羊羹 国外

羊羹

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/10 10:13 UTC 版)

国外

戦前〜戦中、満州からジャワ(現インドネシア)に至るまで小城羊羹が広く販売され、戦後、村岡総本舗に、晩年の愛新覚羅溥傑が訪れ羊羹を購入している[23]。現在の中国でも天津北京で、日本のものと同じような小豆やを使った甘い「羊羹 ヤンカン yánggēng」が製造販売されているほか、中国独特のサンザシリンゴなどを加えたフルーツ風味のものも製造販売されている。韓国では日本統治時代に入ってきたものがそのまま残っており「양갱(yang-gaeng、ヤンゲン)」と呼ばれる。製法や市場は日本とほぼ同じである。台湾でも日本統治時代に広まったものが羊羹(台湾語:io-kang、台湾華語:yang-geng)として残り、現在も流通している。台湾独自のパインアップル味、里芋味などを販売している所もある。

水羊羹

水羊羹の歴史

水羊羹(みずようかん)は、霊元天皇の要望で亀屋陸通という菓子屋がやわらかい羊羹を作ったのが始まりという説がある。ただし、これは1801年の随筆『橘窓自語』(橋本経亮著)に古老の話として書かれた内容であり、実際の史料の記述に見られるのは1760年ごろからである。当時の水羊羹は、現在のように寒天を使って固めたものではなく、蒸し羊羹をやわらかく作ったものだった[24]

寒天を使った水羊羹は、明和年間(1764年-1772年)ごろの成立とされる料理書『調味雑集』に登場する。蒸し羊羹のやわらかいタイプの水羊羹のバリエーションとして寒天を使った水羊羹が生まれ、寒天を使う製法が煉羊羹の誕生へとつながっていったと考えられる[25]

江戸時代の水羊羹は季節を問わず作られており、夏の菓子として定着したのは大正時代から昭和初期にかけてだと考えられている[26]

かつては、木枠の型(羊羹舟)でつくられた水羊羹を切り売りしていた。往時の名残として、厚みのある箱や容器に水羊羹を流し込んで販売する店が見られる。現在は、流し箱タイプのほか、アルミ缶プラスチックカップに入った製品が市販され、高級和菓子店では棹物として、竹筒に入った製品なども販売されている。

冬の水羊羹

福井県をはじめ東北北陸関東近畿など日本全国の一部の地域では、冬に水羊羹を食べる地域がある。いずれも寒天を使う水分の多いもので、高価な煉羊羹に比べて安価で手軽な菓子として作られたものだった。冷蔵庫のない時代、水分が多く砂糖が少ない菓子は傷みやすかったため、冬に作ることは理にかなっていた[27]

栃木県をはじめ関東の一部の地域には、水羊羹を御節料理に用いる風習も現存する[27][28]。かつては、全国的な風習であったが、現在は、御節料理としての風習も忘れ去られた[要出典]

丁稚羊羹

丁稚羊羹(でっちようかん)とは、西日本の主に近畿地方を中心とする地域における安価な羊羹(主に水羊羹)の呼称である。小豆や砂糖を減らしたような、小豆の「出汁」(でじる)のように軟らかい状態からつくる「水羊羹」状の安価な工程の羊羹を指す[要出典]。また、一部の地域には「でっち羊羹」と呼称される蒸し羊羹も存在する[27]。煉羊羹が登場したことで蒸し羊羹は「下物」となり、関西では丁稚羊羹と呼称されたとされる[29]

丁稚羊羹の名前の由来については、小豆や砂糖を減らしたような小豆の「出汁」(でじる)に、煉る工程からの「でっちる」の意味が重なり、「練羊羹」の手前の半人前の意味での「丁稚」(近代以前の商店従業員)の意味が重なったという説[要出典]や、丁稚が里帰りの土産やおやつにしたことに由来するという説[27]がある。


注釈

  1. ^ 「羹」の通常の音(漢音)は「こう(かう)」で、「かん」は唐音[5]
  2. ^ 羊羹の発祥として、1589年天正17年)に山城国伏見九郷の鶴屋の5代目岡本善右衛門が、テングサ(寒天の原料)・粗糖・小豆あんを用いて炊き上げる煉羊羹を開発し豊臣秀吉に献上したとする説もある[14]が、明確な史料はない。
  3. ^ 「紅粉や志津磨」説は1830年刊の随筆『嬉遊笑覧』、喜太郎説は『北越雪譜』や1846年刊の山東京伝『蜘蛛の糸巻』に見られる。「紅粉や志津磨」と喜太郎は同一ともされる[16]

出典

  1. ^ 日本食品標準成分表2015年版(七訂) "第2章 日本食品標準成分表:15 菓子類" 「水ようかん」(食品番号:15039 索引番号:1891)
  2. ^ “ようかん変身新商品”. asahi.com (朝日新聞社). (2011年10月6日). オリジナルの2011年10月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111012120420/http://mytown.asahi.com/chiba/news.php?k_id=12000001110060001. "糖度が約70度と高いため、腐りにくく、かつて賞味期限を2年と表示した時期もあった。ただ、期間が長いと防腐剤を使っていると誤解を受けやすいことを危惧して、業界にはあえて期間を短く表示する傾向もある。" 
  3. ^ 防災のプロが教える! オススメ非常食と“備え”の極意”. 日本ユニシス (2019年11月13日). 2021年8月28日閲覧。
  4. ^ [1]走ろう!com 2022年8月7日閲覧
  5. ^ 山田孝雄国語の中に於ける漢語の研究』宝文館、1940年、168頁https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1219590/91 
  6. ^ 新星出版社編集部『和菓子と日本茶の教科書』新星出版社、2009年、82頁。ISBN 978-4405091726 
  7. ^ 『宋書』毛脩之列伝「脩之嘗為羊羹、以薦虜尚書。尚書以為絶味、献之於燾。燾大喜、以脩之為太官令。」
  8. ^ 虎屋文庫 2019a, p. 40.
  9. ^ 虎屋文庫 2019a, p. 43.
  10. ^ 虎屋文庫 2019b, p. 2.
  11. ^ 虎屋文庫 2019b, p. 9.
  12. ^ 虎屋文庫 2019a, pp. 45–46.
  13. ^ 虎屋文庫 2019a, pp. 47–49.
  14. ^ 日本大百科全書羊かん
  15. ^ 虎屋文庫 2019a, pp. 50–51.
  16. ^ a b 虎屋文庫 2019a, pp. 51–52.
  17. ^ 虎屋文庫 2019a, pp. 56–57.
  18. ^ 虎屋文庫 2019b, p. 11.
  19. ^ 虎屋文庫「史料に見る煉羊羹・蒸羊羹の呼称について」、虎屋文庫『和菓子』第20号、2013年、p50。
  20. ^ 虎屋文庫 2019a, p. 60.
  21. ^ 虎屋文庫 2019a, pp. 67–68.
  22. ^ 虎屋文庫 2019a, p. 71.
  23. ^ 村岡総本舗 羊羹資料館
  24. ^ 虎屋文庫 2019a, p. 55.
  25. ^ 虎屋文庫 2019a, p. 56.
  26. ^ 虎屋文庫 2019a, pp. 69–70.
  27. ^ a b c d 虎屋文庫 2019b, p. 16.
  28. ^ ふるさとの味とちぎのあじ栃木県
  29. ^ 羊かん」コトバンク、2023年9月16日閲覧
  30. ^ 棹菓子 コトバンク、2023年9月16日閲覧
  31. ^ 羊羹色 コトバンク、2023年9月16日閲覧






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