が上流階級家庭を対象に始めたとされる。その後1891年鈴木雅が慈善看護婦会(後の東京看護婦会)を創設、困窮者へ無料で派出看護を行った。1894年日清戦争後、戦争により急性伝染病が蔓延したことや、戦時の活動により看護婦の存在が世間に認知されたことにより、派出看護婦の需要が高まった。高度成長期を迎えると、平均寿命の延長、核家族化の進行、それらに伴う一人暮らしの高齢者の増加、寝たきり高齢者の増加などが社会問題となった。それを受けて在宅患者への継続看護の一環として、1970年ごろから病院診療所自治体からの訪問看護が行われるようになった。[要出典]

  • 1888年11月に、鈴木雅子が、東京本郷で最初の派出看護婦会を開設した[11]
  • 1982年老人保健法成立。退院患者への継続看護・指導料が適用されるようになった。
  • 1990年社会福祉8法改正。在宅福祉サービスの積極的推進、社会福祉事業法改正による社会福祉事業への追加、在宅福祉サービスを施設福祉サービスの市町村への一元化、市町村及び都道府県老人保健福祉計画の策定の義務化がなされた。
  • 1991年老人保健法改正。老人訪問看護制度が創設。
  • 1994年健康保険法改正。在宅医療の位置づけが明文化され、それまで高齢者が対象であった訪問看護は、在宅で医療・療養を受けるすべての人を対象とするものへと変わった。
  • 2000年介護保険法成立。訪問看護ステーションが明文化された。このころから病院における患者の在院日数の短縮化の流れが起こり、人工呼吸器による呼吸器療法や中心静脈栄養法といった、これまで専ら病院内で行われてきた医療処置を自宅で行う在宅患者が増加した。

注釈

  1. ^ 保険医療機関から行われる訪問看護は、訪問看護療養費ではなく療養の給付の対象となる。また医師が訪問してこれらのサービスを行った場合も療養の給付の対象となる。

出典

  1. ^ 介護保険法 第一章 総則”. e-Gov. 2021年7月9日閲覧。
  2. ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第四章 訪問看護 第一節 基本方針 - e-Gov法令検索
  3. ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第四章 訪問看護 第二節 人員に関する基準 第六十条 - e-Gov法令検索
  4. ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第四章 訪問看護 第二節 人員に関する基準 第六十一条 - e-Gov法令検索
  5. ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第四章 訪問看護 第二節 人員に関する基準 第六十三条 - e-Gov法令検索
  6. ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第四章 訪問看護 第二節 人員に関する基準 第六十四条 - e-Gov法令検索
  7. ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第四章 訪問看護 第二節 人員に関する基準 第六十九条 - e-Gov法令検索
  8. ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第四章 訪問看護 第二節 人員に関する基準 第七十条 - e-Gov法令検索
  9. ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第四章 訪問看護 第二節 人員に関する基準 第七十一条 - e-Gov法令検索
  10. ^ 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第四章 訪問看護 第二節 人員に関する基準 第七十三条の二 - e-Gov法令検索
  11. ^ 石井研堂『明治事物起源』橋南堂、1908年、[要ページ番号]頁。doi:10.11501/898142  
  12. ^ 日本放送協会. “在宅医療 患者や家族からの暴力行為 訪問看護師の半数が経験”. NHK首都圏ナビ. 2022年2月24日閲覧。
  13. ^ 訪問看護師が利用者・家族から 受ける暴力に関する 調査研究事業報告書 全国訪問看護事業協会
  14. ^ 訪問看護について 厚生労働省


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